絶望の産声、息子の命が開いた夫婦の終幕第2話
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息子はきゅっと眉をひそめた。
「ママは何も悪くない!僕、全部見てた。ママを階段から突き落としたのは、あなたでしょ!」
その瞬間、美帆の目が氷のように冷たくなり、手を振ってすぐにでも息子を追い出すようボディーガードに合図する。
「嫌なの?それならお前のママが死ぬのを見ていればいいわ」
息子はついに焦り、目を真っ赤にして大粒の涙を次々とこぼす。
「僕、土下座する!謝る!恋星が謝るから!」
ゆっくりと膝をつく息子。その姿は、あまりにも小さく、あまりにも哀れだった。
私の心は千切れるように痛んだ。今すぐ駆け寄って、抱きしめてやりたかった。
彼は、遥斗の唯一の息子、藤崎家の後継者なのに!
それなのに、こんなふうに弄ばれ、虐げられるなんて!
すべては、無力な母親である私のせいだ……
美帆は口元をおさえて冷笑した。「忘れないで、ちゃんと頭を下げなさいよ」
息子は涙をぬぐい、深く、深く頭を下げた。
「美帆おばさん、怒るなら恋星に怒って。ママを責めないで……」
病室は暖房が効きすぎて、美帆は白いワンピース一枚だけ。
でも、息子は汗だくになっていた。
それでも、美帆の心は氷より冷たかった。彼女はボディーガードに目配せする。
「何それ、ふにゃふにゃじゃない。それが土下座?」
ボディーガードはすぐに悟り、二歩前に出て、息子の首をぐっと締めた。
次の瞬間、彼の頭を力まかせに床に叩きつける。
息子の叫び声が響いた。額がゴンッとタイルにぶつかる。
たった数回で、息子の額は大きく腫れ上がり、青紫色に変わっていく。
汗と血が混ざり、髪にべっとりと絡みつく。
その姿は、物乞いよりもみじめだった。
私は狂ったようにボディーガードに飛びかかり、息子を傷つけるなと叫びながら引き剥がそうとした。
けれども、私の腕は何度も人をすり抜けるだけ。
息子を守ることもできず、私の叫びも誰にも届かない。
美帆が手を振り、ボディーガードを止めた。
「もういいわ、死なれたら困るから」
息子は目を閉じ、息も絶え絶えになっていた。
それでも小さな手を震わせ、ダウンコートのポケットに手を入れる。
そして、やっとの思いで一つのおもちゃを取り出した。
キラキラと輝く小さな金の豚のペンダントも、ぽとりと足元に落ちる。
「美帆おばさん、ぼく……もう、頭も下げた。だから、ママを助けて。
これ、パパがくれたおもちゃの車と、おじいちゃんがくれた金の豚、全部あげるから……
ぼく、もう何もいらない。ぼく、ママがいい。恋星、ママだけでいい……」
私は息子の隣に跪き、空っぽの腕で彼を抱きしめた。涙はもう止まらなかった。
かつて、遥斗と私は、誰もが羨む夫婦だった。
「ねえ、星乃(ほしの)、息子の名前は恋星にしよう」
彼は小さな恋星を胸に抱き、英語で寝る前の物語を読む人だった。
手を取って、一緒にスキーやダイビングを教えてくれる優しい父親だった。
彼は息子におもちゃを買い与えない主義だった。「藤崎家の後継者には、くだらないものは必要ない」
でも、このおもちゃの車だけは違う。去年、家族みんなで大阪のユニバーサルスタジオに行ったとき、遥斗が息子のためにゲーム大会で勝ち取った特別なものだ。
息子はこの車をとても大切にしていて、寝るときも枕元に置いていた。
金の豚のペンダントも、ただのアクセサリーじゃない。
息子は亥年生まれで金運が薄い。
おじいちゃんが有名なデザイナーに依頼し、99粒のダイヤをあしらって、「一生の幸せを」と願いを込めて贈ってくれたのだ。
しかし、そんな幸せは、美帆が帰国した瞬間に壊された。
彼女は何度も罠を仕掛け、遥斗に私への不信感を募らせた。
恋星が私を守ろうとすれば、彼女は「母親が嘘を教えて悪い子にしてる」と泣きついた。
そんなことを思い出していると、美帆はがベッドからハイヒールを履き、歩み寄ってきた。
そして、息子の大切なおもちゃの車を足元で踏みつけ、粉々に壊した。
「藤崎家がどれだけお前を甘やかしてるか、私に自慢したいの?」
彼女はボディーガードに息子の厚手のコートを脱がせ、両腕を捻り上げさせる。
鋭いネイルで息子の体を何度も引っ掻いた。
瞬く間に胸とお腹には青黒い傷が広がり、血が滲む。
「なにが金の豚よ、あんたなんてただのバカ豚じゃない!」
彼女は高らかに笑い、目には悪意しかない。
「お前のママがどうして死んだと思う?私が医者を買収して殺させたのよ。お前はあの早死にした妹を見たことないだろ?
生まれたばかりなのに、泣くこともできなくて、医者に窒息死させられたのよ。ふふ、ざまあみろ」
その言葉に、私の怒りは頂点に達した。今すぐ怨霊になって、この悪女を地獄に叩き落としてやりたい!
「あの無能な女に生まれたのが悪いのよ。私が海外にいる隙に遥斗を奪うなんて、身の程知らず!」
その瞬間、ついに息子はすべてを悟る。
腫れた目を必死に開き、美帆の手首に噛みついた。
美帆は鋭い悲鳴を上げる。
「悪い女!最低!僕の妹を返して!パパに全部言って、警察に捕まえてもらうから!」
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