愛は飛蛾のように、灰となる余生第2話
この話は約1235字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。
テントの入り口の布がめくられ、倫が入ってきた。
浅燈は咄嗟にうつむき、泣き腫らした目を見られたくなくて顔を隠した。
「スマホ忘れた」
倫は自分のスマホを手に取り、目を走らせてふと動きを止めた。
「ストラップは?」
「見た目がダサかったから、捨てたの」
彼女はかすれた声でそう答えた。
それを聞いて、倫は軽く笑った。
「ああ、そうか。まあそうだよな。あんなもん、正直ダサすぎて、仲間の前で出すのも恥ずかしかったし」
スマホをポケットにしまうと、彼は浅燈に身を寄せてきた。
「浅燈......」
温かい息が彼女の首筋にかかる。
彼の手が服の中に滑り込み、腰の一番敏感な場所を器用に撫で始めた。
浅燈の体は瞬間的に強張り、反射的に身をすくめて彼の手を避けようとした。
「さっき終わったばかりでしょ?疲れたし、もうしたくない」
だが倫はさらに力強く彼女を抱き寄せ、鼻先で髪をくすぐるように触れてきた。
「それだけじゃ足りない。
君とずっと一緒にくっついてたいんだよ。いじめた時の浅燈の顔が、ほんとに可愛くてさ」
浅燈の頬に羞恥と怒りが混じった赤みが差す。
「昨夜寒くて......風邪引いたから、体調悪いの」
彼女は彼の手を振り払って距離を取った。
「もうキャンプを終えて、帰って休みたい」
倫は一瞬、戸惑ったように動きを止めた。
「風邪?でも......みんなとは明日までって約束してるんだよ?今夜は焚き火パーティーもあるし」
彼は再び彼女の腰に腕を回し、耳たぶに軽く噛みついた。
「な?ちょっとだけ我慢してよ。明日の朝にはちゃんと帰って、病院も連れてくから」
そう言いながら、彼は彼女の手を握り、もう一方の手は再び彼女の襟元へと滑っていく。
「こんなに手が冷たいなんて、ちょうどいいじゃん。俺の火照りを冷ましてくれよ。
ちょっとした風邪なんて、運動して汗かけば治るってさ」
浅燈の心は氷のように冷え切っていた。
彼を突き飛ばそうとしたその時、テントの外から声が響いた。
「倫さん!倫さん!未怜先輩が来たぞ!」
倫の動きがピタリと止まり、目が一瞬で輝いた。
慌てて服を整えると、すぐさま踵を返してテントを出て行った。
「先輩?どうしてここに?」
外からは倫の弾んだ声が聞こえてくる。
「友達と通りかかっただけなんだけど、車が壊れちゃって......人の気配がしたから来てみたら、まさかあなたたちだったのね」
澄んだ冷ややかな女性の声。
周藤未怜(しゅうどう みれい)だ。
「先輩、その車は俺に任せて。学校まで送っていくよ」
「いいの?キャンプ中なんでしょ?」
「もともと明日帰る予定だったし、ちょうどいいんだ。今すぐ片付けるから、少しだけ待ってくれ」
浅燈はテントの中でじっと立ち尽くしていた。
外の会話が耳に刺さる。
顔色は真っ白で、目には涙が止めどなく浮かぶ。
さっきまでは、「風邪引いたから帰りたい」と言っても「我慢しろ」と言われた。
でも今、未怜の車が故障したと聞いた途端、彼は迷いなくキャンプを終わらせようとしている。
愛してるかどうかで、こんなにも違うんだ。
縦書き表示中:本文は右から左へスクロールします(← → キーでも移動できます)