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祖父の命令で夫選び、私は宿敵を選んだ第2話

この話は約1994字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

だって、三年前に英樹が私のために、町中が見上げるほどの花火を打ち上げてくれたんだから。

そのとき、彼の視線には深い愛情が宿っており、言葉はとても甘く響いていた。

「菫、お前と結婚したい。お前を世界で一番幸せな女にしたい」

私は感激のあまり涙を流した。彼と付き合い始めてからの三年間、愛し合い、幸せな日々を過ごしてきた。

まさか、彼は最初から安奈のことを忘れていなかったのだ。

ただ、私の機嫌を損ねるのが面倒だから、好きなふりをしていただけなんだ。

そして今はもう演じるのに疲れたから、いっそ記憶を失ったふりをして、堂々と「好きなのは安奈だ」と言い、嫌々ながら私と結婚し、花田家との提携だけは手に入れるつもり。

この世に、そんな都合のいい話があるはずがない。

私は英樹に反論したかった。

しかし、彼が選ばれるのが当然だという顔をしているのを見て、その言葉を飲み込んだ。

せいぜい二日間だけ調子に乗っていればいい。

光夫が真相を公表したとき、彼がどんな表情をするのか……それを考えると、むしろ楽しみでさえある。

私が黙っていると、健が私の肩を軽くつついた。

「菫、それで選んだのは英樹なのか?」

私は淡々と答えた。「二日後になれば分かるよ」

そう言って、私はくるりと背を向けて歩き出した。

背後で敦史が舌打ちを交えながら言った。

「英樹、彼女が選んだのは絶対にお前だ。お前は覚えてないだろうけど、昔お前が重い病気を患ったとき、花田菫(はなだ すみれ)は世界中を駆け回って薬を探したんだ。

北にある山の寺が霊験あらたかだって聞けば、9900段もの石段を跪きながら登り、お前の無事を願ったほどだ。お前にベタ惚れだぞ」

「そうか?」英樹は軽く笑い、気だるげに言った。「へぇ……そんなに俺のことを愛してるとはな」

胸がぎゅっと締めつけられるように痛み、私の視界が涙で滲んだ。でも、泣くのだけは必死にこらえた。

私が英樹を愛していることは、この界隈では誰もが知る公然の秘密だ。

みんなは私のことを都合のいい女だと笑ったけど、私は気にしなかった。

幼い頃に両親を亡くし、祖父母も考古学の仕事で長期遠征が多かったため、私は誰からもいじめられる存在だった。

そんな中、唯一守ってくれたのは英樹だった。

だから私は小さい頃からずっと彼のことが好きで、彼に告白されたときはとても嬉しくて涙が溢れた。これからは彼に尽くして、幸せにしたいと思った。

でも、彼が私に向けた優しさにはすべて何らかの目的があった。だからこそ、彼には私の真心を受け取る資格がない。

「菫、ちょっと待ってくれ」

背後から呼び止める声がして振り返ると、英樹が立っている。

片手をポケットに入れ、怠そうな歩き方で私の正面に近づいてきた。

「先、お前が俺を選んだことは分かってる。俺はお前と結婚する。

だけど、俺の心は安奈にしか向かないということを理解してほしい。俺たち二人のことに、余計な口出しはしないでくれ」

私はじっと彼を見つめた。「あなたは記憶を失ったんでしょう?どうして私があなたを選ぶと思ってるの?」

英樹は眉をひそめた。「みんな言ってるんだ。お前は俺を愛してるって。俺以外に誰を選ぶんだ?」

私は苦笑した。

――そうか、彼も知っているのか。私が彼を好きだと。

それなのに、どうしてそこまで私の真心を踏みにじれるのだろう。

「安心して。私はもうあなたに執着しないし、あなたたちの邪魔をするつもりもない」

それに、私が涼太を選んだと知ったら、きっと英樹は喜ぶだろう。

あまりにもあっさりと承諾した私に、英樹は一瞬呆然とした。

私はそのまま入口の方へ歩いて行った。

彼が反射的に私を引き止めようと手を伸ばしたその瞬間、突然一台の自転車が飛び出してきて、私に突っ込んできた。

車輪が私の脚に思い切り乗り上げ、私は地面に尻もちをついた。柔らかい手のひらが地面に擦れ、鋭い痛みが突然全身に走った。

安奈は顔色を変え、自転車から飛び降りて泣きながら駆け寄ってきた。

「菫、ごめん!わざとじゃないの、怒らないで……!」

私が口を開くよりも先に、頭の中で祖母・歩美の怒鳴り声が響き渡った。

「この子、本当に悪いのよ!前世でもそうだった!とぼけたり、逆ギレしたりして、うちの菫をいじめ、英樹を手のひらで転がして……この二人、どっちもろくでもないわ!」

安奈が涙をぽろぽろとこぼしながら震えている姿を見ると、やはり英樹は心の底から心配そうに彼女に駆け寄った。

「もういい、安奈。大したことじゃない。俺がいる限り、誰もお前を責めたりしない」

そう言って彼は安奈を支え、私を見る目には警告めいた光が宿っている。「ただぶつかっただけだ。まさか大げさに騒ぐつもりはないだろうな?」

私は腕の広い範囲が擦れて血が滲むのを感じながら、痛みに耐えて立ち上がった。

安奈は涙ぐみながら、私を見つめている。

「菫、本当にごめん。私が悪いの……だから、自分でビンタして謝るね……」

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