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銀河を越えたら、愛はもう戻らない第2話

この話は約1529字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

圭太は、自分の演技は完璧だと思っているのか、申し訳なさそうな目をして言った。「悪いな、蛍。これからお前は先に帰ってくれ。マネージャーが急に仕事を入れてきてな、行かないといけない。すぐに戻って一緒に過ごすから」

「うん」蛍はうなずき、彼に車へと送り込まれた。

別れ際、圭太は彼女の額に軽くキスを落とした。「いい子で待っててくれ。片付けたらすぐ帰る」

そう言うと、彼はほとんど駆け足でその場を離れていった。

その背中を見送りながら、蛍は自分が真っ二つに裂かれてしまったような感覚に襲われた。

一方では、何としても彼から離れたいと強く願っている。もう一方では、どうしても捨てきれない情と痛みが胸を締めつける。

何年も積み重ねた時間の中で、彼はもう家族のような存在になっていたのだから。

「奥様、泣いていらっしゃるんですか?」運転手が心配そうな声で聞いた。

蛍ははっとして、涙をぬぐった。「なんでもないわ。帰って」

「かしこまりました、奥様」

二人が暮らすこの別荘は、圭太の母が彼女に持たせた嫁入り道具だった。

そもそも、加瀬家が蛍を引き取ったのは純粋な善意だった。誰も、圭太があそこまで一途に蛍を想うとは予想していなかった。

幸い、加瀬家の年長者たちは考え方が柔軟で、二人のために盛大な結婚式を開き、式では蛍の実家代わりとして祝ってくれた。

そのため、社交界では「蛍の人生はまるでおとぎ話」と囁かれていた。

そのことを思い出し、蛍は自嘲気味に笑った。だが、それもたった三年しか持たなかった。

別荘に戻った途端、スマホがひっきりなしに鳴り響いた。画面に表示されたのは、親友の杉本乙美(すぎもと いつみ)からの着信だった。

「どうしたの?」

「メッセージ見て」

電話を切り、蛍が画面を開くと、二枚の鮮明な写真が飛び込んできた。

背景はホテルのエントランス。写真の中の女は真紅のドレスを纏い、長い髪を白い肩へと艶めかしく垂らしている。

たとえ後ろ姿だけでも、蛍にはすぐに分かった。それは一年前までの圭太の過激ファンだった志田小雪(しだ こゆき)だ。

当時、小雪は執拗に彼をつけ回し、最初は狂ったように電話をかけ、やがて二人の寝室のベッドの下にまで潜んで盗み聞きする始末。圭太が堪忍袋の緒を切って警察に通報してから、ようやく引き下がったと聞いていた。

蛍は彼から何度も、その迷惑ぶりを愚痴として聞かされていた。

その後、圭太が何をしたのかはわからないが、小雪は二度と彼の前に現れなくなった。

後に、彼女が女優としてデビューし、演技力を武器に一躍脚光を浴び、さらには圭太と共演までしてみせた。華麗な逆転劇だった。

蛍も一度は疑ったが、その後二人は仕事が終わるとほとんど接点がなく、彼女もそれ以上詮索はしなかった。

それが変わったのは、偶然圭太のスマホ画面を目にした時だった。

D80小雪【もう二日だよ。早く来ないと、本当に怒るよ?】

D80小雪【好きなようにしていいから】

その二つのメッセージを見た瞬間、蛍の頭は真っ白になった。

さらに、乙美の人脈を使って調べた結果、小雪との関係はすでに四、五年続いており、それは自分たちの結婚生活よりも長いと知った。

過激ファンだなんて、全部自分を騙すための口実だったのだ。

男というもの、本気で隠そうとすれば、隠し通せるのだと痛感した。

我に返った蛍は、表情一つ変えず写真を削除し、乙美へメッセージを送った。【予定通りに動いて】

すぐに返事が来る。【このクズカップル、絶対に叩き潰してやる】

蛍は彼女をなだめた後、スマホをロックしようとしたその時、画面に、新しい友達申請が表示された。

送信元は小雪。

まさか自分が動く前に、相手の方から仕掛けてくるとは。一体何をしようとしているのか、見せてもらおうじゃない。

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