妹を救った私は、炎の中に置き去りにされた第2話
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翌日は元日。
例年なら、母方の祖母の家へ新年の挨拶に行くはずだった。
けれど、今年はもう無理だった――妹がまだ入院している。
母は朝早くに帰ってきた。
足早に2階へ上がってくるその顔は、ひどく憔悴していた。
そしてそのまま、木板で釘付けにされた私の部屋の前に立った。
「美緒!」
母の声は甲高く耳障りで、誰もいない廊下に響き渡った。
「中で何を考えてるのか知らないけど、これだけは言っておく。もうあんたにはうんざりなの!
昨日の夜、叔父さんに電話したわ。明日、あんたを田舎に送るから。そこで思う存分反省しなさい。もしちゃんと改心しないなら、二度と帰ってこなくていいわ!」
その口調は冷たく、決然としていた。まるで私に判決を言い渡しているようだった。
「叔父さんの家は生活も楽じゃないから、ちょうどいいわ。そこで苦労して、少しは思い知りなさい。
毎朝5時に起きて、豚や鶏の世話をして、それから畑仕事。そうすれば、人を傷つけることなんて考える暇もなくなるでしょう」
私は母の前に浮かびながら、歪んだその顔を見つめていた。
「聞いてるの!?」
母は木板をバンバン叩いた。
「今すぐ荷物をまとめなさい。明日の朝一番で出発よ!」
返事はなかった。
母の顔がみるみる険しくなっていく。
「いい度胸ね……まだ私に逆らうつもり?いいわ。あんたが荷造りしないなら、私がやってあげる!」
母は踵を返すと、自分の部屋へ駆け込み、古いスーツケースを引っ張り出した。
そして少し考えたあと、スマホを取り出して私の番号に電話をかけた。
「おかけになった電話は電波の届かない場所にあるか、電源が入っていないためかかりません……」
私のスマホはポケットの中に入ったまま、そして今は、私と一緒に焼け焦げ、鉄くずになっている。
「そう……そういうことね」
母は怒りのあまり、逆に笑い出した。
そしてスマホをソファに叩きつけた。
「家出したってわけ?罪から逃げるために逃亡したのね!」
母はラインを開き、親戚のグループに音声メッセージを送った。
「みんな聞いて!うちの美緒、昨日火をつけて妹に火傷させたくせに、今日は姿をくらましたの!
私はもう一度だけチャンスをあげて、反省させようと思ってたの。それなのに、あの子ったら勝手に逃げたのよ!」
グループはたちまち騒然となった。
【えっ!?美緒がそんなことをしたの?】
【私は前からあの子はおかしいと思ってたのよ。いつも暗い顔してるし】
【きっと妹に嫉妬してたのよ。最近の子は本当に心が歪んでるわ】
【お義姉さん、早く警察に通報して!警察に連れ戻してもらいなさい】
母は次々と届く返信を見て、ますます腹を立てた。
その時、ふと視線がベランダに向いた。
そこには何鉢かの観葉植物が置かれていた。
ポトス、多肉植物、それから満開を迎えたツバキ。
どれも、私が育てていたものだった。
朝食代を少しずつ節約して、お金を貯めて買った。
学校から帰ってきたら、毎日一番に水をやっていた。
母は大股でベランダへ向かうと、ツバキの鉢を乱暴につかみ上げた。
「この恩知らず!」
ガシャーン!
陶器の鉢が床に叩きつけられ、いくつもの破片に砕け散った。
土があたり一面に飛び散り、ピンク色の小さな花びらがそこら中に落ちた。
陽の光を浴びたその花びらは、ひどく目に刺さるように鮮やかだった。
やめて……
私は慌てて駆け寄り、止めようとした。
けれど、私の手は母の身体をすり抜けてしまう。
母はそれでも気が済まなかったのか、今度は吊り鉢の植物をつかみ、床に叩きつけた。
ドンッ!
ドンッ!
1鉢、また1鉢。
土も、陶器の破片も、折れた枝葉も、床一面に散らばっていった。
「隠れやがって!逃げて、知らん顔してれば済むと思ってるの!?そう、あんたは逃げたのね?だったら、もう二度と帰ってこなくていい。
最初から、あんたなんて娘は産まなかったことにするわ!」
母は鉢を壊しながら、私を罵り続けた。
すべて壊し終えると、荒い息を吐きながらスマホを取り出し、再び親戚のグループに音声を送った。
「今から交番に行って、警察に通報するわ。あの子を連れ戻してもらう!こんな子は少年院にでも入れて、ちゃんと規則を教えてもらえばいいのよ!」
親戚たちは口々に賛同した。
【そうよ。それがいいわ!】
【お義姉さん、間違ってないわ!絶対に甘やかしちゃダメ!】
【そういう子は一度きつく叱れば、すぐ大人しくなるわよ!】
私はベランダに浮かびながら、床一面に散らばった破片と土を見つめていた。
ピンク色の花びらが風に舞い、くるくると回りながら、ゆっくりと萎れていく。
――お母さん、知ってる?今あなたが壊したのは、私にとってたった1つの幸せだった。
そして、あなたが私を送り込もうとしている場所へ……私はもう、永遠に辿り着けない。
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