妊娠8ヶ月、警察官の夫に愛人扱いされた第3話
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「蒼汰の家庭を壊した泥棒猫は、あんたのほうよ!」
里香の甲高い怒鳴り声が響き渡った。
次の瞬間、私は背中から勢いよく壁へ叩きつけられ、お腹の奥がねじ切れるように痛んだ。
腕の中の子供も里香に奪われ、そのまま希美へ渡された。
すると、蒼汰の部下たちまで憤ったように口々に叫び始めた。
「そうだ!署じゃ誰だって、署長と希美さんが付き合ってるって知ってる!
希美さんが情報をくれたから、あれだけ大きな事件を解決できたんだろ!署長への昇進だって、あんなに早かったじゃないか!
役立たずの元妻のお前は、署長の足を引っ張ることしかできなかった!恥を知れ!」
――情報提供?事件解決?昇進?
それはすべて、私が蒼汰のためにしてきたことじゃない。
私の居場所を奪っただけでは飽き足らず、彼は私の手柄まで、全部希美のものにした。
同僚の前で、彼女を良き妻に見せかけるために。
そんなの、ありえなさすぎる。
「もしお前のせいで署長に不倫の疑惑がかかれば、免職になるかもしれないぞ!彼の警察官としてのキャリアを潰す気か?」
「ふしだらな女め。署長の妻を名乗るなんて目障りだぞ!署長がお人好しだから生かされてるだけで、俺だったらとっくに……」
耳を塞ぎたくなるような罵声が、四方八方から浴びせられる。
その冷たい空気の中で、私は青ざめた顔のまま、一歩引いて傍観している男を見つめた。
「……蒼汰」
掠れた声で呼んだ。
「言って。どうやって署長になったのか」
蒼汰の指先がぴくりと震えた。
そして顔を背け、冷たい目を私へ向けた。その瞳には、これまで見たこともない憎しみが宿っている。
私は思わず笑ってしまった。
「危険な現場は嫌だ、命を懸けたくない、オフィスで穏やかに働きたいって言ったのは蒼汰でしょ。それを叶えるためのコネをつけたのは、この私よ。
婚約した後には、階級が低すぎて私に釣り合わないって言ったから……父にも頭を下げた。
事件が難しくて手詰まりになるたび、私は寝る間も惜しんで情報を集めてた。なのに今になって、蒼汰は……」
「もういい!」
彼が怒鳴り声を上げた。
大股で歩み寄ると、私の首を乱暴に掴み上げた。目は真っ赤に充血し、狂気じみた形相で怒鳴った。
「デタラメを言うな!今の俺があるのは、すべて自分の力で勝ち取ったんだ!お前みたいな役立たずが何をしたって言うんだ!」
首に激痛が走った。息が詰まり、目の前が暗く染まっていく。顔は真っ赤に熱を帯び、腫れ上がった。
けれど、私があまりにも言い切ったせいか、蒼汰が異様なほど取り乱した姿を見て、その場にいる偉い人たちやその家族は顔を見合わせ、小声で話し始めた。
周囲の様子をうかがった希美の瞳が、不気味に光った。子供を抱いたまま、突然私の前へ膝をついた。
「……普段なら、笙子さんが何を言っても、病気だからって我慢してきました」
涙を流しながら、悲しげに続けた。
「でも、今日は駄目です。こんな場合にそんなことを言ったら、本当に蒼汰の将来が終わってしまいます。
お願いです、笙子さん……私が頭を下げますから、もうそんなこと言わないでください……」
膝をついてにじり寄り、私のズボンの裾を掴むと、そのまま額を床へ打ちつけようとした。
「希美!」
蒼汰は慌てて私の首から手を離し、しゃがみ込んで希美を支えようとした。
その瞬間、彼女は私の脚を抱えたまま、大げさに体を跳ね上げた。まるで弾き飛ばされたように転がりながら叫んだ。
「きゃあっ!笙子さん、殺す気ですか!」
私は何が起きたのか理解する間もなく、次の瞬間には、蒼汰の平手が思い切り私の頬へ振り下ろされた。
「笙子!いい加減にしろ!」
鈍い衝撃が右頬を焼き、私は思わず打ち返そうとした。
だがその直後、後ろから里香に腰を思い切り蹴り飛ばされた。
不意を突かれた私は壁に激しくぶつかり、そのまま床へ崩れ落ちた。
その瞬間、腹を引き裂かれるような激痛が走った。両脚の間から鮮やかな血がどっと流れ落ちる。
あっという間に床が真っ赤に染まった。
私は血だまりの中に座り込み、全身がばらばらになるような痛みに襲われた。
「お腹が……蒼汰……お腹が痛い……」
激痛に耐えながら涙を流し、手を伸ばした。
けれど、頭の上から里香の足が、私の手を思い切り踏みつけてきた。骨が砕けそうなほどの痛みだ。
「泥棒猫!まだ芝居を続けるつもり?そんな脅し、蒼汰には通じないよ!」
涙で視界がぼやける中、唇を震わせながら私は訴えた。
「蒼汰……演技じゃない……お願い……病院へ……」
しかし蒼汰は、一度も私の方を振り返らなかった。
希美を大切に守りながら、冷たく言い放った。
「もうやめろ、笙子。芝居は十分だ。今すぐ希美に謝れ。
子供を言い訳にすれば俺が騙されると思うな」
そう言って振り返った彼の視線が、私の下半身から広がる血へ落ちた。
その瞬間、顔に浮かんでいた嫌悪の色が消え去り、代わりに隠しきれない恐怖が滲み出た。
蒼汰は、私の本当の身分を知っている。だから、見捨てることなど本当はできない。
私は必死に彼の動揺した瞳を見据え、お腹が千切れそうな痛みに耐えながら歯を食いしばった。
「もし、お腹の子に何かあったら……蒼汰が……この子の父親である蒼汰が……殺したのよ!
父も……兄も……絶対に柿本家を許さない!
早く……病院へ連れて行って!」
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