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慰謝料が十億?私は一万円しか貰ってないけど第2話

この話は約1617字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

検査結果が出ると、医師は私だけを診察室へ呼んだ。

「お子さんは血液を固める力がかなり弱く、血小板の数値にも異常があります。入院して、さらに詳しい検査を受ける必要があります。退院までかかる費用はまだ分かりませんが、ひとまず400万を用意したほうがいいでしょう。今後、手術が必要になれば、費用はさらにかかるかと」

私は検査結果の用紙を握りしめたまま、しばらく口を開けなかった。

「……支払い期限はいつですか?」

「3日後です」

私は手元にあった貯金をすべて引き出し、さらに医療費の支援制度にも申請した。

昼間は食堂で働き、夜は付き添いの仕事をする。1日の睡眠時間は、たったの3時間ほどだった。

翌日の明け方。

年寄りの患者の介護をしていた時、廊下の端に裕翔が立っているのが見えた。

眉間に皺を寄せた裕翔は、私の腕をつかむと、そのまま廊下へ引っ張り出した。

「……俺に見せつけるために、こんなことをしてるのか?」

「……離して。まだ仕事中なの」

「あずさ、実の娘が危ないのに、俺が何もしないわけがないだろう?どうして俺に頼ろうとしない?まさか、同情を引いて、俺のほうから必要以上の金額を提示させようとしているんじゃないだろうな?」

そう言って、裕翔は1枚の書類を差し出した。

「治療費は俺が出す。ただし、お前には金を渡さない。由梨がすべての支出を確認する。必要な検査や治療にかかる費用は俺が負担する。必要のない薬は、自分で払え。それから、お前と奈々美の食費も、一日合わせて2千円までだ。それを超えた分は出さないし、余った分を勝手に引き出すことも認めない」

私は書類をめくり、最後のページに目を止めた。

管理責任者のところに、「遠藤由梨」という名前が書かれている。

私はその書類を裕翔に返した。

「遠藤さんは医師免許すら持ってないのに、どうして娘に何の薬を使うかまで、決める権利があるの?」

裕翔は苛立ったように眉をひそめた。「由梨はお金を管理するだけだ。医師が必要だと言ったものなら、当然認める」

その言葉が終わるか終わらないかのうちに、エレベーターの扉が開いた。

姿を現した由梨は、見るからに高級そうなドレスを身にまとっていた。そのドレスを見せつけるように、彼女は私を一瞥してから、裕翔を見た。

「社長、今夜のパーティー用のジュエリーが届きました。ドレスとアクセサリーを合わせて、合計2520万です」

裕翔はちらりと由梨を見ただけだった。

「気に入ったなら買いなさい。俺に報告しなくていい」

そのとき、いつの間に目を覚ましたのか、奈々美が裸足のまま、病室の入口に立っていた。

奈々美は由梨のドレスを見つめ、それから私の手にある書類へ目を移す。

「ママ……遠藤おばさんは好きなお洋服を買えるのに、どうして奈々美のお薬は、おばさんが許さないと、買っちゃいけないの?」

裕翔の表情が、わずかに強張った。

私は奈々美の目線に合わせてしゃがみ込み、静かに言った。「奈々美、誰かにお金を出してもらうんじゃなくて、自分たちのお金を使えば、ほしいものを好きなだけ買えるよ」

その瞬間、裕翔の顔が強張った。

「お前は、子どもにそんなことを教えているのか?」

由梨が歩み寄ってくる。

「あずささん、これ以上意地を張るのはやめましょう。あなたのためにも、娘さんのためにも、この書類にサインしたほうがいいです」

「しない」私は奈々美の手を取った。「病室に戻ろう」

身体の向きを変えた、そのときだった。

背後で、由梨の身体がふらりと傾いた。

「きゃっ!」

裕翔が反射的に由梨の身体を支える。その勢いのまま、もう片方の手が私の肩を強く突き飛ばした。

身体が後ろへよろめき、背中が瓶の置かれたカートに叩きつけられた。

――ガシャンッ!

いくつかの瓶が床に落ち、ガラスが砕け散った。

鋭い破片が掌を切り裂き、赤い血が指先からぽたぽたと落ちていく。

「ママ!」

奈々美の顔が恐怖で真っ青になった。駆け寄ってくると、私の前に立ちはだかる。

「ママをいじめないで!」

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