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私の理想の家を愛人に贈った夫第2話

この話は約1589字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

帰り道、SNSを開くとずいぶん賑わっていた。

美月が、新居の工事がようやく始まったと何件も写真を投稿している。

その中でも一番目立つ位置に置かれていたのは、靖とのツーショットで、わざわざハートの加工まで施されている。

【靖の全面協力に大感謝!靖がいなかったら、こんな素敵なおうちはできなかった】

コメント欄はすぐに盛り上がった。

【靖さん、美月さんの新居を設計するために、決まってた仕事を何件も断ったらしいよ!】

【最近ずっと事務所に泊まり込んでるって聞いたから、起きてる時間はほとんど美月さんの図面描いてるんじゃない?】

【さすがインテリア業界のトップコンビ。仕事へのこだわりまで息ぴったりじゃん!】

私は無表情のまま画面をスクロールした。

どの完成予想図にも見覚えがある。

寝室の間接照明も、テレビ背面の壁に使われている素材も、どれも私が靖に何度も話していたものだった。

靖は、私が思い描いていた理想の家を、そっくりそのまま別の女に与えた。

しばらく画面を見つめてから、私は美月の投稿すべてに「いいね」を押した。

SNSを閉じようとしたところで、同僚からメッセージが届く。

【智世さん、もし良かったら、ご自宅の設計図って見せてもらえませんか?参考にしたくて。

靖さんってすごく腕のいいデザイナーだし、ご自宅もきっと素敵なんでしょうね!】

私は冷めた気持ちで笑った。

結婚したばかりの頃、友人たちはみんな、有名なインテリアデザイナーと結婚した私を羨ましがった。

「あの有名デザイナーの浅倉靖だよ?どんな人の理想の家でも形にできるって有名じゃん。そんな人が旦那さんなんて、絶対幸せだよね」

「智世、靖さんと結婚したなら家のことは何も心配いらないじゃん!」

あの頃の私も、本気でそう思っていた。

けれど家に入った日、目の前にあったのは剥き出しの壁とコンクリートの床や、そこら中を走る配管や配線。

一瞬、あまりの見窄らしさに、私は部屋を間違えたのかと思ったが、それでも靖は平然としていた。

結婚1年目、通勤に便利だからという理由で、私たちはその未完成の部屋にそのまま住み始めた。

私は何度も内装工事の話をしたけれど、そのたびに靖は適当な理由をつけて先延ばしにした。

「智世、子どもが生まれてから子ども部屋も一緒にやったほうが楽だろ。

内装したあとで気に入らなくなって、全部やり直したいって人を何人も見てきたんだ」

靖は私を抱き寄せ、ひどく真剣な顔で言う。

「家っていうのは一生住むものだろ?一度気に入らない家にしてしまったら、ずっと後悔することになる。

だから、そのときになってから考えよう」

その「そのとき」を信じて、私は1年目をやり過ごした。

けれど2年目。梅雨の時期になると、防湿もまともにされていない壁のせいで、家の中はひどく蒸し暑くなった。

もう耐えられず、私はもう一度、靖に内装の相談をしたのだが、その頃には靖も言い訳をすることすら面倒になっていたらしく、「仕事が忙しい」それだけを理由に、私の話を避けるようになった。

そして、靖が家へ帰ってくることがどんどん減っていったのは、その頃からだった。

同じ建築設計事務所で、私は広報、靖は設計部門。

本来なら同じ職場から一緒に帰れるはずなのに、靖は事務所に泊まり込むようになった。

担当案件が多くて忙しいんだと、同僚たちも靖を庇う。

でも、私は何も見えていなかったわけじゃない。

靖と美月が二人で事務所の社員寮を出入りする姿も見たし、一緒にショールームへ家具を見に行く姿も見た。

そして、夜遅くまで机に向かい、美月のために何度も設計図を修正していることも知っていた。

私は何度か深く息を吸ってから、スマホのカメラを起動した。何もない部屋を何枚か撮り、同僚へ送る。

【ごめんなさい。うちはたぶん、参考にならないと思います。

私たちの家に設計図なんてないし、そもそも一度も、内装工事をしてもらったことがないので】

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