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流れ星よ、この願いを君に届けて第2話

この話は約2026字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

「健のところへ行って、男と同室は嫌だって言え。他の女子と代わるか、一人部屋にしてもらえ。差額くらい、自分で出せば済む話だろ」

涼真は声をぐっと落とし、正面だけを見たまま、こちらに目線ひとつ寄越さなかった。

私はスマホで両親に無事を知らせるメッセージを打ちながら、顔も上げずに訊き返した。

「どうして?」

「どうしてって、お前はフリーじゃないだろ。男と同じ部屋に泊まるなんてあり得ない」

「じゃあ、あなたは?あなたはフリーなの?」

フロントで手続きをしていた涼真の手が止まり、その声に得体の知れない苛立ちが混じった。

「これは最初から決まっていたゲームのルールだ。俺は、くじの結果を尊重してるだけだ」

私の声は、自分でも驚くほど軽かった。

「うん、私も。くじの結果に従うだけだよ」

涼真が眉間に皺を寄せ、何か言い返すより先に、私はフロントからルームキーをひったくるように受け取って背を向けた。

数歩歩いたところで、健の弾んだ声がロビーに響いた。

「全員、三十分後にシアタールーム集合な!貸し切ってあるから、みんなで一年生のときのスポーツ大会の映像を見るぞ。ちょっと昔話に浸ろうぜ!」

私は足を止めず、ショルダーバッグのストラップを握り直しただけだった。

一年生のときのスポーツ大会の記録映像。それは、涼真が莉桜に派手に猛アプローチしていた頃の記録でもある。

……

シアタールームのテーブルには、スナック菓子やフルーツが所狭しと並んでいた。

涼真は腰を下ろすなり、イチゴの皿をすっと莉桜の前へ滑らせた。

隣の女子が、くすくす笑いながら冷やかす。

「涼真ってば、ほんと莉桜に甘いよね。イチゴ好きって知ってるから、独り占めさせてるじゃん」

他のみんなもすぐに便乗して冷やかし、莉桜は頬を染めながら皿を押し戻した。

「みんなで食べよ。涼真がいっぱい買ってきてくれたんだし。足りなかったら、また涼真に部屋まで取りに行かせるから」

けれど涼真はまた皿を莉桜の方へ引き寄せ、柔らかく笑った。

「うん、俺が取りに行くよ。先に食べてて」

涼真が立ち上がって部屋を出ていくと、シアタールームはどっと沸いた。

「莉桜の一言で即パシリとか、完全な尻に敷かれっぷりじゃん!」

莉桜はイチゴをつまみながら小さく笑い、ふと私の名前を呼んだ。

「紬、あとで涼真が持ってきたら、紬もいっぱい食べてね。イチゴ好きだったよね?」

ちょうどそのときドアが開き、涼真がイチゴの皿を二つ抱えて戻ってくると、その両方を莉桜の前に並べた。

涼真だって、知っているはずなのに。

この三年間、私が数えきれないほどイチゴを買ってきたことを。そのたびに、彼が眉をひそめてこう小言を言うのを何度も聞いてきた。

「ちょっと控えろって。こんな甘いのばっか食べてたら、またニキビができても知らないぞ」

私は何気ないふりでみかんに手を伸ばした。ちょうどそのとき、健が私を呼んだ。

「紬、空は?」

みんなの視線が一斉に集まる中、私はみかんの皮をむき続け、顔を上げずに答えた。

「ちょっと急ぎの用事ができたみたい。そっちを先に片付けに行ったよ」

健は「そっか」と肩を落とした。

「じゃあお前らのペアは見込み薄か。でもまあいい、もう片方のペアは確実にくっつくだろうしな!」

涼真の視線が一瞬だけ私で止まり、それからすぐに逸れた。

「ほら、映像が始まるぞ」

彼がため息まじりにそう声をかけると、慣れた手つきで莉桜にイチゴを差し出した。

記録映像はたっぷり二時間あった。

みんな食い入るように画面を見つめ、二人が映るたびに笑い混じりに冷やかした。

「ほらまた涼真が莉桜の汗拭いてる。たかが五十メートル走なのに、カメラマンより張りついてんじゃん」

「見ろよ、水に携帯扇風機に日焼け止めまでフル装備!」

「莉桜、あのとき涼真、学校中の話題になるくらい猛アプローチしてたのに、よく我慢して断り続けたよね?おかげでこいつ、四年間ずっとフリーで、卒業間近の今までずっと未練タラタラじゃん」

莉桜は涼真を見つめ、目にうっすら涙をにじませた。

「学生のうちの恋愛って、なんだか不安定な気がしてて。卒業するまでは様子を見たかったの。こんなに長く待ってくれるなんて、私も思ってなかった」

男子のひとりが茶化すように声を上げた。

「涼真、この四年間、待たされてしんどかったろ?」

涼真は莉桜と目を合わせ、小さく頷いた。

「まあな」

そのたった一言に、四年間積み重ねた想いと我慢が詰まっているように、みんなには聞こえたらしい。

感嘆の声があちこちから上がる中、心の中で冷たく笑っていたのは、私だけだった。

何が「しんどい」だ。

涼真は半年間、莉桜に派手にアタックしても実を結ばず、すぐにテニスに夢中になっていた。

私は大学のテニスサークルのレギュラーで、彼に頼まれて半年間コーチをした。そして二年生の春、彼は私に告白してきたのだ。

涼真にとっての「まあな」なんて、その程度のものだ。

私たちの交際は周りには秘密だったけれど、それなりに楽しくて、ちゃんと幸せだったのに。

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