和紙文兆円の遺産とマッチ三本、私はマッチを選んだ · 第2話設定≡

兆円の遺産とマッチ三本、私はマッチを選んだ第2話

この話は約1971字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

母は取り乱し、ぼんやりと突っ立っている私を見ると、溜め込んだ感情がついに爆発した。

「あんなつまらないマッチなんて選んだあんたが悪いんだ!マッチ……火事……もう、これも運命か……

兆円の遺産を選んでいれば、こんなことにはならなかったのに!」

母は声を詰まらせ、泣き崩れた。

父は黙って母を胸に抱き寄せ、疲れたように目を閉じ、一言も発しなかった。

私は頭がくらくらし、足元がふらついた。

――どうして?

確かに「お父さんとお母さんが大金持ちになりますように」と願ったはずなのに、なぜこんなにひどいことになってしまったの?

もしかして、私が生まれ変わったことで、何かが変わってしまったのか?

今世での願いは、すべて「逆」に叶うということ?

そう思いつくと、私は寝室に駆け戻り、二本目のマッチを取り出そうとした。

しかしその瞬間、家のドアがバーンと蹴破られた。

「おーい!俺たちが借金取りで汗かいて走り回ってるってのに、お前らはのんびりしてやがるな!

今日が最後の期限だ。明日までに返せなきゃ、お前ら全員の手を切り落とすからな!

聞いたぜ、長女が美人だってな。その時は俺たちにも味見させてもらうからよ!」

そう言うなり、彼らは棒を手に家中をめちゃくちゃに壊し始めた。

以前からの借金も返せず、突然の火事で数億の賠償金まで背負うことになった両親は仕方なく、亜由美に電話をかけた。

十回以上かけて、ようやく妹はのんびりと電話に出た。

「亜由美、今お父さんとお母さん、本当に困ってるんだ。お爺さんが兆円もくれたんでしょ?多くは求めないから、三億だけ、貸してくれないか?

借金が返せなきゃ、取り立て屋がお父さんとお母さんの手を切り落とすって……」

妹のSNSには、たった今買ったばかりの、十億もするエメラルドのネックレスを自慢する写真が投稿されていた。

それなのに、両親の必死の頼みに対し、妹はわざとらしく困ったようにため息をついた。

「お父さん、お母さん、あげたくないわけじゃないんだけどさ。

これ、お爺さんが私にくれた遺産なんだよ?無駄遣いできないのよね。

責めるなら、お姉さんがマッチなんて選んだせいにしなよ!」

両親がまだ何か言おうとした時、妹はさっさと電話を切った。

そしてすぐに、妹はSNSを更新した。

腕に抱えたチワワの頭に、純金の小さな王冠をかぶせた写真だった。

キャプションは【お金は、価値ある存在に使うもの】だった。

両親は怒りで震え上がった。

翌日の取り立てに備え、何とか返済金を捻出しようと、私は幼い頃から集めてきた推しアイドルのサインやトレーディングカードをすべて売り払った。

自分のスマホまで売り、数千円で買った中古のガラケーに替えた。

母は嫁入り道具の数々を売り、父も愛用の車を手放した。

ようやく数千万円をかき集め、父の眉間の深いしわが、ほんの少しだけほぐれた。

「この額なら……明日の取り立ては、何とかなるだろう」

母もやっと落ち着きを取り戻し、私に詫びた。

「真由美、今朝はお母さんが感情的になって、あなたに当たってしまったわ。あなたのせいじゃないって、分かってるの。ごめんね……」

私は鼻の奥がつんと熱くなり、今にも泣きそうになった。

「やっぱり……私、間違えて選んだのかもしれない……」

父はそっと、私の肩をポンと叩いた。

「もういい、済んだことは仕方ない。

お金なんて所詮、ものだ。人間が生きてりゃ、また稼げるさ。この兆円で亜由美の本性が分かったと思えば、安いもんだ!

哀れに思って引き取ったのに……結局、恩知らずを育ててしまったなんて……」

夕食はパンだけだったが、三人で囲むと、なぜか心が温かくなった。

父は今後の計画を語り、目に再び希望の光を宿した。

「手足さえあれば、お父さんはきっとまた這い上がってみせる!」

夜、私は覚悟を決め、二本目のマッチに火をつけた。

「お願い……お父さんとお母さんが体を壊し、一生貧乏で苦しみますように!」

――最初の願いが逆に叶うなら、今度は、逆の願いをかければいい。

今度こそ、お父さんとお母さんが一生、平和で豊かで過ごせるのだろう。

二本目が燃え尽きたマッチの軸を握りしめ、私は一睡もできなかった。

昨夜のように、目を覚ますと悪い知らせが飛び込んでくるのが、怖くてたまらなかった。

大金持ちになんてならなくていい。ただ、両親が一生健康で、幸せでいてほしい。

午前五時、激しい眠気が突然襲ってきた。

体がよろめき、ほんの一瞬、意識が遠のくのを感じた。

再び目を覚ますと、周りは死んだように静まり返っていた。

心臓を高鳴らせながら、そっと両親の寝室のドアを覗いた。

二人は布団の中で、安らかに眠っているようだった。

私はほっと胸をなで下ろした。

だが、自分の部屋に戻ろうとしたその瞬間、二つの絶叫が両親の寝室から同時に爆発した!

勢いよくドアを開け、中を覗いた私はその場で、気を失いそうになった。

縦書き表示中:本文は右から左へスクロールします(← → キーでも移動できます)