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もう、あなたを待つ港じゃない

言語日本語
試し読み第1〜3話(当サイト)
掲載日
読み方横書き・縦書きを切り替え可

『もう、あなたを待つ港じゃない』は日本語の小説です。当サイトで第1〜3話を試し読みできます。

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冒頭試し読み第1話より・約473字

夫は遠洋貨物船の船長で、一年のうち10か月は海の上にいる。

私はずっと夫を信じていた。

ただ、誰にも気づかれていない小さな習慣が一つだけあった。

夫の船が入港して補給を受けるたび、私は一等航海士の妻を誘って、二人で酒を飲んでいた。

一等航海士は無口な人だが、その妻はよく喋るうえに酒に弱い。

家のことや船の話をしながら飲んでいると、3杯目に差しかかったところで、彼女がふいに顔を寄せてきた。

「凪紗さんの旦那さんって、本当にロマンチックですよね。先月マルセイユに寄港したとき、わざわざ現地の職人に頼んで、波をモチーフにしたダイヤのジュエリーを一式作らせたんですよ。ネックレスにブレスレット、イヤリングまで揃えて、補給便で持ち帰らせたんですって。羨ましいなあ」

私は小さな声で言った。

「そうなんだ。私、受け取ってないけど」

それ以上は聞かなかった。

彼女も察したのか、すぐに別の話題へ移った。

その夜、家に帰って航海台帳を開いた。

マルセイユ港から持ち込まれた荷物のリストを見ると、ジュエリーの届け先は――私の家ではなかった。

海の上では、いつ風向きが変わるか分からない。

※作品紹介ではなく、第1話の書き出しをそのまま掲載しています。第1話の続きを読む

目次試し読み3話

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