
泥濘の愛
| 言語 | 日本語 |
|---|---|
| 試し読み | 第1〜3話(当サイト) |
| 掲載日 | |
| 読み方 | 横書き・縦書きを切り替え可 |
『泥濘の愛』は日本語の小説です。当サイトで第1〜3話を試し読みできます。
冒頭試し読み第1話より・約527字
父の死をきっかけに、私は指揮官である夫と離婚し、この山あいの村に生涯を捧げることを決めた。
初日、私は夫を騙して離婚申請書に署名させた。
五日目、勤めていた職場に退職願を差し出した。
七日目、心を込めて料理を作り、友人たちとの別れの宴を開いた。
蒼井遼真(あおい りょうま)は眉をひそめ、「なぜ彼女の好きではない料理をわざわざ作るんだ」と私を責めた。
私は立ち上がり、彼の幼なじみに杯を捧げた。
――これから先、遼真と私は一切関わりのない人間になる。
半月後、私は山村で任務から戻った遼真と再び出会った。
だがそのとき、夕暮れの風にあおられた彼の瞳は、赤く濡れていた。
父が亡くなって三日目になっても、遼真は帰ってこなかった。
「村長さん、決めました。父の遺志を継いで、この村に残り、子どもたちに勉強を教えます」
荷物をまとめながら、私は毅然と告げた。
男は目を丸くし、諭すように言った。
「馬鹿な子だ……せっかく黎明機構に随伴できる身分を得たのに、どうしてこんな貧しい村に戻って苦労するんだ」
私は首を振り、手首の古びた腕時計に目を落とした。それは父が遺してくれた唯一の形見だった。
「私は苦労なんて怖くありません。七日以内に離婚を申請します」
夜七時。私はようやく拠点の家へ戻った。
※作品紹介ではなく、第1話の書き出しをそのまま掲載しています。第1話の続きを読む
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