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君への三通目の手紙は、遺書だった第1話

この話は約2316字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

久遠和人(くおん かずと)と篠原佳凜(しのはら かりん)は、幼い頃から犬猿の仲だった。

なのに運命のいたずらか、あの年、名家同士の政略結婚の適齢者は、この二人しか残っていなかった。

「俺は死んでも、お前なんかと結婚しない」和人は堂々とそう宣言した。

すると佳凜は、にやりと笑って言い放った。「へぇ、じゃあ私、絶対にあなたと結婚するわ。さっさと死んでちょうだい」

そして迎えた結婚式当日。

和人は、なんと式場に数十羽のニワトリを放ち、佳凜に恥をかかせようとした。

けれど佳凜は無表情のまま、その中の一羽をつかみ上げて、さらりと「ねぇ、あなた」と呼びかける。

その瞬間、和人は、いたずら心がすっと引いていった。

彼女がどうしても自分と結婚しようとする姿を見て、和人は嘲るように言った。

「お前、後悔するぞ」

結婚して三年。佳凜は、これで99回目、和人の不倫現場を押さえた。

そのとき、初めて本当に理解した。

和人の言う「後悔」とは、いったい何だったのかを。

* * *

久遠和人(くおん かずと)と篠原佳凜(しのはら かりん)は、幼い頃から犬猿の仲だった。

なのに運命のいたずらか、あの年、名家同士の政略結婚の適齢者は、この二人しか残っていなかった。

「俺は死んでも、お前なんかと結婚しない」和人は堂々とそう宣言した。

すると佳凜は、にやりと笑って言い放った。「へぇ、じゃあ私、絶対にあなたと結婚するわ。さっさと死んでちょうだい」

そして迎えた結婚式当日。

和人は、なんと式場に数十羽のニワトリを放ち、佳凜に恥をかかせようとした。

けれど佳凜は無表情のまま、その中の一羽をつかみ上げて、さらりと「ねぇ、あなた」と呼びかける。

その瞬間、和人は、いたずら心がすっと引いていった。

彼女がどうしても自分と結婚しようとする姿を見て、和人は嘲るように言った。

「お前、後悔するぞ」

結婚して三年。佳凜はだんだん分かってきた。

和人の言う「後悔」とは、いったい何だったのかを——

これで99回目、和人の不倫現場を押さえた。

佳凜は顔色も悪く、部屋中に散らばった衣類を呆然と見つめていた。

鼻を突くような生臭い空気が漂い、胃がきりきりと痛みだす。

ベッドでは、上半身裸の和人がくつろいでいた。その腕の中の女は、なんと佳凜のシルクのパジャマを着ている。

男の大きな手が、女の体を好き放題に撫でまわしていた。

和人の目尻には、ますます濃い笑みが浮かぶ。

彼は眉をひそめ、わざとらしくいたずらっぽく佳凜を見やった。

「どうだ?お前より、彼女の方がそのパジャマ似合うだろ?

もう99回目だっけ?ここまでされて、まだ離婚する気はないのか?」

佳凜は無感動な仕草で自分の胃を押さえた。

初めてだった。彼女が和人の酷さに言い返さなかったのは。

「服を着て。話があるから、外で待ってる」

和人は彼女の背中を見て、鼻で笑った。

「話?俺と何を話すつもりだ?」

佳凜は足を止めたが、振り返らなかった。

「離婚の話よ」

和人は一瞬、唖然とした。

「やっとその気になったのかよ。おいおい、これは夢じゃないだろうな?」

佳凜が書斎に座って待つこと五分。和人はすっかり着替えを済ませて、そそくさとドアを開けた。

待ちきれない様子で、彼女と離婚したがっているのが見て取れる。

「お前、まさか冗談じゃないだろうな?」

彼の瞳に浮かぶ軽蔑を、佳凜ははっきりと見て取った。

彼女は何も返さず、机の上の離婚協議書を彼の目の前に滑らせた。

「内容を確認して。問題なきゃ、サインして」

和人は疑わしげに離婚協議書を手に取り、じっと彼女の様子を窺っていた。佳凜が本当に離婚に応じるとは、彼は信じていなかった。

今や篠原家は昔の栄華を失って久しい。佳凜が必死で自分にすがりつき、最後の一滴まで搾り取ろうとするはずだと、彼は思っていた。

だが、協議書を読み終えた和人は、完全に固まった。

佳凜は財産を一切要求せず、この新婚の家さえも自ら放棄すると書いてあった。

彼は眉をひそめた。「本気か?まさか離婚したら、実家で暴れるつもりじゃないだろうな?」

佳凜は終始、静かなままだった。

「本気よ。暴れたりしないから、安心して」

和人はもう躊躇わず、さっさと自分の名前をサインした。

最後の一画を書き終えたとき、彼の唇には微かな笑みが浮かび、心の重石が一気に消えた。

「じゃあ、もうさっさと役所に行って手続きしようぜ。一日たりともお前と過ごしたくないからな!」

「今から?」

佳凜は眉をひそめた。

「は、やっぱり、ここでやっぱりやめるとか言い出す気か?」

佳凜の胃は痛むばかりだったが、和人のあざける顔を見て、黙ってうなずいた。

「行こう」

そのまま、二人は役所に行った。

窓口の職員が書類を手渡しながら言った。

「手続きのため、一ヶ月後、離婚証明書を取りに来てください。二人揃ってね。その間、取り下げもできますので……」

「取り下げ?ありえない」

和人はペンを机に投げ、さらに大きな笑みを浮かべた。

佳凜が後から出てきたとき、和人の車はまだその場にあった。

彼は路肩に車を止め、クラクションを鳴らす。

窓を半分下ろし、サングラスを外して、余裕たっぷりに彼女をからかう。

「まあ、一応夫婦だったし、情ってもんが多少はある。お前も次の相手が見つかるか心配するなよ。ほら、こいつなんて悪くないんじゃないか?」

彼は名刺を差し出し、彼女が恥をかくのを期待していた。

だが、佳凜は何のためらいもなく、それをすっと受け取る。

「ありがとう。ちょっと考えてみるわ」

そう言うと、彼女は静かに背を向けて歩き去った。

和人は、その場で呆然と立ち尽くすしかなかった。

彼はまだ知らない。

一ヶ月。

それはただの離婚証明書を待つ時間ではなかった。

佳凜にとっては、命のカウントダウンでもあったのだ。

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