銀河を越えたら、愛はもう戻らない第3話
この話は約1191字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。
蛍が承認ボタンを押すや否や、相手から立て続けに五、六枚の細部写真が送りつけられてきた。
挑発が足りないとでも思ったのか、さらに一通のメッセージが届く。
【気になってるんでしょ?もっと見せてあげる。これ、全部圭太が残した痕跡よ】
写真を見終えた蛍の胸の奥で、必死に押し込めていた感情が再び荒れ狂い始める。
彼女はスマホを閉じ、どうやって家まで帰ったのかも覚えていない。
気がつけばもう夜で、圭太が帰宅していた。
部屋に入った圭太は、窓辺に座っている蛍の姿を見て息を呑む。慌てて駆け寄り、その身体を窓際から引き離すように抱き寄せた。
「今日の蛍、本当に様子がおかしい。何かあるならちゃんと言ってくれ。お願いだから、そんなに俺を怖がらせないでくれよ。お前を失うのが本当に怖いんだ」
さっきの光景を見た瞬間、圭太の心臓は底なしの不安に落ちた。
まるで、このまま彼女が自分の前から完全に消えてしまう予感がしたかのようだ。
蛍は固く引き結ばれた唇の端をほんの少し持ち上げた。「大丈夫。ただ、窓の外の景色が綺麗で、もう少し眺めていたかっただけ」
もう二度と、この景色を見ることはないから。
この別荘は購入後、内装の一切を彼女が取り仕切った。職人たちに「まるでプロのデザイナーの仕事みたいだ」と言われたが、その裏にどれほどの心血を注いだか、知っているのは彼女だけだ。
だから他の誰かにここを使わせるつもりはなかった。
圭太は安堵の息をつき、恐る恐る尋ねる。「本当に、俺に話すことはないの?」
「眠いわ。早く寝よう」
圭太は「あっ」と思い出したように声を上げる。「そうだ、蛍」
背後からそっと抱きしめ、柔らかく囁いた。「半月前、子どもを作ることに同意してくれたよな。でも最近、ずっと俺を拒んでる。今日ならどうかなって……」
「いらない」蛍は思わず身をよじった。
「蛍?」
心を落ち着け、彼女は言う。「明日から旅行に行きたいの。だから帰ってきてからにしてくれる?氷河島は環境が厳しいから、身体に負担をかけたくないの」
「氷河島?」圭太の眉間に皺が寄る。胸の奥に妙なざわめきが広がった。「何しに行くんだ?」
「友達と約束してたの。一緒に遊びに行くのよ」
圭太は疑問を抱きながらも、不自然さは感じずにうなずいた。「わかった。必ず気をつけてな。どのくらいで帰る?」
「すぐよ」
「でも離れたくない」圭太はさらに強く抱きしめる。「じゃあ、俺も一緒に行こうか?」
蛍はするりと腕をほどいた。「今日、新しい仕事のオファーを受けたんじゃなかった?かなり急ぎなんでしょ」
最後の数語を、あえて強調した。
圭太の視線が揺れ、喉仏が上下する。
何かを思い出したのか、その表情が一瞬にして変わった。「あ、そうだ。教えてくれてありがとう。本当に急ぎなんだ」
蛍は自嘲めいた笑みを浮かべる。「わかってるわ。もう寝よう」
あと少し。今回の旅が終われば、もう二度とこの男の仮面を見る必要はない。
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