
過去を払って、四月の風と歩む
| 言語 | 日本語 |
|---|---|
| 試し読み | 第1〜3話(当サイト) |
| 掲載日 | |
| 読み方 | 横書き・縦書きを切り替え可 |
『過去を払って、四月の風と歩む』は日本語の小説です。当サイトで第1〜3話を試し読みできます。
冒頭試し読み第1話より・約439字
浅野寧々(あさの ねね)が解雇された日、外は土砂降りの雨だった。
彼女は私物が詰め込まれたダンボール箱を抱え、オフィスビルの入り口に立っていた。雨のしぶきがズボンの裾を濡らしている。
一向に捕まらない配車アプリの画面を見つめながら、寧々は無意識に夫の藤堂朔(とうどう さく)に電話をかけていた。
長い呼び出し音の末にようやく繋がった電話の向こうから、会議を終えたばかりの掠れた声が聞こえてきた。
「何か用か」
寧々は口を開きかけた。
自分が3ヶ月間担当してきたプロジェクトが、コネ持ちの社員に奪われたことを言いたかった。
上司に抗議しに行ったら、逆に「使えないなら辞めろ」と罵られたことを言いたかった。
今日は二人が交際を始めてから7周年の記念日で、一緒に家に帰ってご飯を食べられないかと言いたかった。
だが、電話の背景音から、次の会議が始まることを知らせる声が聞こえてくると、すべての悔しさが喉の奥でつかえてしまった。
結局、彼女はただ伏し目がちに言った。
「ううん、なんでもない。仕事、頑張って」
※作品紹介ではなく、第1話の書き出しをそのまま掲載しています。第1話の続きを読む
目次試し読み3話
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