義妹にすべてを譲った私に、家族は跪いて許しを乞うた第2話
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今回、私が譲りたくないと言っただけで、何もかも私が悪いの?
もう言い争う気にもなれず、私は踵を返して道路の向こう側へ歩き出した。
そのとき、信号無視の車が猛スピードで突っ込んできて、危うく轢かれそうになった。
父が慌てて私を引き寄せる。
目は真っ赤になっていて、声まで震えていた。
「大丈夫か?怖かっただろ?どこか痛いところはない?父さんに言ってごらん」
父が必死になればなるほど、胸が苦しくなった。
狼狽する父の姿を見ていると、目の奥が熱くなる。
私は勢いよく顔を背け、込み上げてくる涙を必死に堪えた。
見ちゃいけない。
心を揺らしちゃいけない。
私は父の手を力いっぱい振りほどき、一歩後ろへ下がって距離を取った。
「ついてこなくていい。
学校に行くのは、清音の将来を潰すためじゃないから」
父は一瞬、呆然とした。けれど、それでもどこかホッとしたように見えた。
私は自嘲するように口元を歪め、そのまま歩いてタクシーを拾おうとした。
すると父はすぐに我に返り、怒気を滲ませた声を上げた。
「それでよく、駄々をこねてないなんて言えるな?家の車がすぐそこにあるのに、わざわざタクシーなんか拾う必要がどこにある?」
私は差し出された手を避けた。拒絶の意思を、隠すことなく目に浮かべる。
父は手をぎゅっと握りしめ、ため息をついた。
「父さんはただ、家族みんなが仲良く暮らしてほしいだけなんだ。どうしてそれが分からないんだ?
お前は父さんが大切に育ててきた、俺の宝物だ。父さんがお前をどれだけ愛してるか、お前だって分かってるだろう?」
急に、なんだか可笑しくなった。
それでも涙だけは、言うことを聞かずに頬を伝って落ちていく。
私は意地を張るように顔を背け、少し震える声で言った。
「そんなに私を愛してるなら、私がどれだけ前から推薦枠を目指してたかだって、知ってるよね。
それなのに、どうして私の枠を清音に譲ったの?」
父は口を開きかけ、一瞬言葉に詰まった。それから、歯切れの悪い口調で説明した。
「安奈ちゃん、これは別の話だ。清音は継娘なんだ。父さんにできるのは、あの子がこれから自分の力で頑張れるように道を整えてやることくらいだ。
お前はずっと、俺たちの可愛いお姫様だ。俺たちがお前を一生養ってやる。何も心配することなんてない」
継娘という立場なのに、実の娘と同じように愛される。
一方、実の娘である私は、いつだって清音に遠慮しなければならない。
私は涙を拭い、思わず笑い声を漏らした。
清音がこの家に来る前は、この愛情も、この特別扱いも、全部私のものだった。
あの頃の父は、ベビーシッターに私を任せるのさえ心配して、どこへ行くにも私を連れていった。
どんなに遅くまで接待や会食があっても、必ず帰ってきて私に寝る前のお話をしてくれた。
毎朝毎晩、欠かさず自分で私を学校まで送り迎えしてくれた。
重要な取締役会にだって、私を隣の椅子に座らせていた。
誰もが知るほどの、筋金入りの娘溺愛ぶりだった。
なのに、目の前にいるこの人は、清音が昔どれほど苦労したかを私に聞かせて、ただ「あの子に譲ってやれ」と言うだけ。
私の問いかけは、父の目にはまるで、私が学校へ行って騒ぎを起こし、清音の推薦枠を邪魔しようとしている証拠にしか映っていなかった。
「とにかく、いったん家に帰るぞ!」
父は私の気持ちなど気にも留めず、無理やり私を車へ乗せた。
「父さんから頼むから、もういい加減にしてくれ。今回、お前が欲しいものなら何でも買ってやるから……
それに、清音ももうすぐ家を出ていくんだ。そうしたら、お前だって……」
私はもう、父の言い訳を聞きたくなかった。
黙ってイヤホンを取り出し、音量を最大まで上げた。
車が家の前に停まると、父は私の腕を掴んで車から降ろした。
清音は父の腕の傷を見るなり、すぐに目を赤くした。
そして小走りで駆け寄ると、ぽろぽろと涙をこぼした。
「お父さん、どうして怪我したの?こんなに血が出てる……痛くない?早く中に入って薬を塗ろう。
注射もしたほうがいいんじゃない?もし破傷風に感染したら大変だよ……」
その後ろから翔もついてきた。父の傷口に目を向けると、眉をひそめ、私を責めるように言った。
「安奈ちゃん、お前、もういくつだと思ってる?家出なんかして……父さんの腕はどうしてこんな怪我をしたんだ?少しは……」
私は冷たい顔で、車のドアを力いっぱい閉めた。
「私には関係ない!」
そのまま家の中へ戻ろうとした。けれど、翔が一歩だけ前へ出た。
そして何気ない仕草で、私と清音の間に立ちはだかった。
その動きを見た瞬間、胸の奥まで凍りついた。
頬を涙が伝って、そこで初めて気づいた。
私は、泣いていた。
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