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絶望の産声、息子の命が開いた夫婦の終幕第2話

この話は約2015字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

息子はきゅっと眉をひそめた。

「ママは何も悪くない!僕、全部見てた。ママを階段から突き落としたのは、あなたでしょ!」

その瞬間、美帆の目が氷のように冷たくなり、手を振ってすぐにでも息子を追い出すようボディーガードに合図する。

「嫌なの?それならお前のママが死ぬのを見ていればいいわ」

息子はついに焦り、目を真っ赤にして大粒の涙を次々とこぼす。

「僕、土下座する!謝る!恋星が謝るから!」

ゆっくりと膝をつく息子。その姿は、あまりにも小さく、あまりにも哀れだった。

私の心は千切れるように痛んだ。今すぐ駆け寄って、抱きしめてやりたかった。

彼は、遥斗の唯一の息子、藤崎家の後継者なのに!

それなのに、こんなふうに弄ばれ、虐げられるなんて!

すべては、無力な母親である私のせいだ……

美帆は口元をおさえて冷笑した。「忘れないで、ちゃんと頭を下げなさいよ」

息子は涙をぬぐい、深く、深く頭を下げた。

「美帆おばさん、怒るなら恋星に怒って。ママを責めないで……」

病室は暖房が効きすぎて、美帆は白いワンピース一枚だけ。

でも、息子は汗だくになっていた。

それでも、美帆の心は氷より冷たかった。彼女はボディーガードに目配せする。

「何それ、ふにゃふにゃじゃない。それが土下座?」

ボディーガードはすぐに悟り、二歩前に出て、息子の首をぐっと締めた。

次の瞬間、彼の頭を力まかせに床に叩きつける。

息子の叫び声が響いた。額がゴンッとタイルにぶつかる。

たった数回で、息子の額は大きく腫れ上がり、青紫色に変わっていく。

汗と血が混ざり、髪にべっとりと絡みつく。

その姿は、物乞いよりもみじめだった。

私は狂ったようにボディーガードに飛びかかり、息子を傷つけるなと叫びながら引き剥がそうとした。

けれども、私の腕は何度も人をすり抜けるだけ。

息子を守ることもできず、私の叫びも誰にも届かない。

美帆が手を振り、ボディーガードを止めた。

「もういいわ、死なれたら困るから」

息子は目を閉じ、息も絶え絶えになっていた。

それでも小さな手を震わせ、ダウンコートのポケットに手を入れる。

そして、やっとの思いで一つのおもちゃを取り出した。

キラキラと輝く小さな金の豚のペンダントも、ぽとりと足元に落ちる。

「美帆おばさん、ぼく……もう、頭も下げた。だから、ママを助けて。

これ、パパがくれたおもちゃの車と、おじいちゃんがくれた金の豚、全部あげるから……

ぼく、もう何もいらない。ぼく、ママがいい。恋星、ママだけでいい……」

私は息子の隣に跪き、空っぽの腕で彼を抱きしめた。涙はもう止まらなかった。

かつて、遥斗と私は、誰もが羨む夫婦だった。

「ねえ、星乃(ほしの)、息子の名前は恋星にしよう」

彼は小さな恋星を胸に抱き、英語で寝る前の物語を読む人だった。

手を取って、一緒にスキーやダイビングを教えてくれる優しい父親だった。

彼は息子におもちゃを買い与えない主義だった。「藤崎家の後継者には、くだらないものは必要ない」

でも、このおもちゃの車だけは違う。去年、家族みんなで大阪のユニバーサルスタジオに行ったとき、遥斗が息子のためにゲーム大会で勝ち取った特別なものだ。

息子はこの車をとても大切にしていて、寝るときも枕元に置いていた。

金の豚のペンダントも、ただのアクセサリーじゃない。

息子は亥年生まれで金運が薄い。

おじいちゃんが有名なデザイナーに依頼し、99粒のダイヤをあしらって、「一生の幸せを」と願いを込めて贈ってくれたのだ。

しかし、そんな幸せは、美帆が帰国した瞬間に壊された。

彼女は何度も罠を仕掛け、遥斗に私への不信感を募らせた。

恋星が私を守ろうとすれば、彼女は「母親が嘘を教えて悪い子にしてる」と泣きついた。

そんなことを思い出していると、美帆はがベッドからハイヒールを履き、歩み寄ってきた。

そして、息子の大切なおもちゃの車を足元で踏みつけ、粉々に壊した。

「藤崎家がどれだけお前を甘やかしてるか、私に自慢したいの?」

彼女はボディーガードに息子の厚手のコートを脱がせ、両腕を捻り上げさせる。

鋭いネイルで息子の体を何度も引っ掻いた。

瞬く間に胸とお腹には青黒い傷が広がり、血が滲む。

「なにが金の豚よ、あんたなんてただのバカ豚じゃない!」

彼女は高らかに笑い、目には悪意しかない。

「お前のママがどうして死んだと思う?私が医者を買収して殺させたのよ。お前はあの早死にした妹を見たことないだろ?

生まれたばかりなのに、泣くこともできなくて、医者に窒息死させられたのよ。ふふ、ざまあみろ」

その言葉に、私の怒りは頂点に達した。今すぐ怨霊になって、この悪女を地獄に叩き落としてやりたい!

「あの無能な女に生まれたのが悪いのよ。私が海外にいる隙に遥斗を奪うなんて、身の程知らず!」

その瞬間、ついに息子はすべてを悟る。

腫れた目を必死に開き、美帆の手首に噛みついた。

美帆は鋭い悲鳴を上げる。

「悪い女!最低!僕の妹を返して!パパに全部言って、警察に捕まえてもらうから!」

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