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君への三通目の手紙は、遺書だった第2話

この話は約1491字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

佳凜は、ふらふらと大通りを歩いていた。

手には、病院から渡された「死の宣告書」を握りしめている。

「つまり……つまり、私に残された時間は、一ヶ月もないってこと?」

「申し訳ありません、篠原さん……」

青天の霹靂。いや、こんな衝撃、初めてではなかった。

篠原家は今や風前の灯火、全ての重荷が彼女ひとりにのしかかっている。

あの時、彼女は本当にどうしようもなかった。

誰にも頼れず、彼女は思わず和人に電話をかけた。

せめて、くだらない口喧嘩でもできたなら。

少しは、気が紛れる気がした。

だが、和人は彼女の全ての着信を無視した。やがて面倒くさくなったのか、ついには電源を切って着信拒否までした。

そして、再び現れた彼は、若いモデルを連れて、彼女との新婚のベッドで裸で横たわっていた。

佳凜の孤独と絶望に、彼は気づきもしない。

彼が見ていたのは、ただただ自分の嫌悪と反感を掻き立てる彼女の顔だけだった。

彼はわざと、彼女の目の前でモデルと濃厚なキスをした。唇の端から垂れる銀糸が、佳凜の目を刺す。

「なあ、そろそろ離婚、するか?」

佳凜は平静を装い、その部屋を逃げ出した。

大江市(おおえし)では、誰もが子供の頃から佳凜と和人が犬猿の仲だと知っている。顔を合わせれば喧嘩ばかり。

そして皆、佳凜が和人を嫌っていると思い込んでいた。和人が彼女を嫌っているのと同じように。

佳凜は自分の薬指の指輪をそっと撫でる。それは、結婚後に無理やり渡された和人からの指輪。

彼が持ってきたとき、指輪の箱は彼女の顔に投げつけられた。

最初、佳凜は自分の想いを必死に隠していた。

けれど、和人が彼女に妻の義務を強要したあの日。

その最中、彼の指が彼女の薬指の指輪に触れた。

和人は、急に吹き出して笑った。

「お前、まさか俺のこと好きで、離婚したくないってわけじゃないだろうな?

だったらやめとけよ。俺は絶対にお前を好きにならない。てか、むしろ大嫌いだからな!」

彼の嫌悪には、理由がある。

久遠家と篠原家は、早くから政略結婚で縛られていた。そのせいで、和人の初恋の人は海外に追いやられたのだ。

その夜、佳凜は眠れずに夜明けまで目を開けていた。

母は早く亡くなり、愛する人をどうやって繋ぎ止めればいいのか、誰にも教わらなかった。幼い彼女は、意地悪な言葉や皮肉でしか、和人に自分を見てもらう方法を知らなかった。けれど、それからどうすればよかったのか。

佳凜は乾いた目を瞬かせた。

スマホの振動音が、彼女の思考を乱す。

画面を見ると、和人がラインのグループチャットでスタンプを連投していた。

【なになに?どうしたんだよ?】

和人は黙ったまま、離婚協議書のサイン済み写真を放り投げる。

ただ一枚の写真が、まるで爆弾のようにグループの静寂を破った。

【マジ?離婚したの?あの女が同意したのか?】

【神すぎるニュース!和人、ついに厄介な女を切り捨てたか!】

【これはめでたいぞ!お前、前に言ってたじゃん、毎晩あの女の顔見るたびに吐き気してたって。これでやっと自由!モデルもアイドルもよりどりみどりだな!】

【でもさ、不思議じゃねえ?和人って今まで何人も女抱いてたのに、あいつは黙ってたよな。今回だけなんで急に同意したんだ?冗談じゃねえ?離婚証明書を取る日、すっぽかされるパターンじゃねえよな?】

その言葉が落ちると、グループは静まり返った。

直後、佳凜のスマホが鳴った。

「お前、まさか俺をからかってるんじゃないだろうな?離婚証明書ができたら、役所に来ないんじゃねぇだろうな?」

佳凜は蒼白な顔で、かすかに笑みを浮かべた。

そっと、電話口にささやく。

「ああ、そうよ。からかってるだけ。

あなた、どうするつもり?」

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