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妊娠8ヶ月、警察官の夫に愛人扱いされた第2話

この話は約1958字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

蒼汰は言葉を失った。

口を開けても閉じるばかりで、一言も返せない。

居合わせた偉い人たちも、その家族も、何が起きたのか分からず呆然としている。

凍りついた空気を破ったのは、子供の泣き声だ。

その声に皆がはっとすると、里香は慌てて子供を抱き上げ、あやしながら私を叱りつけた。

「この気狂い!もう離婚したくせに、まだうちの息子に付きまとう気?空気を読みなさい!お偉い方に無礼を働いたら、本当に刑務所送りになるわよ!」

綾もすぐに声を荒げた。

「元妻だからといって、人を叩いていい理由にはならない!警察官への暴行よ!」

「離婚」や「元妻」という言葉が聞こえた途端、会場は大騒ぎになり、あちこちから「刑務所へ入れろ」という怒号が飛び交った。

私は眉をひそめ、蒼汰の襟を掴んだ。

れっきとした妻なのに、どうして元妻になっているのか問いただそうとした、そのとき。

希美は先に蒼汰の胸へ身を寄せ、涙を浮かべながら私を見つめた。

「笙子さん……蒼汰とはもう離婚したでしょう。どうしてまだ私たちに付きまとうんですか……」

涙をぽろぽろと流しながら続けた。

「全部私が悪いんです。蒼汰を返しますから、それでいいでしょう……」

その言葉に、蒼汰の顔色が変わり、怒りを押し殺した声で私を叱りつけた。

「笙子!復縁はしないって何度も言ったはずだ!もう俺たちに付きまとうな!

まだ我慢してるうちに出ていけ!これ以上相手をする気はない!」

そう言って手を振ると、数人の警察官が私のもとへ向かってきた。

もみ合ううちに、私はよろけて里香へぶつかった。

その瞬間、彼女の腕に抱かれた子供の顔が目に映った。

私は雷に打たれたように立ち尽くした。

希美の息子だと言われていたその子供は、7時間もの陣痛に耐えて私が産んだ第一子、柿本昭(かきもと あきら)だ。

しかし、昭は数ヶ月前に亡くなったはず。

しかも、蒼汰が自ら火葬に立ち会ったと聞かされていた。

――蒼汰、まさか。

息が詰まり、胸の奥から激しい痛みが込み上げてきた。

子供の死まで偽装して、希美に育てさせていたなんて。

「その子を返して!その子は私の昭よ!」

歯を食いしばり、私は子供を里香の腕から奪い返した。彼女を押しのけ、泣きじゃくる我が子を抱きしめると、涙が止まらなかった。

すると希美が青ざめた顔で駆け寄り、子供を奪い取ろうとした。

声を震わせて叫んだ。

「この子は笙子さんの子じゃありません!

昭くんが亡くなってから、おかしくなってしまったのは知っています。でも、離婚した後も蒼汰に付きまとって、また子供を産もうとするなんて……

気の毒に思ってずっと我慢してきました。でも、どうか私の子供まで奪わないでください!

お願いです……私たち家族を放っておいてください。私が蒼汰と離婚しますから……子供だけは返してください!」

その言葉に蒼汰の顔が苦悶の色を浮かべ、希美の肩を強く掴んだ。

「希美、それは駄目だ!

離婚なんて考えるな。誰にも、俺たちの家族を壊すことなんてさせない!」

「じゃあ、私は?」

私は怒鳴って、蒼汰の言葉を遮った。

互いを想い合うように見つめ合う二人の前で、重たいお腹を指差し、一語一語を突きつけた。

「私のお腹には、蒼汰の子供がいるのよ。それなのに目の前で不倫して、私を勝手に元妻扱いするなんて……よくそんな真似ができるわね!」

蒼汰は下唇を噛み、私から目を逸らした。

一方、希美はさらに激しく涙を流し、まるで自分こそ被害者だと言わんばかりに来客たちへ訴え始めた。

「皆さん、ごめんなさい。笙子さんは蒼汰の元奥さんなんです。事故で子供を亡くしてから、心を病んでしまって……

それがきっかけで、街のチンピラと関係を持ってしまい、子供を授かったと聞きました。

蒼汰は昔の情があって面倒を見ていただけなのに、その子を蒼汰の子だと言い張って、私たちに離婚まで迫ってきたんです」

その話を聞いた瞬間、会場の空気は一変した。

客たちは嫌悪を隠そうともせず、叫び始めた。

「頭のおかしい女に尻軽まで加わってるじゃない!誰か早く、この女を叩き出して!」

私は腕の中の子供を優しくあやしながら、そっと鼻で笑った。

そして希美を氷のような冷たい目で見据えた。

「泥棒猫のくせに清純ぶるのもいい加減にしたら?塩瀬、自分が何をしてきたか忘れたとは言わせないわ。

自分の血液、1ミリリットルいくらで売ってたか、言ってあげようか?

私から6億円受け取って、そのうえ安定した仕事がほしいって、私の前で土下座したのは誰だった?」

私の言葉を聞くと、希美の顔からみるみる血の気が失われていく。

それでも私はやめなかった。

「蒼汰に囲われるだけじゃ物足りなくなったの?今度は私の居場所まで奪うつもり?

愛人のくせに、よくも図々しく正妻ぶれるわね。恥ずかしくないの?」

言い終えるよりも早く、大きなお腹に突然、強い衝撃が走った。

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