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交際6年、最初から私が「浮気相手」だったなんて第2話

この話は約1411字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

颯哉が眉をひそめた。

「朝、いったい何のつもりだ」

私はご祝儀袋を取り出し、赤ん坊のそばにそっと置いた。

「長年の同級生でしょ。子供が生まれたんだから、お祝いくらいするのが当然じゃない」

次の瞬間、私のメールに秘密保持契約が届いた。

内容はこうだ。もし私と颯哉の関係が陽菜に知られたら、母の治療にあたっている医療チームを解散させる、と。

さらに背筋が凍ったのは、母の名前がすでに署名欄に記されていたことだった。

母は肝癌が再発し、癌細胞は急速に広がっていて、医師たちもお手上げの状態だった。

その時、颯哉が大学院時代の先輩を紹介してくれたのだ。難病を専門に扱うチームだと聞いていた。

その先輩の力を借りて、ようやく母の容体は安定していた。

まさか、颯哉に母を人質に取られるとは思ってもみなかった。

陽菜が軽く颯哉を睨みつけた。

「なんでそんな怖い顔するの。同級生さんだって、善意でやってくれたのに」

彼女はベルベットの小箱を取り出した。中には、ハイブランドのブレスレットが入っていた。

「颯哉の昔のお友達なんでしょ。これ、よかったら受け取ってください」

隣で玲子が口を挟んだ。

「もらっときなよ。こんなの、陽菜には山ほど持ってるんだから」

陽菜がにっこりと笑った。

「そうそう、遠慮しないで。うちの旦那ったら、しょっちゅうブランド品買ってくれるの。

時々、セットで買っちゃうこともあって。ほんと、困ってたわ」

胸の奥に、じっくりと苦いものが広がった。

颯哉は、私と付き合っている間、ずっと貧乏なふりをしていた。

以前、一緒に買い物へ行ったとき、私が気に入ったバッグがあった。颯哉は買ってくれようとした。

でも私は、家を買うための出費を考えて、自分からメルカリで中古を探そうと言った。

彼が「上司に歩合給をカットされた」とこぼしていたから、私はそれを真に受けていたのだ。

親友たちの顔をぐるりと見回すと、皆それぞれに言い訳をつけて、次々とこの場を離れていった。

颯哉が結婚したことだけじゃない。彼が貧乏なふりをしていたことまで、皆、口を揃えて私に黙っていたのだ。

私の必死な姿を見て、面と向かっては同情するふりをしながら、陰でどんな言葉で私の愚かさを笑っていたのか、想像するだけで胸が痛んだ。

ブレスレットを受け取り、私はぼんやりとした足取りで病院を後にした。

ホテルに戻ってようやく、涙が堪えきれずにこぼれ落ちた。

颯哉と付き合っていた頃、私たちは友人たちから「苦労人同士のカップル」と揶揄われていた。

私はアルバイトで学費を稼ぎながら、母の高額な医療費まで背負っていた。

颯哉は、私よりもっと苦しい状況で、一円だって無駄にできない生活を送っていた。

二人で頑張れば、きっと生活は良くなると二人とも信じていた。

あの頃はお金がなくて、屋台の300円のおでんを食べていても、閉店まで話し込んだものだった。

卒業後、彼はどうしても地元に戻って起業すると言い張り、私は帝都での内定を選んだ。二人で稼いで頑張ろうと約束した。

空港で見送ったあの日、彼は私を強く抱きしめて、家を買ったら結婚しようと誓った。

その約束を、6年も待ち続けた。

この6年間、私はひたすら働き続けた。

昼は会社勤め、夜は副業、週末は塾の講師まで掛け持ちした。

一番きつかった時期は、三ヶ月間毎日4時間しか眠れず、救急搬送されかけたこともあった。

それでもあの頃は、幸せだと思っていた。

これがすべてまやかしだったなんて、夢にも思わなかった。

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