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祖父の命令で夫選び、私は宿敵を選んだ第1話

この話は約2630字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

私は幼なじみの石持英樹(いしもち ひでき)と一緒に交通事故に遭い、次に目を覚ましたとき――

長年愛し合ってきた英樹が記憶を失ってしまった。

そして私はかすり傷ひとつないのに、体の中には何年も前に亡くなった祖母・花田歩美(はなだ あゆみ)の魂が入り込んだ。

「このガキ……また記憶を失ったって言い訳で、うちの可愛い菫を騙そうとして!私がこの世にいれば、あいつの足の骨の一本や二本、叩き折ってやるわ!」

私はぽかんと目を見開いた。

歩美の声は、なおも頭の中で怒鳴り続けている。

「前世で、うちの菫は英樹にさんざん苦しめられたんよ。

何年もろくでもない日々を過ごし、心臓病で死にかけてたのに、あいつは小雲安奈(おぐも あんな)と誕生日祝いでキャッキャして……腹立つわ!

菫よ。今回、おじいちゃんが縁談を選んでくれるとき、英樹だけは絶対にダメよ。川連涼太(かわつれ りょうた)を選びなさい。あの子は信頼できるわ!」

次の瞬間、本当に祖父の花田光夫(はなだ みつお)と数人の年長者たちが病室に入ってきて、四大名家の跡継ぎの写真を私の前にずらりと並べ、「夫にする相手を一人選べ」と言った。

私は迷うことなく、宿敵である涼太を選んだ。

――私はおばあちゃんが大好きだから。

彼女が「英樹はあなたのことを愛してないわ」と言うなら、私はもう英樹なんて必要ない。

* * *

私は幼なじみの石持英樹(いしもち ひでき)と一緒に交通事故に遭い、次に目を覚ましたとき――

長年愛し合ってきた英樹が記憶を失ってしまった。

そして私はかすり傷ひとつないのに、体の中には何年も前に亡くなった祖母・花田歩美(はなだ あゆみ)の魂が入り込んだ。

「このガキ……また記憶を失ったって言い訳で、うちの可愛い菫を騙そうとして!私がこの世にいれば、あいつの足の骨の一本や二本、叩き折ってやるわ!」

私はぽかんと目を見開いた。

歩美の声は、なおも頭の中で怒鳴り続けている。

「前世で、うちの菫は英樹にさんざん苦しめられたんよ。

何年もろくでもない日々を過ごし、心臓病で死にかけてたのに、あいつは小雲安奈(おぐも あんな)と誕生日祝いでキャッキャして……腹立つわ!

菫よ。今回、おじいちゃんが縁談を選んでくれるとき、英樹だけは絶対にダメよ。川連涼太(かわつれ りょうた)を選びなさい。あの子は信頼できるわ!」

次の瞬間、本当に祖父の花田光夫(はなだ みつお)と数人の年長者たちが病室に入ってきて、四大名家の跡継ぎの写真を私の前にずらりと並べ、「夫にする相手を一人選べ」と言った。

私は迷うことなく、宿敵である涼太を選んだ。

――私はおばあちゃんが大好きだから。

彼女が「英樹はあなたのことを愛してないわ」と言うなら、私はもう英樹なんて必要ない。

光夫はためらいながら私を見つめた。

「菫、お前とあの悪ガキは一番仲が悪かったんじゃないのか?本当にあいつを夫にするつもりか?よく考えなさい。一度婚約を結んだら、もう後戻りはできないんだぞ」

光夫は考古学界の大御所だ。

彼は以前から、四大名家の跡継ぎのうち誰が私と結婚するかによって、花田家との提携先を決めると宣言している。

英樹の母もすっかり青ざめ、慌てて私に諭した。

「菫、英樹は記憶を失ってあなたのことを忘れてしまったけれど……あなたが一番彼のことを好きだったじゃないの。少し待ってあげたら?結婚でもしたら、思い出すかもしれないわ」

その言葉に、頭の中の歩美が大声で舌打ちをした。

「何を言ってるの!前世で安奈という子が、うちの可愛い菫のアクセサリーを壊してしまったのに、菫は何も言わなかったよ。それなのに英樹は菫を家から追い出したんだわ。

可哀想に、菫はパジャマのまま雨の中で長い間濡れてて、危うく凍え死にそうになった。

その時に傘を差して駆けつけてくれたのが涼太よ。菫をホテルまで連れて行って休ませてくれた。あの子、口は悪いけど、本当は優しいんだよ」

その言葉を聞いた瞬間、私の胸はぎゅっと締めつけられた。

歩美がなぜいつも前世の話ばかりするのか、よく分からない。

証拠もない話ばかりなのに、なぜかそれらがまるで私自身が経験した記憶のように胸を締めつけ、息が詰まりそうになる。

重い綿を何層も詰め込まれたかのように、心が沈んでいった。

まして、安奈は確かに英樹の初恋の相手だった。二人の間には深い感情があった。

私なんて、ただの後から入ってきた人にすぎない。

「おじいちゃん、もう決めたよ。私は涼太がいい」

光夫は写真を整理しながら、私の頭を優しく撫でた。

「分かった。お前の選択を尊重しよう。二日後に涼太との婚約を正式に公表する」

歩美はほっとして、長い息を吐いた。「そうそう、今度こそ前世の不運に振り回されずに済むよ。うちの菫は、今度こそ幸せになれるよ」

光夫と数人の年長者たちは、そのまま話し合いに入った。

私は着替えて、気分転換に病院の外を散歩しようと思った。

ところが、病室の外には、背が高く整った顔立ちの男が三人、ずらりと並んで立っている。

彼らはみんな私の幼なじみであり、今回の夫選びの候補でもある。

英樹もいるが――ただ一人、涼太だけが来ていない。

天野健(あまの たける)がにこにこ笑いながら歩み寄り、興味津々の様子で尋ねた。

「菫、聞いたぞ。光夫さんが君に、僕たち四人の中から一人を婚約者として選ばせたって。で、誰にしたんだ?」

阪中敦史(さかなか あつし)が茶化すように口を挟んだ。

「聞くまでもないだろう。もちろん英樹に決まってる。周りの誰もが知ってるぞ、菫が英樹にベタ惚れだって。宝物みたいに扱ってるじゃないか」

英樹は淡々とした表情で私に視線を向け、言った。「この三年間のことは覚えてないぞ。安奈が俺の彼女だったことだけが記憶に残っている。

けれど、記憶にないこの三年間に、俺たちが付き合ってたことは分かってる。今はお前のことを好きじゃないが……父さんの命令には逆らえない。婚約が決まった以上、俺はお前と結婚する」

その瞬間、頭の中の歩美が冷笑した。

「前世ではね、英樹は記憶を失ったふりをして、安奈と堂々とイチャつきながら、うちの菫を好き放題に利用し、花田家の財産も奪い、最後には菫を末期のうつ病に追い込み、殺したんだよ。外道が……さっさと失せろ!」

私は英樹の冷たい表情を見つめながら思った。

――もしおばあちゃんの声がなければ、私はきっと彼の嘘を信じてしまうだろう。

私は本当に英樹のことが好きだ。

そして、彼もまた私のことが好きだと、ずっと信じていた。

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