心にも降り積もる嘘の雪第2話
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言継は、黙り込んだ。
その時。彼の携帯が鳴った。言継は画面をちらりと見て、出ない。
次に、私の携帯が鳴る。知らない番号。
私が出ると、弱々しい女の声が聞こえてきた。
「白石さん……私、水守瑠璃です。今、あなたと言継さんが一緒にいること、分かってます。
少しだけ……お話しさせていただけませんか?」
私はスピーカーフォンにして、携帯をテーブルに置いた。
「白石さん、全部……全部私が悪いんです」
瑠璃の声は、涙声だ。でもうるさくない。むしろ、憐れを誘う。
「私……力がなくて、陽向を養えなくて。厚かましく、言継さんに助けを求めたんです。
言継さんは優しい人です。ただ……子供が可哀想だと思っただけで……
どうか、彼を責めないでください。もし、私たちを許せないのなら。
今すぐ陽向を連れて出て行きます。外で死んだとしても……絶対にご迷惑はおかけしません……」
電話の向こうから、子供の咳き込む声。そして瑠璃の慌てた声。
言継の顔色が、一変した。彼は私の携帯を掴み、叫ぶ。
「瑠璃!陽向はまた発作か!?動くな、薬は棚だ……今すぐ戻る!」
電話を切ると、言継は私を見た。焦りと懇願が、その目に滲んでいる。
「椿、陽向が……喘息の発作なんだ。命に関わる。一度だけ、行かせてくれ。
何かあったら……家で話そう。な?」
私は、目の前の男を見つめた。一秒前まで私に謝っていた。なのに次の瞬間、あちらで何かあったと聞いた途端、魂ごと持っていかれている。
私は、言継をよく知っている。瑠璃は何もしなくていい。大騒ぎする必要もない。私の前で威張る必要もない。ただ、弱さを見せるだけでいい。それだけで、言継を完璧に操れる。
「行けば?」私は椅子に背を預けた。
「あなた、この一歩を踏み出したら。私たち、本当に終わりだから」
言継の動きが、止まる。彼は私を見つめ、葛藤する。でも最後には、歯を食いしばった。
「椿……人の命がかかってるんだ。見捨てるわけにはいかない」
そう言って、言継は、振り返ることなく走り去った。
私は彼の背中を見つめる。目の前の冷めたコーヒーを手に取り、一気に飲み干した。
苦い。喉から胃まで、全てが苦い。
携帯を取り出す。久我龍之介(くが りゅうのすけ)おじい様に、電話をかけた。
「おじい様、今隣市にいるんです。お会いしに行ってもいいですか?」
私は、久我家の隣市支社へ向かった。おじい様は視察中だった。私を見ても、驚いた様子はない。
執務室から人を払い、二人きりになる。
「椿、顔色が悪いな」
おじい様は茶を啜りながら、鋭い目で私を見た。
「おじい様は、知っていたんですよね?瑠璃が帰国して三年。
久我グループのマンションに住んで、言継の金を使ってる。おじい様の目は、会社中に届いてるはず、知らないわけないでしょう」
おじい様は茶を置き、ため息をついた。
「言継は愚かだ。心が弱い」
そう言って、彼は私を見る。
「あの子、覚えてるよ。私生児とはいえ、久我の血が流れている。体が弱いなら、言継が多少面倒を見るのも当然だろう」
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