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余命一か月、娘のために元夫へ戻った第2話

この話は約1576字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

私は圭吾を静かに見た。

「私はただ、あなたと彼女に幸せになってほしいだけ。昔のことを責めてもいないわ。深く考えすぎよ」

圭吾は大きく息を吐き、疲れ切った目で私を見つめた。

理玖が近づき、私の手を取った。

「ママ、戻ってきたんだから、パパと仲よくしてよ。前は芹香お姉さんが好きだって言ったけど、ママのことだって好きだよ。だからママも、もうこんなことするのやめようよ」

不意に、みぞおちを錐でえぐられたような痛みが走った。

手が震えるほどの激痛だった。私は背を向けて部屋へ入り、すぐに鍵をかけると、鎮痛薬を2錠取り出して飲み込んだ。

このところ、痛みが起きる間隔がどんどん短くなっている。

残された時間は、もう2週間もない。

激しい音を立てて、ドアが蹴り開けられた。

私は慌てて薬のボトルを枕の下へ隠した。

入ってきた圭吾は、私が何かを隠すような動きをしたことに気づいたらしい。一瞬、疑うような目を向けたが、怒りのほうが勝った。

彼は避妊具の箱をベッドへ放り投げ、片手で私を押さえつけると、もう片方の手で乱暴に服を引き裂こうとした。

「わざと俺を挑発してるんだろ?どうすれば、いつものお前に戻るのか確かめてやる」

何をされても、私は抵抗しなかった。無表情のままだった。

やがて耐えられなくなったのは、圭吾のほうだった。

「分かった!そんなに芹香をここへ呼びたいなら、今すぐ呼んでやる!」

私は静かに答えた。

「言ったでしょう。あなたが幸せなら、それでいいの」

圭吾は歯を食いしばって何度かうなずき、服をつかむと部屋を飛び出していった。

訳が分からないという顔で、理玖が近づいてきた。

「ママ、いったい何がしたいの?」

私は答えず、理玖を廊下へ出してドアに鍵をかけた。

それから、わずか2、3日後。

圭吾は大きな黒いSUVで、芹香とその娘を連れてきた。いくつものスーツケースを下ろし、二人を屋敷へ迎え入れた。

2階の部屋にいた私は、階下から聞こえる荷運びの音を聞きながら、遠い日のことを思い出していた。

あの日も、今日のような曇り空だった。

私は一人で妊婦健診を受け、予定より早く帰宅した。付き添ってくれる夫がいる妊婦を見かけて、うらやましく思いながら玄関を開けた。

リビングのソファでは、裸の二人が夢中で体を重ねていた。

私は駆け寄り、芹香にかかっていたブランケットを引き剥がした。

振り上げた手は、圭吾につかまれた。

「恥ずかしくないのか?こんな弱い立場の女を責め立てて。誰にも芹香を傷つけさせない」

私は半狂乱になり、持っていた母子健康手帳のケースを何度も二人に叩きつけた。

硬い角で頬が切れても、圭吾は泣いている芹香を腕の中にかばい続けた。

力尽きた私は、その場にへたり込み、肩で息をした。涙で顔はぐしゃぐしゃだった。

二人が目の前で慌ただしく服を着る様子を、私はただ見つめていた。

そこへ、当時5歳だった理玖が入ってきた。

芹香が涙を拭っているのを見るなり、理玖は彼女に駆け寄った。

「芹香お姉さん、ママに怒られたの?ママは怖いよね。泣かないで。僕が涙を拭いてあげる。僕もママなんて嫌い。外へ遊びに行こう。もうママには怒られないようにするから」

下腹部が繰り返し硬く張り、息ができなくなった。腹を押さえたまま、私は仰向けに倒れた。

耳に届いたのは、圭吾の冷たい声だった。

「芝居はやめろ。腹の子を持ち出して、俺を思いどおりにしようとするのはもうたくさんだ。妊娠するのは、お前だけじゃない。大げさなんだよ」

脚の間を生温かいものが伝い、引き裂かれるような痛みが全身を貫いた。

「痛い……お願い……」

もう声を出す力さえ残っていなかった。

それでも圭吾は芹香を抱き寄せ、そのまま部屋を出ていった。

「芹香、怖がらなくていい」

意識が遠のくなか、理玖の泣き叫ぶ声だけが聞こえた。

「血が……こんなに血が出てる。ママ、どうしたの?ねえ、目を開けてよ!」

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