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月だけが見ていた

言語日本語
試し読み第1〜3話(当サイト)
掲載日
読み方横書き・縦書きを切り替え可

『月だけが見ていた』は日本語の小説です。当サイトで第1〜3話を試し読みできます。

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冒頭試し読み第1話より・約543字

工藤晴香(くどう はるか)はホテルのスイートルームの前に立っていた。中から漏れてくる息づかいが、彼女の耳に容赦なく届く。

「美優。こっちが大変になったときはさっさと消えたくせに、今さらどの面さげて戻ってきたんだ?」そして、中から聞こえる松浦誠(まつうら まこと)の声には、刺々しい怒りがこもっていた。

「お願い、父を助けて……そのためなら、私、何でもするから」それに答える、池田美優(いけだ みゆ)の声は、涙で震えていた。

衣類が床に落ちる音に混じって、誠の笑い声が聞こえてくる。「じゃあ、ここで俺と寝ろって言ったらお前は寝るのか?」

その場を動けずにいた晴香だったが、ベッドがきしむ音が聞こえてくると、ふらつく足取りでホテルを後にしたのだった。

その日の夜、探偵から美優の父親・池田健吾(いけだ けんご)のカルテが送られてきた。

病名は、悪性リンパ腫。骨髄移植が必要で、完治率は80%とのことらしい。

その時ドアが開いた。知らない香水の香りをまとわせた誠が気まずそうな顔で入ってくる。「晴香。恵ちゃんの骨髄のことなんだけど、待ってもらわなくちゃいけなくなったんだ。ドナーの気が急に変わっちゃって……」

晴香は、カルテを彼の顔に叩きつけた。「私の妹の命と引き換えに、あの女と寝たってわけ?本当、最低!」

※作品紹介ではなく、第1話の書き出しをそのまま掲載しています。第1話の続きを読む

目次試し読み3話

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