愛は飛蛾のように、灰となる余生第1話
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浅燈は、五年間片想いをしていた隣の家に住んでいた年上の幼なじみ・倫と付き合って一年になる。
舞踊専攻の彼は、いつも彼女に難易度の高い「遊び」を持ちかけてきた。
彼女はずっと「想いが通じた」と思っていた。
──あの日、彼とその友人たちの会話を偶然聞いてしまうまでは。
「倫さん、唐鎌で一年も練習してりゃ、もう相当腕も上がっただろ?未怜先輩を落とすためにそこまでやるとか、マジで執念深いな」
「練習だけじゃないさ、復讐も兼ねてるだろ。去年のダンスコンテストで先輩は『優勝したら付き合う』って言ってくれたのに、唐鎌が邪魔して優勝さらったからな」
その瞬間、浅燈はようやく気づいた。
倫が自分と付き合ったのは、彼の想い人を遠ざけた自分への報復のためだったのだと。
彼女はすべてを悟り、静かに彼の元を去った。
けれど倫は、狂ったように彼女の痕跡にすがりつき、今でも一緒にいるかのように幻想を抱き続けていた──
* * *
唐鎌浅燈(からかま あさひ)と豊口倫(とよぐち りん)は、隣同士の幼なじみ。
付き合って一年。
舞踊専攻の彼は、何かと難易度の高い「遊び」を彼女に仕掛けてくる。
キャンプのテントの中、新しいポーズをまた一つ試したばかりだった。
浅燈は息を荒げ、頬を赤らめていた。
「倫さん、もうやめて......」
「やめる?これ、ダンス生徒の基本じゃないか」
倫はニヤリと笑いながら、彼女の腰を愛おしげに撫でた。
彼の前では、彼女は簡単に心のガードを解いてしまう。
彼に求められるまま、すべてを許してしまう。
何度か求め合ったあと、彼は満足したように起き上がり服を着た。
そして彼女の額に優しくキスを落とす。
「もう少し寝てて。俺、みんなと釣りに行く約束があるんだ」
彼女は柔らかく頷き、彼の温もりを感じながら甘い気持ちに包まれていた。
彼は彼女の髪をくしゃっと撫でて、釣り道具を手にテントを出て行った。
陽の光が差し込む。
彼女は目を細めて気づいた。
彼がスマホを置き忘れている。
急いで服を着てスマホを手に取り、彼を追いかけた。
テントから少し離れた川辺で、倫は仲間たちと釣りをしていた。
彼女が呼びかけようとした瞬間、彼らの笑い声が耳に飛び込んできた。
「倫さん、昨夜の騒ぎすごかったな!テント壊れるかと思ったぞ!唐鎌で一年も練習してりゃ、もう相当腕も上がっただろ?未怜先輩を落とすためにそこまでやるとか、マジで執念深いな」
「練習」?
浅燈の足が止まり、とっさに近くの木の陰に身を隠した。
「はは、あの小娘、見た目は清楚だけど、声が最高だったな......身体も柔らけえし......昨夜また新しいポーズ試したんだろ?」
「未怜先輩、もう研修終えて戻ってきたらしいぜ。いつ唐鎌捨てるんだ?先輩に嫌われたくないだろ?情でも湧いてきた?」
「まさか。去年のダンスコンテストで先輩は『優勝したら付き合う』って言ってくれたのに、唐鎌が邪魔して優勝さらったからな」
「練習だけじゃないさ、復讐も兼ねてるだろ?」
しばし沈黙ののち、倫は軽く笑った。
「......その通りだ」
男たちの笑い声が響き、彼女の身体について、平気で口にするその声がこだました。
木の後ろで、浅燈の顔は真っ青になっていた。全身が凍りついたように冷たい。
必死で口を押さえ、声を殺して泣いた。
五年前、彼女の家が倫の家の隣に引っ越してきた。
その時、初めて彼を見て一目惚れした。
彼がいる大学に行きたくて、国内トップのダンス専門学校の合格を蹴って、彼と同じ、レベルの低い舞踊科の大学に進学した。
一年前、彼女はダンスコンテストで優勝した。
倫は「お祝いのパーティーを開こう」と言ってくれた。
彼女は嬉しくて一晩中眠れず、一番お気に入りのドレスを着て鏡の前で笑い続けた。
パーティーの夜、彼は酔った勢いで彼女を抱きしめ、熱いキスをしてきた。
彼女は戸惑いながらもされるがままホテルの部屋に......
あの夜は痛かった。
けれど、彼と両想いになれたと思って、心から嬉しかった。
その後、彼は様々な場所で「遊び」に誘ってきた。
ベッドの上ではまるで別人のようで、次々と新しい姿勢を求めてきた。
彼女は恥ずかしがりながらも、彼の期待に応えたくて断れなかった。
彼が喜ぶなら、なんでもしてあげたかった。
それが全部嘘だった。
優しさも、愛しさも、全部演技だった。
倫は自分の「本命」に近づけなかった腹いせに、浅燈を利用しただけ。
自分はただの欲を満たすための「道具」だった。
浅燈は唇を噛みしめた。
血の味が口に広がる。
彼らはまだ彼女の身体について笑っている。
もうこれ以上聞いていられない。
彼女は硬直した足取りでテントに戻った。
気がつけば涙が止まらなくなっていた。
その時、スマホが鳴った。
母からの電話だった。
彼女は深呼吸して、できる限り平静を装った。
「お母さん......私、留学したい。できるだけ早く」
以前、学校の交換留学枠があったが、彼のそばにいたくて断った。
電話の向こうで、母は驚いたようだった。
「ようやく決心したのね?よかった!手続きはお母さんに任せて。一週間後には出発できるようにするから」
「......うん」
電話を切ったあと、彼女は自分と倫のスマホに付けたおそろいのストラップを見つめた。
それは彼女が選んで、嫌がる彼に無理やりつけさせたものだった。
彼女はそれを両方外して、テントの外の草むらに放り投げた。
今この瞬間から、倫をもう好きにはならない。
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