
私の鼓動が止まるとき
| 言語 | 日本語 |
|---|---|
| 試し読み | 第1〜3話(当サイト) |
| 掲載日 | |
| 読み方 | 横書き・縦書きを切り替え可 |
『私の鼓動が止まるとき』は日本語の小説です。当サイトで第1〜3話を試し読みできます。
冒頭試し読み第1話より・約531字
私は灯里(ともり)、お母さんに連れられて、心理検査を受けに行った。
質問票に記入していて、私が「よく悲しい気持ちになる」にチェックを入れた途端、お母さんは手を伸ばし、すぐにチェックを消した。
「何を悲しむことがあるの?家で不自由なんてさせてないでしょう?」
私が「人と話すのが怖い」を選ぶと、お母さんはまた眉をひそめた。
「小さい頃はあんなに明るかったじゃない。適当なことを書かないで」
私は言い返さなかった。
お母さんが悲しくないと言うなら、私は「まったくない」に直した。
お母さんがよく眠れていると言うなら、私は「よく眠れない」を消した。
1枚の質問票を書き終える頃には、ほとんどすべての答えをお母さんの望むとおりに選び直していた。
お母さんはそれを二度見返し、満足そうにうなずいた。
「そう、それでいいの。適当なことを書いちゃ駄目でしょう?もし間違った結果が出て、病気でもないのに病気だと判定されたらどうするの?」
結局、検査結果は「正常範囲」だった。
お母さんはようやくほっとした。
帰り道、私はずっと袖口の下に隠れた傷痕をなぞっていた。
鼓動だけがやけにはっきり聞こえるのに、目の前の世界はぼやけ、遠ざかっていった。
最後には、ただ真っ白な空白だけが残った。音もなく、何もなかった。
※作品紹介ではなく、第1話の書き出しをそのまま掲載しています。第1話の続きを読む
目次試し読み3話
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