
あなたに捧げた五年の春を、私は取り戻す
| 言語 | 日本語 |
|---|---|
| 試し読み | 第1〜3話(当サイト) |
| 掲載日 | |
| 読み方 | 横書き・縦書きを切り替え可 |
『あなたに捧げた五年の春を、私は取り戻す』は日本語の小説です。当サイトで第1〜3話を試し読みできます。
冒頭試し読み第1話より・約504字
「莉央がうっかりドレスを汚してしまったんだ。少しだけ、君のドレスを貸してやってくれないか」
私は数秒、言葉を失った。すると悠真は、当たり前のように続けた。
「今日の主役が杏奈だってことは、みんな分かってる。何を着ていたって変わらないだろ」
ドアのそばには、一人の女の子が立っていた。洗い古して白っぽくなったスニーカーを履き、小さな声で「こんにちは、杏奈さん」と言った。
親友の藤崎瑶子(ふじさき ようこ)が、私の前に立ちはだかった。
「これは杏奈の婚約披露パーティーなのよ。このドレスだって、三十軒もお店を回ってやっと決めたものなのに!」
悠真が私を一瞥した。
五年。
彼にこういう目で見られるたび、私はいつも折れてきた。
私は瑶子をそっと押しとどめ、ゆっくりと口紅のキャップを閉めた。
「着せてあげて」
悠真は満足そうに私の頭を撫でた。
「やっぱり杏奈は分かってくれるな。結婚式の日には、最高のウェディングドレスを買ってあげる」
久保莉央(くぼ りお)は、私の婚約披露パーティー用のドレスに着替えた。悠真は身をかがめ、彼女のドレスの裾を持ち上げてやった。
彼はやわらかな声で言った。
「莉央、本当にきれいだ」
その仕草を、私は知っている。
※作品紹介ではなく、第1話の書き出しをそのまま掲載しています。第1話の続きを読む
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