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養子の誕生日、妻は俺を地下室に閉じ込めた第2話

この話は約1490字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

「どれだけ俺を見下していても、目の前で俺が死んでも平気なのか?」

その言葉に、誠司はようやく足を止めた。

しばらくして、ドアの向こうから面倒そうな声が返ってきた。

「今から美咲様に電話します。美咲様が許可なさらなければ、あとは私の責任ではありませんからね」

慌ててうなずき、ドアの前にうつ伏せになったまま、誠司が電話をかけるのを待った。

「美咲様、律様が何度も血を吐いているそうです。病院へお連れしたほうがよろしいでしょうか」

美咲は料理を注文したばかりだった。誠司からの電話に顔をしかめ、冷たい声で叱りつけた。

「誠司、もう仕事を辞めたいの?

律をここから出さないようにと言ったでしょう。律の言うことをいちいち取り次がなくていいの!」

叱られた誠司は顔をしかめ、地下室のドアをにらんだ。

ふと、ドアの隙間から流れ出す血が目に入った。たちまち顔から血の気が引き、震える声で叫んだ。

「血が……血が出ています!美咲様、律様の話、本当みたいです!本当に血を吐いています!

ドアの隙間から、こんなに血が流れ出ています!」

スマホを持つ美咲の手が止まった。しばらく黙り込み、ためらいがちに口を開く。

「待ってて……」

意識がぼんやりする中、スマホから聞こえた悠斗の幼い声が、美咲の言葉を遮った。わずかに残っていた俺の希望も、そこで消えた。

「ママ、アイスが食べたい」

美咲が振り返った。

悠斗を抱いた亮介が、目を輝かせて美咲を見つめている。

「美咲、律からか?

今日は悠斗の誕生日だ。悠斗の誕生日を祝うのが気に入らなくて、何か理由をつけて美咲を帰らせようとしてるんじゃないか?この前、美咲が悠斗の保護者会へ行こうとしたときも、邪魔しただろ。

全部、俺が悪いんだ。悠斗が子どもの頃の美咲にそっくりだったから、施設でつらい思いをさせたくなかった。だから、どうしても引き取りたいと言った。

俺がそんなことを言わなければ、悠斗も保護者会で、ママのいない子だとからかわれることもなかったのに」

つらそうに自分を責める亮介を見て、美咲の胸がわずかに痛んだ。

悠斗は美咲へ駆け寄り、その胸に飛び込んだ。顔を上げ、甘えるような声で言う。

「ママ、最後まで一緒にお祝いしてくれる?ママと誕生日を過ごすの、今日が初めてなんだ。今まではずっとパパと二人だった。みんなに、ママがいないってからかわれたんだよ」

美咲は身をかがめて悠斗を強く抱きしめ、亮介を気遣うように見つめながら言った。

「二人と最後まで一緒に過ごすって約束したもの。何があっても、約束は守るわ。今日は、悠斗の誕生日より大切なことなんてないから」

亮介は表情を緩め、笑みを浮かべた。

「美咲、ありがとう」

誠司はドアの外で、それ以上は口を開くこともできず、立ち尽くしていた。

美咲の言葉を聞き、かろうじて残っていた気力も尽きた。ドアにもたれた体が、ゆっくりと床へ滑り落ちていく。

目を閉じる直前、美咲が誠司に命じる声が聞こえた。

「誠司、今は戻れないわ。

あとで小林先生に電話して、家まで診に行ってもらう。

律は嘘ばかりつくから、小林先生が来たら、あとは先生に任せて。私の許可なく律をここから出さないで。きちんと見張っていなさい。悠斗の誕生日を邪魔したら、責任を取ってもらうわよ!」

……

俺が、嘘つきだって?

意識を失う寸前、固く閉じたまぶたから、涙がこぼれた。

美咲にとって、俺はそんな人間だったのか。俺のことを少しも信じていなかった。

悠斗の保護者会の日、美咲が学校へ向かう途中で、俺が電話をかけたのは事実だ。けれど、引き止めたかったわけではない。開発中の製品テストが成功し、そのことを真っ先に美咲へ伝えたかっただけだ。

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