
愛人の妊娠を喜ぶ種なし夫を捨てます
| 言語 | 日本語 |
|---|---|
| 試し読み | 第1〜3話(当サイト) |
| 掲載日 | |
| 読み方 | 横書き・縦書きを切り替え可 |
『愛人の妊娠を喜ぶ種なし夫を捨てます』は日本語の小説です。当サイトで第1〜3話を試し読みできます。
冒頭試し読み第1話より・約528字
私、高瀬紬希(たかせ つむぎ)は、「胃が痛い」と顔をしかめる夫のために、消化に良いお弁当をわざわざ作って社長室へと急いだ。
しかし、少しだけ開いていたドアの隙間から目に飛び込んできたのは、全面ガラス張りの窓に、今年入ったばかりの若いインターン生の女を乱暴に押し付ける夫の姿だった。
夫である高瀬奏也(たかせ そうや)は、「君の綺麗な手が汚れるから」と、食後のブドウの皮さえ丁寧に剥いてくれる、優しくて過保護な愛妻家だったはずだ。
けれど今、その大きな手は、あろうことか若い女のブラウスを急かしかけるように剥ぎ取っている。
「社長……私のお腹にはもう、三ヶ月になる赤ちゃんがいるんです。まさか、この子を私生児にするつもりじゃないですよね?」
すがるような女の甘ったるい声に、奏也は冷酷に手を振り上げ、女の頬を激しく張り飛ばした。
「身の程を知れ。お前なんかが、紬希の代わりになれるとでも思ったか?」
しかし――
冷たい言葉を吐き捨てた直後、私はこの目で見てしまった。彼が、泣き崩れる女の唇を塞ぐように、再び激しいキスを落とすのを。
部屋の中は甘い情欲で熱を帯びているというのに、弁当箱の包みを握りしめる私の指先は、凍りつくように冷え切って痛みを覚えるほどだった。
あの火事の日。
※作品紹介ではなく、第1話の書き出しをそのまま掲載しています。第1話の続きを読む
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