
もしも、出会った日のままでいられたなら
| 言語 | 日本語 |
|---|---|
| 試し読み | 第1〜3話(当サイト) |
| 掲載日 | |
| 読み方 | 横書き・縦書きを切り替え可 |
『もしも、出会った日のままでいられたなら』は日本語の小説です。当サイトで第1〜3話を試し読みできます。
冒頭試し読み第1話より・約479字
私との結婚を氷見寒成(ひみ かんせい)は三十八回も先延ばしにした。
五度目の事故では、車に激突されて肋骨を八本も折り、私は七度も危篤通知に署名した。
十度目、入籍へ向かう途中では、車ごと海へと弾き飛ばされ、着ていたスーツは鮫に食い破られた。
そして三十八度目。
寒成は心臓の病が悪化し、命の瀬戸際に立たされていた。
私は妊娠八か月の大きなお腹を抱えながら三度も乗り継ぎをし、二十三時間かけて地球の半分を横断し、彼のもとへと辿り着いた。
扉を開けると、そこには彼と瓜二つの少年が顔を上げて言った。
「ママが帰ってきたと思った」
その瞬間、寒成が裸足のまま駆け出してきて、愕然とした表情で私を見つめた。
私は振り返る。
そこに立っていたのは、十二年付き合いの親友だった。
手には鍵。
少年は駆け寄り、その胸に飛び込んで無邪気に呼ぶ。
「ママ!」
――ようやく、理解した。
七年も待ち続けた婚約者は親友が長年ひそかに結婚していた――その夫だったのだ。
私は静かに口を開いた。
「三十八回も死にかけてまで待ったけど――もう、待たない」
そして、まっすぐに彼を見据える。
「氷見寒成。あなたも――いらない」
※作品紹介ではなく、第1話の書き出しをそのまま掲載しています。第1話の続きを読む
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