消えていったあの夢第2話
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署名した初日。
清子は病院へ向かう途中、雪菜のSNSの投稿を目にした。
写真は一枚の賃貸アパートの室内写真だった。
淡い緑色のソファの上で、雪菜は素足を律の膝に乗せ、カメラに向かって悪びれずにピースしていた。
キャプション:【あなたの過去にも関わりたい】
白野家が破産した年、清子は大学3年生だった。
父は現実を受け入れられず、飛び降り自殺した。
母は取り立て屋に階段から突き落とされ、植物状態となった。
一夜にして、清子は世界から見捨てられ、わずかな荷物を持って街をさまよう羽目になった。
病院の廊下で三晩目を迎えたあの夜のことだ。律は家族と決別すると、持ち物の一切を売り払い、三十六万円をかき集めると、彼女の行方を追った。
彼は言った。「清子、俺もお前と同じ、ホームレスになった。せめてお前だけは、俺の道連れになってくれないか?」
清子は呆然とし、律の胸に顔をうずめて声を上げて泣いた。
そして彼のことを、世界一の大バカだと罵った。
律は慌てて彼女の涙を拭いながら、笑って言った。「うん、律は清子の前では、いつだってバカでいいんだ」
二人は十六万円で六畳くらいの小さな部屋を半年間借りた。さらに六万円をかけて、やっとその部屋を「家」と呼べる場所にした。
清子は不器用ながらも包丁を握り、律の大好物であるオムライスを作った。
律は、怒っているのかそうではないのか、清子をぎゅっと抱きしめると、「寒いだろう、靴下を履きなよ」と、裸足の足を温めながら優しく言った。そんな彼のプロポーズも、この同じ部屋での出来事だった。
江崎家の跡取りとしての身分を取り戻した律は、清子の手を取り、部屋の中をぐるぐると回りながら誓った。「この部屋は永遠に清子だけのものにする」
それなのに今では、雪菜が「参加したい」と一言言っただけで、彼はすべてを忘れてしまった。
涙が頬を伝い落ちるかと思うと、さっと手で拭われた。
清子は深く息を吸い込み、雪菜の投稿に「いいね」とコメントを残した。
【私がいらないもの、あなたにはちょうどいい】
もう一度更新したら、投稿が消えていた。
その直後、律から怒鳴り声のような電話がかかってきた。
「清子、昼間から何をしてるんだ?雪菜を泣かすんだぞ。
今どこにいるか知らないけど、すぐに来て雪菜に謝れ。じゃなきゃ、お前の母親の治療費は打ち切るからな」
その言葉に、清子は思わず吹き出してしまった。
七年前、彼女が江崎家の援助を頑なに拒み、自分で治療費を払おうとした時、律は彼女の手を握りしめ、顔を真っ赤にして怒鳴った。
「清子、よく聞け!あの人は俺の義理の母親だ!お前だけの母親じゃない!」
なのに今では、雪菜が泣いたというただそれだけの理由で、彼は清子の母親の命の綱すら断ち切ろうとしている。
携帯を持つ手がかすかに震えながら、清子は短く答えた。
「わかった」
「……なんだって?」
律は眉をひそめ、聞き間違いかと思った。
清子は深く息を吸い、落ち着いた口調で言った。
「母の治療費は、自分で払うわ」
江崎家に嫁いだこの七年間、清子はずっと仕事を続けていた。今では、国内でそこそこ名の知れたデザイナーになっている。
たとえ江崎家の助けがなくても、彼女には治療費を支払う余裕がある。
電話の向こうで何度か荒い息が聞こえ、律が嘲るように笑った。
「いいだろう、たいしたもんだな!」
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