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光を恐れず、影に怯まず第2話

この話は約2069字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

円香の提案で、最後にもう一度キャンパスを歩くことになった。

円香は秀平の隣を歩き、肩が触れそうになるたび、わざと秀平の腕に触れていた。

私は二人の三歩ほど後ろを、影のようについて歩いた。

バスケットコートの前を通りかかると、円香が観客席を指さして笑った。

「秀平、二年生のときの決勝戦、覚えてる?ブザービーターでスリーポイントシュートを決めたとき、私、興奮して洸太の頭にジュースをこぼしちゃったんだよね」

秀平も笑った。「忘れるわけないだろ。あのあと、あいつがクリーニング代を請求してきて、結局、俺が払ったんだから」

二人にしか分からない思い出話に、私は入り込めなかった。

二年生のあの年、私も試合を見に行き、秀平に飲み物を渡そうとしたことがあった。けれど、秀平ははっきりと断った。

「お前、自分でも分かってるだろ。俺の友達の輪には馴染めないじゃん。知らない奴と話すだけで緊張するし。

だから無理に紹介しようとは思わない。余計なプレッシャーになるだろ」

秀平は私の存在を、誰にも知られない場所へ閉じ込めた。

その一方で、円香を自分の友達のグループへ紹介した。

講堂の前を通ると、卒業パーティーのステージがちょうど解体されていた。

円香は懐かしそうにため息をついた。「学園祭のダンスパーティー、懐かしいね。秀平、あのときダンスが下手すぎて、私の足を三回も踏んだよね」

秀平は苦笑しながら言い返した。「違う。二回だ」

指先の温もりが、少しずつ消えていく。

学園祭のダンスパーティーの日。私は借りたドレスを着て、舞台裏で一晩中、秀平を待っていた。

あとから来た秀平はこう言った。「脱げよ。お前は猫背だからこういう服は似合わない。笑われるだけだ。そんな格好で歩いて、人に見られたらお前のほうがつらいだろ」

私が秀平と一緒に過ごしたかった大学生活。

それらはすべて円香の青春を彩るものになった。

靴ひもがほどけ、私はしゃがんで結び直した。

顔を上げると、二人はもうはるか先を歩いていた。

手についた砂ぼこりを払うと、私はそのまま寮へ戻った。

卒業を迎え、荷物をまとめなければならなかった。

四年間で増えた荷物は想像以上に多かったが、ようやく大きな袋三つにまとめ終えた。

キャリーケースは車輪が壊れていて、手のひらが赤くなるほど力を込めても持ち上げられなかった。

私は秀平に電話をかけた。長い呼び出し音のあと、ようやく電話はつながった。

「荷物が多くて……少し運ぶの手伝ってもらえない?」

電話の向こうから、露骨な苛立ちを含んだ舌打ちが聞こえた。

「澪菜さ、さっきキャンパス歩いてる途中で急にいなくなっただろ。円香がお前のこと、ずっと心配してたんだぞ。それなのに今度は俺を頼ろうっていうのか?」

私はスマホを握る指に力を込めた。「頼るってより、ただ、一人じゃ運べないの」

「自分で考えろよ。何回かに分けて運べばいいだろ。もうすぐ社会人になるんだから、いつまでも人を頼るな。卒業前、最後の授業だと思え。

これから円香の荷物を車まで運ぶから、悪いけど時間ない。自分で何とかしろ」

電話は一方的に切られた。

そのとき、スマホの画面に一通のメールが表示された。

海凪大学医学研究科の合格通知だった。

以前、私は秀平から大学院進学を諦めるよう言われた。

「お前の性格じゃ、地方に行ったら絶対泣くだろ。うちの会社で事務でもやればいい。俺が養ってやるから」

秀平にすがって生きるくらいなら、いっそ、泣いてでも自分の足で立ちたい。

その時、円香が鼻歌を歌いながら部屋へ入ってきた。手にはアイスミルクティーが二つあった。

秀平は女子寮には入れないため、下で円香を待っているらしい。

円香は片方を私に差し出した。「荷物まとめるの大変だったでしょ。喉乾いた?秀平がわざわざ買ってくれたの」

冷たい飲み物だった。生理中で冷たいものを避けたかった私は、小さく首を横に振った。「大丈夫」

円香はアクセサリーボックスの引き出しを開け、片づけ始めた。

しばらくして、「カタン」と小さな音がした。

シンプルなシルバーのネックレスが一つ、引き出しから転がり落ちた。

星形の透かし彫りのチャーム。その裏側には、私がコンパスで刻んだ小さな傷が残っていた。秀平の名前の頭文字「S」。

それは、一年生の誕生日に、秀平が初めてくれたプレゼントだった。

二年生の後期、そのネックレスは突然なくなった。

私は目を腫らすほど泣きながら、必死に探した。

そのとき秀平は、私の頭を撫でながら言った。「ネックレスくらいで泣くなよ。どうせどっかに置き忘れたんだろ。また今度、金のやつ買ってやるよ」

けれど、その「今度」は来なかった。

円香はしゃがんでネックレスを拾い上げた。「このネックレスね、私がかわいいって言ったら、秀平がそのままくれたの。本当は澪菜に返そうと思ったんだけど、秀平が『一度あげたものを返してもらうなんておかしいだろ。そのまま持ってていい』って言うから、そのままもらっちゃった。

澪菜が欲しいなら、今返すよ」

私は首を横に振った。「いらない」

もう汚れてしまったものを返されても、結局捨てるだけだから。

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