養子の誕生日、妻は俺を地下室に閉じ込めた第2話
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「どれだけ俺を見下していても、目の前で俺が死んでも平気なのか?」
その言葉に、誠司はようやく足を止めた。
しばらくして、ドアの向こうから面倒そうな声が返ってきた。
「今から美咲様に電話します。美咲様が許可なさらなければ、あとは私の責任ではありませんからね」
慌ててうなずき、ドアの前にうつ伏せになったまま、誠司が電話をかけるのを待った。
「美咲様、律様が何度も血を吐いているそうです。病院へお連れしたほうがよろしいでしょうか」
美咲は料理を注文したばかりだった。誠司からの電話に顔をしかめ、冷たい声で叱りつけた。
「誠司、もう仕事を辞めたいの?
律をここから出さないようにと言ったでしょう。律の言うことをいちいち取り次がなくていいの!」
叱られた誠司は顔をしかめ、地下室のドアをにらんだ。
ふと、ドアの隙間から流れ出す血が目に入った。たちまち顔から血の気が引き、震える声で叫んだ。
「血が……血が出ています!美咲様、律様の話、本当みたいです!本当に血を吐いています!
ドアの隙間から、こんなに血が流れ出ています!」
スマホを持つ美咲の手が止まった。しばらく黙り込み、ためらいがちに口を開く。
「待ってて……」
意識がぼんやりする中、スマホから聞こえた悠斗の幼い声が、美咲の言葉を遮った。わずかに残っていた俺の希望も、そこで消えた。
「ママ、アイスが食べたい」
美咲が振り返った。
悠斗を抱いた亮介が、目を輝かせて美咲を見つめている。
「美咲、律からか?
今日は悠斗の誕生日だ。悠斗の誕生日を祝うのが気に入らなくて、何か理由をつけて美咲を帰らせようとしてるんじゃないか?この前、美咲が悠斗の保護者会へ行こうとしたときも、邪魔しただろ。
全部、俺が悪いんだ。悠斗が子どもの頃の美咲にそっくりだったから、施設でつらい思いをさせたくなかった。だから、どうしても引き取りたいと言った。
俺がそんなことを言わなければ、悠斗も保護者会で、ママのいない子だとからかわれることもなかったのに」
つらそうに自分を責める亮介を見て、美咲の胸がわずかに痛んだ。
悠斗は美咲へ駆け寄り、その胸に飛び込んだ。顔を上げ、甘えるような声で言う。
「ママ、最後まで一緒にお祝いしてくれる?ママと誕生日を過ごすの、今日が初めてなんだ。今まではずっとパパと二人だった。みんなに、ママがいないってからかわれたんだよ」
美咲は身をかがめて悠斗を強く抱きしめ、亮介を気遣うように見つめながら言った。
「二人と最後まで一緒に過ごすって約束したもの。何があっても、約束は守るわ。今日は、悠斗の誕生日より大切なことなんてないから」
亮介は表情を緩め、笑みを浮かべた。
「美咲、ありがとう」
誠司はドアの外で、それ以上は口を開くこともできず、立ち尽くしていた。
美咲の言葉を聞き、かろうじて残っていた気力も尽きた。ドアにもたれた体が、ゆっくりと床へ滑り落ちていく。
目を閉じる直前、美咲が誠司に命じる声が聞こえた。
「誠司、今は戻れないわ。
あとで小林先生に電話して、家まで診に行ってもらう。
律は嘘ばかりつくから、小林先生が来たら、あとは先生に任せて。私の許可なく律をここから出さないで。きちんと見張っていなさい。悠斗の誕生日を邪魔したら、責任を取ってもらうわよ!」
……
俺が、嘘つきだって?
意識を失う寸前、固く閉じたまぶたから、涙がこぼれた。
美咲にとって、俺はそんな人間だったのか。俺のことを少しも信じていなかった。
悠斗の保護者会の日、美咲が学校へ向かう途中で、俺が電話をかけたのは事実だ。けれど、引き止めたかったわけではない。開発中の製品テストが成功し、そのことを真っ先に美咲へ伝えたかっただけだ。
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