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幽霊になって三年目第1話

この話は約1680字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

小島哲也(こじま てつや)と別れて三年。彼は私のことを、心の底から憎んでいる。

でもある日、妹が私のスマホを勝手に使って哲也に電話をかけた。「哲也さん……お願い、お姉ちゃんを連れ戻してよ……お姉ちゃんが死んで3年になるけど、私、本当に会いたいの」

てっきり哲也は、もう私のことなんて気にもしないと思っていた。なのにまさか、彼は狂ったように取り乱すなんて……

* * *

私の名前は伊藤柚(いとう ゆず)。死んで、もう3年になる。

今この瞬間も、妹の伊藤明里(いとう あかり)はお酒をあおり続けている。たった一人でべろべろに酔っぱらって、まるでアル中の人みたいだ。

私が死んでからの3年間、明里はずっとこんな毎日を送ってきた。

私たち姉妹は、二人で支え合って生きてきた。でも明里が大学2年生のとき、私は事故に遭って死んでしまった。

それ以来、私は幽霊になって、ずっと明里のそばを漂っている。

明里は真面目で成績も良かったから、きっと明るい未来が待っている。私はそう信じていたのに。

だから私は、高校を卒業してすぐに必死で働いた。たった一人の妹を大学に行かせてあげたかったから。

明里もそんな私の気持ちをわかってくれていた。学費を稼ぐのが大変だって知ってたから、一生懸命勉強して奨学金をもらって、バイトも頑張ってくれたんだ。

努力は必ず報われる。そう信じていた。私たち姉妹には、絶対に輝かしい未来が待っているはずだった。

でも、3年前のあの事故が、すべてを壊してしまった。

私が死んでから、明里はぱったりと勉強をしなくなった。それどころか、毎日バーに入り浸っては、ただアルコールに溺れている。

この世界で、私のたった一人の家族は明里だったし、明里にとっても私がすべてだった。

あの子は小さい頃から、ずっと私にべったりのお姉ちゃん子だった。

「姉は妹の親代わり」って言うけど、あの子にとって私は、本当に母親みたいな存在だったんだと思う。

明里は、私が自分のもとからいなくなるなんて、考えたこともなかったんだろう。だから私が死んだことで、あの子の世界は一瞬でめちゃくちゃになってしまった。

お酒に頼って、悲しみを紛らわすしかできなかったんだ。

でもまさか、明里が私のスマホを使って、小島哲也(こじま てつや)に電話をかけるなんて、私は思ってもみなかった。

哲也は、私の元カレ。でも、別れるときは本当にひどい揉め方をした。

きっとまた、私のことを思い出してしまったんだろう。明里は泣きながらお酒を飲んで、私のスマホを握りしめて、一人でずっと何かをぶつぶつと呟いている。

お姉ちゃんである私の死を、ずっと引きずっているんだ。あの子は、まだ少しも前に進めていない。

だけど、その電話の相手が哲也だったなんて。

明里は、彼が私の元カレだって知ってるはずだ。

明里は涙声で訴える。「哲也さん……お願い、お姉ちゃんを連れ戻してよ……私、本当に会いたいの」

そう言った後、明里はさらに声を上げて泣きじゃくった。「そうね、忘れてた。お姉ちゃんが帰ってくるわけないよね。だって、お姉ちゃんはもう、死んじゃったんだもん」

電話の向こうで哲也が何を言ったのか、私には聞こえない。明里はただ、何かに取り憑かれたみたいに「お姉ちゃんは死んだ」と繰り返すばかりだった。

漂いながらそれを見ていた私は、ふと固まった。哲也と別れた、あの時のことを思い出したからだ。

あの頃の私は、自分が胃がんで、しかも末期で、もう助かる見込みはないってことだと知っていた。

だから私は哲也に会いに行った。私が浮気したと、彼に思い込ませるためにわざと自分の首にあざを作った。

「哲也、別れよう。好きな人ができたの」

哲也が私をどれだけ愛してくれているか、痛いほどわかっていた。もし私が死ぬなんて知ったら、彼はきっと今の明里みたいに、壊れてしまう。

私も、哲也を心の底から愛していた。

明里は家族だから、縁を切ることなんてできない。

でも哲也は恋人だから。やり方次第で、私の人生から突き放すことができる。

だから、哲也に私のことを憎んで、離れていってもらうために、あんなどうかしてる方法を思いついたんだ。

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