婚約者が助けたのは高熱の私ではなく、秘書の犬だった第2話
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私も感情が爆発して取り乱し、彼女のものを一切合切投げ捨てた。
その報いとして、陸也は嫌悪をむき出しにし、私を非難した。
「叶音!落ち着けよ。君は部長なんだから彼女がよく俺とクライアントに会いに行っていると知っているだろう。彼女が私物を置き忘れて行っても何もおかしいことはない」
目が涙でいっぱいになった。「だったらなんでこの酔い止め薬があるのか教えてよ!」
彼はすぐさま口をつぐんだ。
私は車酔いしないからだ。
怒りを爆発させる前、たまたまお昼休憩のときに通りかかった社員たちが噂しているのを聞いた。
「ねえ、見てた?馬淵社長がすごく焦って受付の人に早急に酔い止めを買いに行かせていたところ」
「見た見た!ロビーで田中さんが馬淵社長に思いっきり寄りかかってた。でね、社長は田中さんをしっかり抱きしめていた」
「田中さんってか弱そうだよね。馬淵社長の胸元をつついて“全部社長のせいです。あの人たちと飛ばしあいをするのはやめてくださいと私言いましたよね。”って言ってたよ」
どうやら陸也は女秘書を連れて仲間に会いに行っていたみたいだ。前に交通事故に遭ったと言っていたあの親友のところに。
私は思わず書類をぶちまけた。そして、せかせかと会社をでた。くっついて立ち話をしていた社員2人の方の間をすり抜けて進む。
陸也はそれを見るとあたふたと田中麻鈴をなだめ、階下から走って追いかけてきた。そしてちょうど私がものを床に落としているところに出くわした。
彼は前にやってきて、私の手を掴んだ。
「クライアントに会いに行くって言ってたけど、仲間に会いに行くの間違いじゃない?どこに行ってたか当ててあげようか。親友が交通事故に遭った現場のあの道じゃないの?」
「君はストーカーか!?車の位置情報を調べたのか!」
陸也の表情は、私への激しい憎悪に染まっていた。
次の瞬間、耳をつんざくような着信音が鳴り響いた。田中麻鈴が陸也の手を取って設定させた着信音だった。
陸也の表情はふっとやわらぎ、穏やかな声で電話に応じた。
「麻鈴、どうした?」
「社長、どこへ行かれたのですか?まだあまり気分が優れないので私に付き添っていただけませんか」
陸也は急ぎ足で去っていった。そして振り返りもせずに言い捨てた。
「叶音、次はないからな」
怒りで手が震えた。「陸也!あなたにはきっとバチがあたるわ」
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薄暗い部屋で陸也がダイニングテーブルに置いて行ったペアリングを眺め、思い出に浸っていた。
指輪を持ち上げて、上につもっていた埃を払った。
そして自分の指につけていた思い出が詰まったペアリングを外し、彼のと一緒にゴミ箱に捨てた。
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まさか、こんなすぐに彼が罰を受けることになるとは…。
眠りに落ちたばかりの私を、鋭い着信音が引き戻す。
「馬淵陸也さんのご友人の方で間違いないですか?至急市立中央病院に来てください。陸也さんが交通事故に遭いました」
私が病院に駆けつけたとき、陸也はまだ手術室にいた。
田中麻鈴も手術室の外に座っていた。彼女は不安に押しつぶされて泣いていた。
そして私を見るなり、あわてて立ち上がった。
「叶音さん!どうしましょう、全部私のせいなんです。覆いかぶさって私をかばわなければ、陸也さんはこんな重傷を負うこともなかったんです」
なるほど。不倫相手を助けるために、手術室に入るほどの大怪我をしたわけか。
外で降り続く雪がすべて私の心の中に降り注いできた。
「ころちゃんが全部悪いんです。ころちゃんが車ハンドルの上に飛び乗ったんです。外は雪が降っていて、車が転倒して…」
泣いている田中麻鈴にイラついた。
「泣かないで。陸也は自分の身を犠牲にしてでもあなたを守ったんだから、あなたはここで彼のために祈っていればいいじゃない」
「じゃあ叶音さんはどうされるのですか?」
私は脳内で私の荷物を全部詰めるのにいくつ箱がいるかと考えていた。
「陸也は入院しなければならないようだから、私は家に帰って荷物をまとめてくる。彼が起きて一番に見たいのはあなただと思うから、ここで待っていてあげて」
彼女はこれを聞くと、ぱっと顔を赤らめた。
彼女は私たちがまだ入籍していないことを知っているので、自分の野心を一切隠そうとしないのだ。
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陸也の怪我はそれほど深刻でなく、脚にギブスをつける程度で済んだ。
看護師に連れられて手術室を出てきたとき、最初に彼の目に入ったのは飛びついてきた田中麻鈴だった。
彼がキョロキョロと周りを見渡した時、他の人影は見えなかった。
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