幽霊になって三年目第2話
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だけど、最初は哲也も信じてくれなかった。私が嘘をついてるんだって思ったみたい。
だから彼は泣きながら言った。「柚、信じられない。君がほかの人を好きになるなんて、そんなことあるはずないだろ。嘘だよな?俺は絶対信じないから!」
あの、いつも自信満々で怖いもの知らずだった男が、この時だけは子供みたいに泣きじゃくってた。
でも、心を鬼にしなくちゃ、もしここで私が折れたら、哲也と別れられなくなっちゃう。
そう思った私は哲也の頬をひっぱたいた。「いい加減にして!もうあなたを愛してないって言ってるでしょ!最初からあなたのお金目当てで付き合ったって、まだ気づかないの?他にもっとお金持ちの人を見つけたのよ。だからもうあなたとは別れるから!」
その日はどしゃぶりで、哲也は雨の中でずっと一人うずくまってた。私たちは二人とも、涙が止まらなかった。
あのときは、私もまさか自分が胃がんで死ぬ前に、交通事故で命を落とすなんて思いもしなかった。
今でも不思議なんだ。あの日は悲しみでぼーっとしてたから、それで車にはねられちゃったのかなって。
でも、おかしい。あの車は、まっすぐ私に向かってきた。わざとだった気がするの。明らかに私を狙ってたような気もした。
だけど、深くは考えなかった。だって、事故を起こした運転手は、まったく知らない人だったし。
ただ、その後、哲也もこの街を離れて、故郷のK市に戻って働き始めたらしい。
だから私が幽霊になってからのこの3年間、哲也には一度も会わなかった。彼の名前を聞くことさえなかった。
それなのに、今回酔いつぶれた明里が、まさか哲也に電話をかけるなんて。
明里の気持ちはわかる。私の知り合いなんて限られてるから、その中から私の痕跡を探そうとしてるんだろう。
でも、電話したってきっと無駄だ。あれだけ私を憎んでた哲也だもん。私が死ねばいいって思ってるはず。むしろ、私が死んだって聞いたら喜んでるんじゃないかな。
でもまさか、次の日に本当に哲也が家のドアをノックするなんて、私も思いもしなかった。
「誰よ」
酔いつぶれてた明里も、一晩経てばお酒はだいたい抜けてた。でも、まだ頭はぼーっとしてるようだ。
だからドアを開けて哲也の顔を見ても、彼女ピンと来なかったみたい。「あなたは誰!」
哲也は昔と変わらず素敵だった。ブランドもののスーツに身を包んだ彼が、私と明里の狭い部屋にいると、すごく浮いて見えた。
そんな哲也の目からは、あからさまな嫌気がうかがえた。
「哲也さん」
そこで明里はようやく気づいた。目の前にいるのが、姉がずっと忘れられなかった元カレ、哲也だということに。
「何しに来たのよ。お姉ちゃんを弔いにでも来たっていうの?だったらなんで、お葬式の時にはいなかったのよ!」
そして明里は何かを思い出したかのように、突然、喉を引き裂くような声で叫んだ。「お姉ちゃん!お姉ちゃん!お姉ちゃん!」
彼女はもう、トラウマになってるみたい。私のことを考えると、叫びだしたくなるほど辛くなるみたいだ。
そんな明里の姿は、見ていて私も本当に辛くなった。だけど、幽霊の私には何もできない。
もし私が生きていたら、この子の細い体を抱きしめて、「私はここにいるよ。ちゃんと学校に行って、お酒なんて飲んじゃだめ」って言ってあげられたのに。
明里は世界一いい子なんだ。世界で一番幸せになる資格があるのに。
でも、そう思ってるのは私だけみたい。哲也は、ひどく酔っぱらっている明里を軽蔑した目で見下して、こう言った。「一体どんだけ飲んだんだ?君たち姉妹の芝居は、いつまで続ければ気が済むんだ?」
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