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愛は飛蛾のように、灰となる余生第3話

この話は約1743字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。

みんなが慌ただしく荷物を片付け始めた。

未怜の視線が浅燈に向けられる。

「唐鎌さんもいたの?」

浅燈は無表情にうなずき、「こんにちは、先輩」と挨拶した。

未怜は倫を見て、口元に笑みを浮かべる。

「まさか私が1年いない間に、倫が彼女を作ってたなんてね」

倫は一瞬驚き、慌てて弁解した。

「それは違うんだ、先輩。浅燈はうちの妹みたいな存在だ」

少し間をおいて、まだ誤解を恐れているようにさらに言い添える。

「ほんとに、実の妹みたいなもんだから」

実の妹?

浅燈の心に鋭い痛みが走る。

そんな「妹」と毎晩肌を重ね、甘い言葉を囁く人がどこにいる?

未怜は納得したようにうなずき、笑顔が少し深くなる。

「そうだったのね」

荷物の片付けが終わると、浅燈は大きなバッグを必死に引きずりながら車へと向かう。

途中で汗をぬぐおうと立ち止まり、顔を上げたとき、倫が進んで未怜の小さなリュックを受け取っているのが見えた。

「先輩、俺が持つよ。男がこんなにいるのに、女の子に荷物を持たせるなんて」

未怜は浅燈に一瞥をくれて、微笑んでバッグを差し出した。

「ありがとう、助かるわ」

倫がバッグを受け取ったとき、彼女の指先にふれた。

浅燈の目には、彼の体がかすかに硬直し、その直後に耳の先が赤く染まったのが映る。

まるで恋を知ったばかりの青年のように。

彼も、恥じらうことがあるんだ。

でもその純情は、決して自分には向けられない。

浅燈は顔を伏せ、足元のバッグをまた引きずって車のそばへ。

「浅燈はすごいな。こんな大きなバッグ、俺でも持つの大変なのに、1人で運んできたのか。誰も手伝ってやらなかったのかよ」

倫の友人の1人が、彼女のバッグを持ち上げてトランクに積んでくれた。

浅燈は伏し目がちに、目に浮かんだ苦味を隠す。

荷物をすべて積み終えると、倫が急ぎ足でやってきて助手席のドアを開けた。

「先輩、どうぞ」

未怜は遠慮せず、席に座った。

ちょうど乗ろうとしていた浅燈は、手を引っ込めて黙って後部座席のドアを開ける。

車に乗るとすぐ、倫がどこからか取り出した保温カップを未怜に差し出した。

「さっき触ったとき、手が冷たかったね。どうぞ、温かいお茶だ」

浅燈は胸が詰まり、顔をそむけて窓を開け、外を見た。

自分が「体調が悪い」と訴えても、彼は何の気遣いもなく身体を求めてきた。

それなのに、未怜の指先が少し冷たいだけで、彼はすぐに温かい飲み物を用意していた。

本気で誰かを想うって、やっぱり違うんだ。

未怜はカップを受け取り、ほほえむ。

「倫、相変わらず気が利くのね」

彼女の視線はルームミラーにぶら下がったピンクの猫のマスコットに留まる。

「これ、2年前に私が落としていったやつじゃない?

あのときちょっとダサいから捨てようかと思ったのに、まさか取っておいてくれたなんて」

彼女は倫を見つめる。

「もし気に入ってるなら、新しいのあげるよ。これはやっぱりダサいし」

だが倫は笑って答える。

「ダサいかな?でも車に飾ると、けっこう可愛いよ」

後部座席の浅燈は、手を強く握りしめ、指先が白くなるほどだった。

以前、彼女がなぜ車にこのマスコットがあるのか聞いたとき、倫は「女の子ってこういうの好きじゃん?」と言っていた。

浅燈は、愚かにも「その女の子」は自分だと思っていた。

少しダサいと思っていたピンクの猫が、そのときから急に愛しく見えていた。

でも、彼に「ダサい」と言われて捨てさせられた自分のカップルストラップとは違い、

この猫は、彼の宝物として大事にされていた。

たった一つの違いは、それを「誰が」贈ったかだった。

浅燈は目を閉じ、あふれそうな涙を必死にこらえる。

未怜はルームミラー越しに浅燈を一瞥し、あくまで無邪気な口調で言った。

「そういえば、今年のダンスコンテスト、もうすぐ始まるの。私、それに出るために急いで戻ってきたんだ。前回は惜しかったなぁ......優勝できなかったから」

意味ありげに言葉を止め、笑顔で倫を見た。

「そういえば倫、あの時の約束、まだ覚えてる?」

倫の目が輝き、声が弾む。

「先輩はきっと優勝するよ」

そう言いながら、彼の視線がルームミラーに映った浅燈と交差する。

彼は反射的に視線をそらし、表情が一瞬曇った。

浅燈は再び顔を外に向け、手のひらに爪が深く食い込んでいた。

早く、こんな場所から消えてしまいたい。

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