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愛を乞う声は、もう届かない第2話

この話は約2064字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

玄関の扉を開けると、だだっ広い室内には生活の気配が全くなく、冷え切っていた。

リビングの灯りは消えたままで、玄関のセンサーライトが放つ微かな光だけが頼りだった。

「蓮……」と私は小さな声で呼んだ。その声は、がらんとした空間に、ただ虚しく響くだけだった。

リビングのソファでうとうとしていた蓮が頭をもたげ、私をぼんやりと見つめて、小声で言った。

「ママ、おかえり……蓮ね、お腹ペコペコなの。卵うどんが食べたいな……」

「蓮、ごめんね。ママが悪かったわ。今すぐ作ってあげるからね」

キッチンへ向かい、手慣れた手つきで夕食を作ろうと冷蔵庫を開けた私は、そのまま凍りついた。中はすっぽりと空っぽで、キッチンを見渡しても、残っているのは乾麺のうどんがひと束だけだった。

スマホ決済の残高を確認すると、100円しかなかった。胸の奥から、言いようのない切なさと悔しさがこみ上げてくる。

涙を拭って振り返ると、私はやはり階下へ降りて卵を二個買い、蓮のうどんに具を足してあげようと心に決めた。

4歳になる蓮は私を見上げ、こう言った。「ママ、どうして泣いてるの?蓮もうお腹空いてないよ。何も食べなくていいから、ママ泣かないで」

ズキリと胸が痛み、私は慌ててしゃがみ込むと、彼の小さな額を優しくなでながら、声を詰まらせて言った。「蓮、ママは大丈夫よ。今すぐ卵を買ってきて、美味しいうどんを作ってあげるからね」

お腹を空かせてふらふらと頼りなげにしている姿を見て、胸の奥をぎゅっと鷲掴みにされたような痛みが、波のように押し寄せてきた。

拓海は、もうどれくらい蓮の顔をまともに見ていないのだろうか。

あの人はきっと、私たちに目に入れても痛くないほど大切な子供がいることすら、とうに忘れているに違いなかった。

忙しいのだ。自分の仕事に忙しく、悠里に付き合うのに忙しく、そして……この家へ帰ることを忘れるのに忙しい。

蓮をどうにか寝かしつけたあと、私は手早くシャワーを浴び、パジャマに着替えた。

寝室に入ると、そこには広いダブルベッドが置かれている。半分は私の領域、もう半分は、年中空いたままの冷たい空間。

私は自分の側に身を横たえ、体を丸めた。

深更、胃の痛みが突如として激しさを増し、まるで内側から何か鋭いものでかき回されているような錯覚に陥った。

冷や汗が一瞬にしてパジャマを濡らし、私はベッドの上でエビのように丸まりながら、痛みに全身を震わせた。息を吸うことすらままならない。

反射的に手を伸ばし、すぐ隣を探ってみたが、そこにあるのは変わらず冷え切ったシーツの感触だけだった。

拓海は、帰ってこなかった。分かっていたことなのに、それでも胸の奥が冷たく凍りついていくのを止められなかった。

私は痛みに耐えかねて這うように起き上がり、サイドテーブルを探って医者から処方された鎮痛剤をつかみ取り、水なしで無理やり飲み込んだ。

薬が効き始めるまでには時間がかかる。私は膝を抱え、ベッドのヘッドボードに背をもたせかけながら、幾重にも押し寄せる激痛にただ耐えるしかなかった。

やがて鎮痛剤がじんわりと効き始め、痛みはいくらか和らいだものの、体中の気力がすっかり吸い取られたかのように、酷い疲労感だけが残った。

再び横になったものの、一睡もできないまま、空が白み始めるのを迎えた。

数日後、初めての抗がん剤治療を控えた予約の日がやってきた。

看護師から、できれば家族の付き添いがあった方がいいと事前に念を押されていた。

病院の長いベンチに座り、私は長い間迷った末、結局拓海に電話をかけた。

電話がつながると、受話器から返ってきたのは、相変わらず何の感情もこもっていない声だった。「また何の用だ?」

「拓海、あなた……一度でいいから、病院に来てくれない?」私の声には、隠しきれないすがるような響きが混じっていた。

「病院?」

彼は一瞬絶句したようだったが、すぐに苛立ちをさらに深め、あまつさえ嘲るような口調に変わった。

「佳奈、また何の芝居を打つつもりだ?いつまで病気のふりをして同情を買う気だ。こっちは忙しいんだ、お前のくだらない茶番につき合ってる暇はない!」

受付で手続きをしてくれていた看護師が、電話のやり取りを聞きつけて眉をひそめ、何か言いたげな視線を向けてきた。

私は彼女に向かって引きつった笑みを浮かべ、静かに首を横に振った。

もうどうでもよかった。心が死に絶えるとは、きっとこういう感覚のことを言うのだろう。

電話を切り、私は淡々とした声で看護師に告げた。「家族はいません。私一人で大丈夫です」

看護師は私をじっと見つめ、その瞳に深い同情の色をにじませたが、それ以上何も問わず、ただ黙々と手続きを進めてくれた。

初めての抗がん剤治療は、想像を絶する苦しみだった。

強烈な吐き気、繰り返す嘔吐、めまい、そして一歩も動けないほどの脱力感。

たった一人で病室のベッドに横たわり、点滴の薬液が一滴、また一滴と透明なチューブを伝って血管に落ちていくのを見つめる。その冷たい液体とともに、自分の命の火が少しずつ削り取られていくような気がしていた。

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