
愛を乞う声は、もう届かない
| 言語 | 日本語 |
|---|---|
| 試し読み | 第1〜3話(当サイト) |
| 掲載日 | |
| 読み方 | 横書き・縦書きを切り替え可 |
『愛を乞う声は、もう届かない』は日本語の小説です。当サイトで第1〜3話を試し読みできます。
冒頭試し読み第1話より・約444字
胃がん末期の診断書を手に、私、伊藤佳奈(いとう かな)は震える手で、結婚7年になる夫、黒澤拓海(くろさわ たくみ)に電話をかけた。
だが、受話器の向こうから聞こえてきたのは、彼と別の女の笑い声、そして「何の用だ?早く言え、こっちは忙しいんだ」という苛立った声だった。
私が抗がん剤治療のため病院に行き、息子の黒澤蓮(くろさわ れん)を一人で留守番させていた時、あの子は私とかくれんぼをするつもりで洗濯機の中に入り込み、窒息して死んでしまった。
それでも拓海は、私が子供の生死をダシにして彼の気を引こうとしているのだと思い込んでいた。
私の子供は、冷たく小さな骨壺に収まる遺骨になってしまった。
後に真実を知った彼は、狂ったように私と蓮の墓前にひざまずいて泣き崩れた。
けれど、私自身とっくに一握りの灰になっていて、吹き抜ける風すら彼の遅すぎた懺悔を私の元へ届けてはくれない。
私は病院の冷たいベンチに座り、その薄っぺらい検査報告書を握りしめていたが、それは鉛の塊のように重く感じられた。
胃がんの末期……
※作品紹介ではなく、第1話の書き出しをそのまま掲載しています。第1話の続きを読む
目次試し読み3話
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