私との休暇に、秘書を優先する夫なんか捨ててやる第2話
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待ち合わせ場所で一人寂しく2時間待っていたって、結局湊からは「いけなくなった」という電話が来るだけだった。
だから最初は信じていなかった。
それでも休暇前に湊は荷造りをし、飛行機を予約し、旅行の計画まで組んでいた。
それなら、今回こそはと彼を信じることにした。
しかし、案の定また裏切られただけだった。
だが今回、怒りは湧かなかった。周囲の冷ややかな視線の中、私は人事部へと向かい、1ヶ月前から用意していた辞表を提出する。
人事担当は戸惑った様子で言った。「退職するんですか?」
私は静かに頷く。
「それなら、社長に一言報告しますね」
人事担当がメールを送ろうとしたので、私はそれを制した。「電話をかけて」
睦月といる時の湊は基本的にメールなど見ない。
だから私がメッセージを送っても、返信はいつも翌日になっていた。
もう待ちたくなかった。
人事担当は気が進まない様子だったが、私の立場もあり湊に電話を入れる。「社長、奥様が……」
まだ私の名前を言っただけなのに、湊の冷酷な声が人事担当の言葉を遮る。「あいつが何をしようと、会社の規定通りにやればいいだろ?俺に聞く必要なんかない。人事なら、会社の規定くらい把握してるよな?」
湊は例のコメントの件でまだ私に腹を立てているようだ。
人事担当は萎縮して黙り込む。
すると、湊がさらに付け加えた。「それと、緊急時以外はメールで連絡してこい。電話はしてくるな」
そう言って、湊は容赦なく電話を切った。
電話が切れる寸前、聞き慣れた睦月の声が聞こえていた。「湊さん、そんなに怒って。もしかして瑠衣(るい)さんからの電話?」
叱責を受けた人事担当は気まずげな表情で私を見たが、特に何も言うことはなかった。
「電話の内容は聞こえましたよね?なので、辞表は一旦持ち帰ってください。今日のことはなかったことにしますし、外にも漏らしませんから」
明らかに人事は、私が本気で辞めるなどとは思っていないようだ。
いつものように湊への不満から、気を引こうとする強硬手段だとでも思っているのだろう。
まあ、それも無理はない。湊と結婚して8年、二人でこの会社を築き上げたのだから、誰も私が本当に去るなんて信じないはずだ。
しかし、私は首を振って、断固とした口調で答える。「規定通り進めて」
人事担当は当惑しながらもなおも食い下がったが、私の意志が固いとわかると、しぶしぶとハンコを押して引き継ぎ業務を進めた。
私が辞めるということは瞬く間に会社中に広まった。だが社員たちは、退職を理由に駆け引きを仕掛け、自爆したのだと私を笑った。
私は特に誤解を解くこともせず、私物をまとめると穏やかな気持ちでオフィスを後にする。
しかし会社の入り口に降りてきたところで、慌てた様子の人事担当がスマホを片手に追いかけてきた。
「待ってください。社長が、お話があるそうです」
周囲がざわつく。
誰かが笑いながら言った。「まじかよ。こんな、あざとい手が成功するなんてさ。社長って、こういうのに弱いんだね」
「結局、夫婦だもん。情ぐらいはあるってことでしょ?」
「……」
聞こえてくる声を無視して、私は電話を受け取る。
スピーカーから湊の声が、社員全員に届くほどのボリュームで響き、私が電話に出るなり、彼は私を責め立てた。「瑠衣、なんで電話に出ないんだよ?重要な案件に影響が出たら、責任取れるのか?」
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