兆円の遺産とマッチ三本、私はマッチを選んだ第1話
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祖父が臨終の際、兆円の遺産と三本のマッチを残した。
「君たち姉妹で一つずつ選びなさい。真由美が姉だから、先に選べ」
私は迷わず兆円の遺産を選んだ。
義理の妹――竹田亜由美(たけだ あゆみ)は、たった三本のマッチを受け取るだけ。
ところが、あのマッチには、とんでもない力が秘められていた――火をつけて願い事をすれば、何でも叶う力。
妹は、両親が私ばかりを可愛がるのをずっと恨んでいた。真っ先に、彼女はマッチを擦った。
「あの二人が、惨めな最期を迎えますように」
案の定、父は突然の心臓発作で急死。母は病院へ駆けつける途中、大型トラックに跳ね飛ばされた。
私は包丁を手に、妹に詰め寄った。
「あんたが大人になったら遺産も分けるって、約束したよね!?
父さんと母さんが善意であなたを引き取ったんだよ!食べるものも着るものも、ずっと私と同じにさせてきたのに!どうして恩を仇で返すの!?」
妹の顔には、むき出しの欲望がにじんでいた。
「引き取るんなら、あんたを捨てて、全部私に譲るべきだったのよ!
あんたが恵んでくれる遺産なんて、要らないわ。みんな死ねば、結局お金は全部私のものになるんだから!」
そう言い捨て、妹は冷たい笑みを浮かべ、二本目のマッチに火をつけた。
「竹田真由美(たけだ まゆみ)が山奥に売り飛ばされて、産む機械になって、難産で死にますように!」
私は青ざめた。ありったけの貯金をはたき、千人ものボディガードを雇い、鉄壁の警護を敷いた。
……でも、ある深夜、全てのボディガードが同時に気を失い、私は結局、あの山奥に売り飛ばされた。
地獄の日々が始まった。私は豚や犬以下扱いの、ただの産む機械になった。
どれほどの時が流れただろう。激痛と屈辱の果てに、私は静かに息を引き取った。
そして、目を開くと――遺産を分配する、あの日に戻っていた。
* * *
祖父が震える手で、三本のマッチを取り出した時、誰もが首をかしげた。
「お爺さま、混乱なさってるんじゃないでしょうか?家宝がマッチ三本だなんて」
「まさか、養子のお嬢さんを辱めるためですか?それじゃあ、あまりにひどすぎますよ」
祖父の声はかすれ、か細いものだった。
「兆円の遺産とこのマッチ、君たち姉妹で一つずつ選びなさい。真由美が姉だから、先に選べ」
私――竹田真由美(たけだ まゆみ)は全身が震え、はっきりと悟った――自分は、生まれ変わったのだ、と。
前世の、家族の悲惨な最期が脳裏をよぎり、思わず傍らの両親を見つめた。
二人は無事そこに立ち、励ますように、そっと頷いてくれた。
私の目は、たちまち涙で曇った。
前世、私はあの兆円の遺産を選んだ。
でも、義理の妹――竹田亜由美(たけだ あゆみ)がマッチに願いをかけ、両親を惨死させ、私を山奥で惨めな死に追いやるなんて、夢にも思わなかった。
死の直前の、あの激痛は、まだ体の奥に残っている。
――今世は、絶対に同じ過ちは繰り返さない!
今度は迷わず、私は三本のマッチを選んだ。
周囲の空気が、一瞬で凍りついた。
「真由美、気は確か?ただのマッチよ?兆円の遺産じゃなくてそれを?」
「兆円の遺産を全部養子に譲る気?いい人ぶるのも、いい加減にした方がいいわ。こんな時に!」
「ああ、もどかしい!選べないなら、私が代わりに選んであげるわ!」
両親も慌てて、私の袖を引っ張った。
「真由美、間違えて選んだんじゃないの?お父さんの会社、ようやく上場したばかりなのに、うまくいってないんだ。私も体調が優れなくて……今こそ、お金が必要な時なのに」
「君は良い子だ、妹のことを考えてるのは分かる。でも兆円の遺産を選べば、後で妹に分けてあげられるだろう?こんなこと、しなくてもいいよ……」
両親が必死に言い聞かせる中、私は微動だにしなかった。
「私は、このマッチがいい。
亜由美は幼くして本当の両親を亡くして……私より、ずっと不幸なの。兆円の遺産なんて、一円もいらない。全部、亜由美に譲る」
妹は飛び跳ねんばかりに喜んだ。
遺産相続の書類に、得意げにサインしながら、形だけの感謝を口にした。
「お姉さん、太っ腹だね。ありがとう。安心して、たとえお姉さんが路上で物乞いするほど貧しくなっても、パンくらいは必ず買ってあげるから!」
両親は私を見つめ、言い返すこともできず、悔しさで唇を噛んだ。
祖父が病床に臥せっていた三年間、私は献身的に世話を続けた。
一方、妹は祖父の「老人臭い」と言って嫌がり、正月のお年玉をもらう時くらいしか近づこうとしなかった。
だからこそ、祖父はどちらの人生でも、私に優先して選ぶ権利をくれたんだ。
周囲の冷笑や嘲りの視線には、一切応えなかった。
彼らにはわからない。このマッチが、人の願いを叶える秘密を隠しているなんて。
その夜、両親が寝室で、何度も寝返りを打つ音が聞こえてきた。
「真由美は、一体どう考えてるんだろう……」
「二十年以上も育てて……バカを育てちゃったのかしら」
「明日、借金取りが来るんだ。返せなければ、家を失う……」
祖父の家訓は厳しく、子孫には自立を求めた。
父の会社は創業したばかりで業績が振るわず、多額の借金を抱えていた。
祖父の遺産で、この難局を乗り切れるはずだったのに――私は、マッチを選んでしまった。
妹は遺産を手にするや、遊び呆けるばかり。両親の借金を肩代わりしてくれるなんて、夢のまた夢だ。
一睡もできずにいる両親を思うと、私の胸も苦しくなった。そっと、一本目のマッチを取り出し、擦った。
「お願い……お父さんとお母さんが、一晩で大金持ちになりますように」
願いをかけると、私はほっとしたように布団にもぐり込んだ。
……けれど、翌朝、母の絶叫で目を覚ました。
「だめ……もう、すべて終わりだわ!会社で、突然火事が起きて……全部、焼け落ちちゃった!
隣の店にも燃え広がって、数億円の賠償金を払わなきゃいけないんだ!」
父も床に崩れ落ち、頭を抱えて震えていた。
私は黒く焦げたマッチの軸をぎゅっと握りしめ、全身の血の気が引いていくのを感じた。
――どうして……どうしてこうなったの!?
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