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義妹にすべてを譲った私に、家族は跪いて許しを乞うた第1話

この話は約2063字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

10歳のとき、両親が離婚した。私・白井安奈(しらい あんな)は母の負担になりたくなくて、父と兄たちと一緒に国内で暮らすことを選んだ。

父は私をお姫様のように大切にし、兄たちは何でも私の言うことを聞いてくれた。まるで世界中のすべてを私の前に差し出そうとしているかのようだった。

けれど、父が再婚し、家に義妹が一人増えたその日から、すべてが変わった。

彼女は愛嬌があって、人懐っこくて、あっという間に家族みんなの愛情を独占した。

父が半年もかけて私のために作ってくれた夢のように可愛らしい部屋は、彼女専用の部屋になった。

長兄の白井翔(しらい しょう)が毎日のように買って帰ってきてくれたイチゴのケーキは、彼女の好きなマンゴープリンに変わった。

それどころか、次兄の白井弘(しらい ひろむ)が何より大切にしていたゲーム機まで、彼女の手に渡った。

そして、私が丸1年ずっと心待ちにしていた大学の推薦枠まで林清音(はやし きよね)に押し付けられたとき、私はとうとう我慢できずに問い詰めた。

父は私の肩を押さえつけ、重々しい口調で言った。

「お前は姉なんだから、妹には少し譲ってやりなさい」

翔は私の手首をきつく掴み、叱りつけるように言った。

「たかが大学の入学推薦枠で、そこまで騒ぐな。こんなことが外に知れたら、うちがどう思われると思ってる?」

弘は眉をひそめ、一歩後ずさった。

「もういいだろ。あの子だって、あんなに可哀想なんだから」

私は、目を赤くした清音をみんなが取り囲み、口々に慰めている姿を見つめていた。

胸の奥が、少しずつ、少しずつ冷え切っていった。

私は何も言わずに自分の部屋へ戻った。

そして、ずっとしまってあった、これまで一度もかけたことのない番号を取り出し、通話ボタンを押した。

「母さん……前に言ってた、海外留学の話……私、行くことにした」

* * *

部屋に戻ると、私は必要な書類や身分証明書を一つずつ揃え、バッグに詰め込み、退学手続きをしに出かけようとした。

背後から、父の困ったような声が聞こえてきた。

「安奈ちゃん、運転手に送らせて学校に何しに行くんだ?

言っただろう?入学推薦枠を清音に譲った分は、父さんがちゃんと埋め合わせるって……」

また、同じ言葉だった。

私は振り返ることも、返事をすることもしなかった。

バッグを強く握りしめ、そのまま足を速めた。

玄関まで来たところで、ちょうど運転手が車を回してきた。

私が乗り込むと、父も後から乗り込んできた。

父の目に浮かんだ心配が本物なのは、分かっていた。

でも、それ以上に、私が何か取り返しのつかないことをして、清音の推薦枠に影響を及ぼすことを恐れているのだろう。

私は心の中で苦笑し、唇を固く結んだまま何も言わなかった。

車内は、重苦しい静けさに包まれた。

しばらくして、父が先に口を開いた。声はひどく優しかった。

「安奈ちゃん、お前ももう大人なんだから、少しは分別を持ちなさい。妹にはもう少し譲ってやるんだ。

今回は父さんが自分で決めて、推薦枠をあの子に譲ったんだ。

前からコンサートに行きたがってただろう?父さん、もうチケットを取ったぞ。前のほうのVIP席だ。だから、もう駄々をこねるのはやめてくれないか?」

でも、私、芸能人とかコンサートとかには興味ない。

コンサートに行きたがっていたのは、清音だ。

指先が掌に食い込む。

痛みで息が苦しくなるほどだった。

「車を止めて!」

私の掠れた声が車内に響いた。

運転手が戸惑ったように父を見る。

「私が止めてって言ってるの!」

私は声を荒らげ、ドアロックに手をかけた。

車がまだ完全に停まりきらないうちに、ドアを開けて飛び出した。

頭の中は、とにかくここから逃げたいという思いでいっぱいだった。

すれ違うバイクの存在など、まったく目に入っていなかった。

次の瞬間、反応する間もなく、父に腕を掴まれて引き戻された。

父の腕には、一本の切り傷が走っていた。

裂けた皮膚から赤い肉が覗き、目を背けたくなるほど痛々しい。

父はまだ驚きの表情を浮かべたまま、真っ先に私の肩を掴み、頭の先から足元まで確認した。

「安奈ちゃん、大丈夫か?怪我はないか?」

胸の奥が、きゅっと痛んだ。

父を心配して声をかけようとした、そのとき――

「お前が清音の半分でも聞き分けがよければ、父さんはそれで満足なんだ。帰ったら、ちゃんとあの子に謝りなさい。あんなにいい子なのに、お前のせいで泣いてるんだぞ」

指先が震えた。

私はゆっくりと、父の手から腕を引き抜いた。

それでも私が何の反応も示さないのを見て、父は次第に苛立ちを露わにした。

「安奈ちゃん、父さんの話を聞いてるのか?

たかが推薦枠一つじゃないか。今までだって、何でも清音に譲ってきただろう? 今回はいったい何をそんなに意地になってるんだ?」

今まで?

私は心の中で苦笑した。

私の部屋も、私の父も。それどころか、母が私のためにくれたものまで。

清音が欲しいと言えば、私は必ず両手で差し出さなければならない。

少しでも拒めば、決まってこう言われる。

――私がわがままで、聞き分けがなく、わざと駄々をこねているのだと。

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