愛は飛蛾のように、灰となる余生第3話
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みんなが慌ただしく荷物を片付け始めた。
未怜の視線が浅燈に向けられる。
「唐鎌さんもいたの?」
浅燈は無表情にうなずき、「こんにちは、先輩」と挨拶した。
未怜は倫を見て、口元に笑みを浮かべる。
「まさか私が1年いない間に、倫が彼女を作ってたなんてね」
倫は一瞬驚き、慌てて弁解した。
「それは違うんだ、先輩。浅燈はうちの妹みたいな存在だ」
少し間をおいて、まだ誤解を恐れているようにさらに言い添える。
「ほんとに、実の妹みたいなもんだから」
実の妹?
浅燈の心に鋭い痛みが走る。
そんな「妹」と毎晩肌を重ね、甘い言葉を囁く人がどこにいる?
未怜は納得したようにうなずき、笑顔が少し深くなる。
「そうだったのね」
荷物の片付けが終わると、浅燈は大きなバッグを必死に引きずりながら車へと向かう。
途中で汗をぬぐおうと立ち止まり、顔を上げたとき、倫が進んで未怜の小さなリュックを受け取っているのが見えた。
「先輩、俺が持つよ。男がこんなにいるのに、女の子に荷物を持たせるなんて」
未怜は浅燈に一瞥をくれて、微笑んでバッグを差し出した。
「ありがとう、助かるわ」
倫がバッグを受け取ったとき、彼女の指先にふれた。
浅燈の目には、彼の体がかすかに硬直し、その直後に耳の先が赤く染まったのが映る。
まるで恋を知ったばかりの青年のように。
彼も、恥じらうことがあるんだ。
でもその純情は、決して自分には向けられない。
浅燈は顔を伏せ、足元のバッグをまた引きずって車のそばへ。
「浅燈はすごいな。こんな大きなバッグ、俺でも持つの大変なのに、1人で運んできたのか。誰も手伝ってやらなかったのかよ」
倫の友人の1人が、彼女のバッグを持ち上げてトランクに積んでくれた。
浅燈は伏し目がちに、目に浮かんだ苦味を隠す。
荷物をすべて積み終えると、倫が急ぎ足でやってきて助手席のドアを開けた。
「先輩、どうぞ」
未怜は遠慮せず、席に座った。
ちょうど乗ろうとしていた浅燈は、手を引っ込めて黙って後部座席のドアを開ける。
車に乗るとすぐ、倫がどこからか取り出した保温カップを未怜に差し出した。
「さっき触ったとき、手が冷たかったね。どうぞ、温かいお茶だ」
浅燈は胸が詰まり、顔をそむけて窓を開け、外を見た。
自分が「体調が悪い」と訴えても、彼は何の気遣いもなく身体を求めてきた。
それなのに、未怜の指先が少し冷たいだけで、彼はすぐに温かい飲み物を用意していた。
本気で誰かを想うって、やっぱり違うんだ。
未怜はカップを受け取り、ほほえむ。
「倫、相変わらず気が利くのね」
彼女の視線はルームミラーにぶら下がったピンクの猫のマスコットに留まる。
「これ、2年前に私が落としていったやつじゃない?
あのときちょっとダサいから捨てようかと思ったのに、まさか取っておいてくれたなんて」
彼女は倫を見つめる。
「もし気に入ってるなら、新しいのあげるよ。これはやっぱりダサいし」
だが倫は笑って答える。
「ダサいかな?でも車に飾ると、けっこう可愛いよ」
後部座席の浅燈は、手を強く握りしめ、指先が白くなるほどだった。
以前、彼女がなぜ車にこのマスコットがあるのか聞いたとき、倫は「女の子ってこういうの好きじゃん?」と言っていた。
浅燈は、愚かにも「その女の子」は自分だと思っていた。
少しダサいと思っていたピンクの猫が、そのときから急に愛しく見えていた。
でも、彼に「ダサい」と言われて捨てさせられた自分のカップルストラップとは違い、
この猫は、彼の宝物として大事にされていた。
たった一つの違いは、それを「誰が」贈ったかだった。
浅燈は目を閉じ、あふれそうな涙を必死にこらえる。
未怜はルームミラー越しに浅燈を一瞥し、あくまで無邪気な口調で言った。
「そういえば、今年のダンスコンテスト、もうすぐ始まるの。私、それに出るために急いで戻ってきたんだ。前回は惜しかったなぁ......優勝できなかったから」
意味ありげに言葉を止め、笑顔で倫を見た。
「そういえば倫、あの時の約束、まだ覚えてる?」
倫の目が輝き、声が弾む。
「先輩はきっと優勝するよ」
そう言いながら、彼の視線がルームミラーに映った浅燈と交差する。
彼は反射的に視線をそらし、表情が一瞬曇った。
浅燈は再び顔を外に向け、手のひらに爪が深く食い込んでいた。
早く、こんな場所から消えてしまいたい。
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