10年の青春恋愛劇。妻の私はただの脇役だった第2話
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「美弥が凛の幸せを邪魔したんだ。今日ははっきりさせなきゃ気が済まない。
ねえ美弥、颯太くんと凛が一緒になることを応援するよね?」
里香が鬼のような形相で私を睨みつけ、周りの空気は一瞬にして凍りついた。
大勢の視線を浴びながら、私は口を開いた。
ちょうど、颯太の言葉と重なるように。
「もういい、美弥を責めるな」
「二人のことを、応援するよ」
周囲が静まり返った。
颯太が驚いた様子でこちらを凝視したまま、黙り込んだ。
里香は眉をひそめて私を見下ろし、ふんと鼻で笑った。
「嘘じゃないよね。もう二人の邪魔なんかしないで」
誰かがわざとらしく咳払いをして、場の空気を和ませようと口を開いた。
「まあまあ、同級生なんだからそんなに堅苦しい話はやめようぜ」
「今日は里香ちゃんの結婚祝いだし、颯太と凛ちゃんがくっついためでたい日なんだ。酒でも飲もうよ」
周囲がそれに同調し、話題をそらそうとした。
しかし里香はしつこく話を続けた。
「別にどうしてもこの話をしたいわけじゃないの。昔、美弥が凛をひどい目にあわせたから、我慢できなかっただけよ。
あのラブレターのことは忘れたわけ?」
高校二年生の頃、颯太から手編みのブレスレットを貰って間もないことだ。
彼の課題を代わりに職員室に届ける時、教師たちの目の前で颯太のノートから一枚の封筒がこぼれ落ちた。
ピンク色の封筒には、凛の名前が書いてあった。
とっさに隠そうとしたが、もう遅かった。
教師の一人が封筒を拾い上げると、たまたま通りかかった凛にそれを渡し、冗談めかして笑った。
凛は目を真っ赤にしたまま教室へ戻り、席に突っ伏して泣き続けていた。
誰もが彼女を囲んで慰めた。
私はどうすることもできず、颯太に助けを求めた。あのラブレターのことは、私も知らなかったからだ。
颯太は私に見向きもしないで、デスクごと凛の横へ移動した。
無視という形のいじめは、そこから始まった。
誰も私に話しかけなくなり、学級委員が課題を回収する時に私の席だけを飛ばすようになった。
授業中でも昼休みでも、私が口を開くと、皆がわけもなく黙り込んだ。
高校二年の間、私はクラスメイトとまともに言葉を交わすことすらできなかった。
何をしたっていうの?
どうして誰一人として話を聞いてくれないの?
特に、精神的に追い詰められ、泣きながら颯太に電話をかけたあの夜のことを今も思い出す。
私の話をずっと聞いていた彼は、疲れ果てた冷たい声でこう言った。
「美弥、考えすぎじゃないか?
今回の一件は凛が被害者だし、みんなはお前を避けているだけだよ。
もう受験だし勉強に集中したい。明日の席替えで別々にしてもらおう。一人の方が気が楽だろ。
約束したことは変わらない。卒業したら、ちゃんとみんなに俺たちの関係を伝えるから」
私はスマホを握りしめ、ただ黙り込むしかなかった。
……
当時の記憶が蘇り、グラスを持つ指がかすかに震えた。
そこで凛が口を開いた。
「もういいのよ」彼女は颯太に身を寄せ、得意げに笑った。「10年前のことは水に流してやるわ。
でもね……」
凛はわざとらしく颯太を見つめた。
「悪いことばかりじゃなかったの。
美弥があのラブレターを落としたおかげで、颯太は私のために、先生にお願いをして隣の席にしてくれたの。手編みのブレスレットまでくれたし」
凛は腕に巻かれたブレスレットを自慢げに揺らした。
それは、10年前に颯太が私にくれたものと全く同じだった。
みんなの視線が凛の手元に集まる。
「うわ、本当だ!だからあの頃、颯太くんが編み方の動画を探していたんだ」
「やっぱり、運命のカップルだな」
「見ているだけでドキドキするよ」
周囲の反応を聞いて、自分の腕を隠したくなるような気持ちになった。
込み上げる怒りと悔しさ、隠しようのない苦しさが胸をかき乱した。
私は颯太を見た。
彼は手元のスマホに視線を落としたまま、周囲の声など耳に入っていないようだった。
目頭が熱くなり、何かを言おうとしたその時、誰かが私の腕を取り、高く持ち上げた。
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