和紙文絶望の産声、息子の命が開いた夫婦の終幕 · 第1話設定≡

絶望の産声、息子の命が開いた夫婦の終幕第1話

この話は約1951字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

夫・藤崎遥斗(ふじさき はると)の初恋の人に突き落とされ、私は二人目の子を難産で失ってしまった。そして、藤崎家の私立病院の階段の片隅で、ひっそりと息を引き取った。

死の間際、六歳の息子が泣きながら夫に助けを求めた。

一度目、遥斗はただ冷たい笑みを浮かべただけだった。「お前の母親も賢くなったもんだな。子どもを使って、俺の同情を引こうとしてるか」

そう言って、息子の手を振り払うと、何のためらいもなく背を向けて去っていった。

二度目、息子が「ママが血を止められないんだ!」と必死に訴えた。

遥斗は面倒そうに顔をしかめた。「大げさだな。流産しただけで、そんな大したことじゃないだろ。あいつは本当に大袈裟な女だ」

息子を追い払った後、彼は医者に命じた。「誰もあいつの面倒を見るな。どうせ俺が甘やかしたせいだ。少し苦しみでもしなきゃ、自分の過ちに気づかない」

最後、息子は彼の初恋の人の前で、膝をつき、頭を床に打ちつけてまで必死に頼んだ。

遥斗は逆上し、傷だらけの息子をボディーガードに命じて病室から放り出させ、周りの人間たちの嘲笑の的にした。

「美帆の療養を邪魔したら、お前の母親を藤崎家から追い出して、二度とお前に会わせないぞ!」

息子は血の跡を引きずりながら、私のもとに這い戻ってきた。

これであなたの望みは叶ったわね。

私も、息子も、二人とも冷たい死体となり、永遠にあなたと再び会うことはない。

* * *

手術が終わった後、夫・藤崎遥斗(ふじさき はると)は、私が七ヶ月もお腹で育ててきた二人目の子を失ったことに、これっぽっちも心を痛めていなかった。

ここは藤崎グループの私立病院のはずなのに、わざと誰かに命じて、階段の隅にみすぼらしい簡易ベッドを用意させていた。

寒さで全身が凍えるのは私だけじゃなかった。ずっと側で見守ってくれている息子も、震える体を必死に抑えている。

それでも、息子は自分のことなんて気にせず、私の手をぎゅっと握りしめ、小さな口から息を吹きかけてくれる。

「恋星(れんせい)がママにふーふーしてあげる。ふーってしたら、あったかくなるよ!」

私は必死に笑顔を作って答えた。

「ママは寒くないよ」

でも、腫れて青くなった小さな手を見た瞬間、堪えていた涙が止まらなくなった。

すぐ上の階段を上がれば、佐々木美帆(ささき みほ)のための高級個室がある。

そこには24時間体制で医者と看護師が張り付き、遥斗が雇った大勢のボディーガードとお手伝いまで揃っている。

息子は唇を噛みしめて、何かを決意したようだった。

「ママ、僕、美帆おばさんに頼んでみる。パパに来てって、お願いしてくるね?」

その澄んだ瞳を見て、胸が締め付けられる。

どれだけお利口で優しい子でも、まだ六歳なんだ。

彼には分からないのだろう。私を階段から突き落とし、自分もわざと転んで私のせいにした美帆が、私の死をどれほど待ち望んでいるかを。

突然、体から温かい液体が流れ出すのを感じた。

息子が大声で叫んだ。

「血がいっぱい!ママ、いっぱい血が出てるよ!」

私が返事をする前に、彼は狂ったように階段を駆け上がった。

息子が美帆のところへ行くと分かり、心臓が締め付けられるような痛みに襲われた。

止めようと体を起こそうとしたけど、もう一歩も動けなかった。

何日も弱り切り、悲しみに押しつぶされ、ついに私はそのまま意識を失ってしまった。

しかし、奇跡的に、私の魂だけが体を離れ、息子の後を追うように漂い始めた。

美帆の病室の前まで走り、息子がノックしようとした瞬間、ボディーガードが彼を思い切り蹴り飛ばした。

「社長の命令だ。佐々木さんを邪魔するな!」

息子は床に叩きつけられたが、すぐに這いずりながらドアまで進む。

必死に拳を握って、何度もドアを叩いた。

「美帆おばさん!美帆おばさん!ママがいっぱい血を流してるの!お願い、お医者さんを呼んで、ママを助けて!」

ここ数日、私を守るために、贅沢に育てられた息子は空腹と寒さに耐えてきた。

まだ幼い手は腫れ上がり、見るも無惨な姿。

それでも力いっぱいドアを叩き、皮膚が裂けて血がにじみ、赤い跡がドアに残った。

私は叫んだ。「やめて!そんなことしないで!あの女に頭を下げるなんて、絶対にしないで。

ママはもう死んでしまったのだから……」

でも、魂には声がなかった。

その時、病室のドアがふいに開いた。

美帆はベッドの上で、優雅に栄養スープを飲んでいた。

「入れてあげて」

ボディーガードは、息子の襟首を掴み、まるで小さな小鳥を放り投げるように病室の床に放り出した。

美帆は新しく塗ったばかりの艶やかなネイルを撫でながら言った。

「ママを助けてほしいのかしら?」

息子が必死にうなずくと、彼女は冷たく笑った。

「じゃあ、あの女に代わって、私に土下座して謝りなさい。そうしたら、お医者さんを呼んであげるわ」

縦書き表示中:本文は右から左へスクロールします(← → キーでも移動できます)