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祖父の命令で夫選び、私は宿敵を選んだ第3話

この話は約1971字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。

そう言うと、安奈は自分の頬を叩こうと手を上げた。

英樹は慌ててその手をつかみ、逆に私に怒鳴りつけた。

「菫、安奈はわざとじゃないんだ。いつもみたいにお嬢様ぶって人をいじめるのはやめろよ!」

歩美はさらに激怒した。「頭おかしいんじゃないの?うちの菫は一言も言ってないのに、あの子が勝手に泣いてるだけでしょう!なんで菫がいじめることになるの?菫、やり返して!そいつらに平手打ちでもして!」

その言葉を聞いた瞬間、私はためらうことなく手を振り上げ、安奈の頬を思い切り叩いた。

そして英樹をまっすぐ見つめ、きっぱりと言った。

「見たの?これが本当のお嬢様ぶって人をいじめるっていうことよ」

安奈は呆然と立ち尽くした。

英樹も驚いた。その目は冷たく細められた。

「花田菫、お前はやりすぎだろ……」

私は再び手を振り上げ、今度は彼の頬を同じように思い切り叩いた。

「これが、やりすぎだよ」

知り合ってからずっと英樹に従順だった私が、こんなふうに逆らうのは初めてだ。

私に叩かれたことで、彼は完全に面食らっている。

英樹は信じられないような表情で私を睨みつけ、歯を食いしばった。

「いいさ……覚えておけ。俺に手を出したことを、後悔させてやる。

安奈、傷を見に行くぞ」

歩美は容赦なく罵った。

「ぶつかられて傷ついている菫はほっといて、別の女の子だけ心配してる。ああいう頭のおかしい男と一緒にいたら、後悔するだけよ!ああ、可哀想な菫。さっき怪我したんでしょう?きっと痛いでしょう……」

私は赤く滲んだ傷口を見下ろした。

胸の奥から込み上げる痛みと悔しさが、もう抑えきれない。

学生時代、私が少しでも怪我をすると、英樹は顔色を変えて慌てて駆けつけ、まるで私の代わりにすべての痛みを背負おうとするかのように、守ってくれた。

……たとえ彼が私を愛していなかったとしても、あの頃の情だけは本物だと信じていた。

それなのに今、私は目の前で傷ついているのに、彼はそれを無視し、逆に私を責める。安奈を困らせたくない一心で、まるで私が悪いかのように。

歩美の言葉は、次第に現実味を帯びていった。

英樹と結婚しても、同じ過ちを繰り返すだけだ。結局、前世と同じ結末を辿ることになる。

私は涙を拭い、看護師に怪我の手当てをお願いした。

周囲の看護師たちがざわつき、ある方向を見つめているので、私もつられて目を向けた。

壁一枚隔てた向こうで、安奈が英樹に抱きついている。二人の視線は親密そのものだ。

安奈は甘くとろけるような声で言った。

「英樹、あなたは私と堂々と付き合うために、記憶を失ったふりをしたなんて、菫が知ったら怒って暴れちゃうかもね」

英樹は安奈の頭を撫でながら言った。

「知ったところでどうってことないさ。菫が俺を好きなのは誰もが知ってる。たとえ俺が記憶を失っても、どうせ泣きついてくるだろう。結婚してってな」

歩美は鼻で笑った。

「夢みたいなこと言わないでよ!うちの菫は今度こそあなたを選ばないし、つきまとったりもしないわ!二日後に婚約の真相が明らかになったら、あなたがどんな顔をするのか楽しみだわ!」

私は乾いた笑い声を漏らしたが、顔には一片の笑みも浮かんでいない。

もう耐えられなくなり、包帯を巻いた手を抱えながら歩き出した。

その瞬間、突然人々の叫び声が響き渡った。

「あの人たち、刃物を持ってる!みんな、逃げて!」

その一言が投げかけられた瞬間、病院の廊下は騒然となった。

私も反射的に人波の流れに沿って走り出したが、医療トラブルで暴れる患者の一人に腕をつかまれ、振り返る間もなくナイフが振り下ろされてきた。

護身術は少し習ったことはあるが、怪我をしているため体力が持たない。

英樹がこちらの混乱に気づいたのを見て、私は何も考えずに叫んだ。

「英樹、助けて!」

彼は反射的に一歩踏み出したが、安奈が彼の手首をぎゅっと掴んで離さない。

「英樹、怖い……行かないで。お願い」

その瞬間、英樹の足が止まった。わずか数秒のためらいだ。

でも、その一瞬でナイフが私の腕に深く食い込んだ。もともと傷ついていた腕に、さらに新たな傷が刻まれた。

「あっ……!」私は痛みで息を呑んだ。

歩美の声が頭の中で響き、慌てた気持ちで満ちている。

「この医療トラブル、あのときもすごかったけど……なんで今日はうちの菫が巻き込まれたの!英樹、この悪ガキ!記憶を失ったのは演技だけでしょう。本当は菫のことを忘れてないし、菫が命懸けで彼のために尽くしてきたし、それでも助けないなんて、ひどすぎる……」

私は痛みで体力が尽き、必死に歯を食いしばりながら、英樹に向かって叫んだ。

「英樹!お願い、助けて!本当に死んでしまう……」

その言葉が終わるか終わらないかのうちに、安奈が悲鳴を上げた。

暴れる患者の一人が、安奈と英樹に襲いかかった。

その瞬間、英樹は反射的に安奈を庇い、彼女を抱きかかえて逃げ出した。

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