私との休暇に、秘書を優先する夫なんか捨ててやる第1話
この話は約2307字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。
大型連休、私は夫の谷口湊(たにぐち みなと)と旅行に行く予定だった。しかし、湊は今回も急に地方出張が入ったと言い、私との約束を直前になって反故にした。だが、彼の秘書である原田睦月(はらだ むつき)のインスタには二人がビーチで寝そべる写真が上がっていたのだ。
【うちの社長、この前の連休は一緒にお月見をして、今回の連休は一緒に海に来てくれた。次の連休は、どこについて来てもらおうかな。みんな、映える場所教えて!ちなみにうちの社長、かっこよすぎ】
コメント欄もかなり盛り上がっていた。
私は画面を見つめ、冷静にこう書き込む。【役所がいいんじゃない?写真も撮れるし、入籍もできるから】
私がそんな投稿をすると、事情を知る同僚たちが、私が湊と大喧嘩するんじゃないかと勝手に心配して連絡してきた。
すると、私が連絡する前に、先に湊から電話がかかってきた。彼は呆れた声でこう言った。
「こんな些細なことで、いちいち騒ぎ立てやがって。一緒に日光浴くらい何なんだ?出張先で息抜きしちゃいけないのかよ?
ただお前と旅行に行けなかっただけだろ?それなのに、大げさすぎ。今すぐさっきのコメントを消せ。睦月がみんなにどう思われるか……
そもそも、俺たちはもう入籍してるんだから、これから一緒に過ごせる休日なんて腐るほどある。次の休みは付き合ってやるからさ」
この言葉、今までにどれだけ聞いただろう。私は皮肉な笑みを浮かべた。
次なんてもうないのに。
連休が終われば、離婚届受理証明書が手元に届くのだから。
* * *
大型連休、私は夫の谷口湊(たにぐち みなと)と旅行に行く予定だった。しかし、湊は今回も急に地方出張が入ったと言い、私との約束を直前になって反故にした。だが、彼の秘書である原田睦月(はらだ むつき)のインスタには二人がビーチで寝そべる写真が上がっていたのだ。
【うちの社長、この前の連休は一緒にお月見をして、今回の連休は一緒に海に来てくれた。次の連休は、どこについて来てもらおうかな。みんな、映える場所教えて!ちなみにうちの社長、かっこよすぎ】
コメント欄もかなり盛り上がっていた。
私は画面を見つめ、冷静にこう書き込む。【役所がいいんじゃない?写真も撮れるし、入籍もできるから】
私がそんな投稿をすると、事情を知る同僚たちが、私が湊と大喧嘩するんじゃないかと勝手に心配して連絡してきた。
すると、私が連絡する前に、先に湊から電話がかかってきた。彼は呆れた声でこう言った。
「こんな些細なことで、いちいち騒ぎ立てやがって。一緒に日光浴くらい何なんだ?出張先で息抜きしちゃいけないのかよ?
ただお前と旅行に行けなかっただけだろ?それなのに、大げさすぎ。今すぐさっきのコメントを消せ。睦月がみんなにどう思われるか……
そもそも、俺たちはもう入籍してるんだから、これから一緒に過ごせる休日なんて腐るほどある。次の休みは付き合ってやるからさ」
この言葉、今までにどれだけ聞いただろう。私は皮肉な笑みを浮かべた。
次なんてもうないのに。
連休が終われば、離婚届受理証明書が手元に届くのだから。
電話を切り、会社に戻ると、同僚たちは私が社長である湊からどんな罰を受けるのかをひそひそと予想し合っていた。
また、睦月のために飲み物を買いに行かされる?
それとも半年分のボーナスが削られて、睦月の慰謝料にされるのか?
私が戻ってきたことに気づくと彼らは黙り込んだが、私を見る目は依然として好奇心に溢れていた。
しかし、そんなことにはもう慣れている。
どちらにせよ、湊と睦月と私の3人の間に複雑な関係があることを皆知っているのだから。
湊は私の夫だが、とにかく秘書の睦月ばかりを贔屓した。
睦月は湊のコネで入社してきて、さらには多くの権限を与えられていたが、いつも仕事で失敗ばかりしていた。
それなのに、湊は常に睦月を信じきって必死に支え続けた。それどころか、私が半年かけてやっと獲得したプロジェクトを、そのまま睦月に丸投げしたこともあり、1000万単位の利益が出るはずが、睦月のミスで利益はたったの数百万になってしまったのだった。
それでも湊は大げさに睦月を褒めちぎり、少しでも収益があったならいいことだ、睦月はこれからももっと成長すると言い切った。
一方で、私が契約書の字を少し打ち間違えると、特に影響もなかったのに、1年分のボーナスをすべて没収したのだ。
湊は私に厳しくするのは世間体を気にしてるからだと言ったが、その夜、インスタにアップされた睦月の写真には、本来なら私の手元に来るはずの賞与が写っていた。
私は憤慨しながら、湊へと詰め寄った。
しかし、彼は何が問題なのだと言わんばかりに、「睦月はまだ入社して半年なんだから、頑張ってる新入社員への励ましとして適度なボーナスを与えてやるべきだろ?それに、お前はもう何年もやってきてるんだから、これっぽっちの金でうだうだ言うなよ」と、答えた。
だから、私は冷静に反論した。「お金の問題じゃない」
口では分かったようなことを言っていた湊だったが、うっとうしそうに手を振って私を追い払う。「俺たちは夫婦だろ。会社の金は俺のもの、つまりはお前のものでもある。それに、お前は俺の妻なんだから、俺の仕事を支えるべきなんじゃないのか?」
私がそれでもまだ納得しない様子を見せていると、彼は歩み寄ってきて、今度旅行に連れていくから、と約束した。
しかし睦月が入社して以来、湊と何かを約束するたびに、睦月のせいでその予定を乱されるのだった。
映画を見に行く約束をすれば、湊はその夜に睦月と二人で残業をし、誕生日を祝ってくれるはずの日には、睦月が取引先でトラブルを起こし、その対応で湊は呼び出され……
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