交際6年、最初から私が「浮気相手」だったなんて第1話
この話は約2758字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。
私の名前は春日井朝(かすがい あさ)。遠距離恋愛が始まって、今年で6年目に入った。
仕事が忙しいという言い訳をして、彼氏である桐生颯哉(きりゅう そうや)の誕生日を一緒に過ごせないと伝えた。
だが陰では、不動産の権利証を持って、こっそり飛行機に乗って数時間もかけて彼の暮らす街へたどり着いた。
友人たち皆の前でプロポーズをして、彼を驚かせるつもりだった。
タクシーを待つ間、仕事用のアカウントでいくつかメッセージを返し、そのままインスタを開いた。
目に飛び込んできたのは、親友の森田玲子(もりた れいこ)の投稿だった。
【親友に子どもが生まれた!おめでとう~女の子、4.2 キロだよ。こっちまで嬉しくなっちゃうなあ】
写真をタップすると、映っていたのは恋人の颯哉と見知らぬ女性。彼女の名前は、どうやらは神崎陽菜(かんざき ひな)っていうみたいだ。二人の間には、赤ん坊が抱かれていた。
頭の中が一瞬で真っ白になった。
玲子の他の投稿も次々と開いてみると、そこには颯哉とその女の日常だ。出会いから恋愛、結婚、出産……6年前から今日に至るまで、一つも欠けることなく記録されていた。
結婚式の集合写真には、私の一番親しい友人たちの顔まで写っていた。
心が、すっと冷えていく。そうか、皆がずっと知っていたのだ。
まる6年間も知らなかったのは、私だけだった。
* * *
私の名前は春日井朝(かすがい あさ)。遠距離恋愛が始まって、今年で6年目に入った。
仕事が忙しいという言い訳をして、彼氏である桐生颯哉(きりゅう そうや)の誕生日を一緒に過ごせないと伝えた。
だが陰では、不動産の権利証を持って、こっそり飛行機に乗って数時間もかけて彼の暮らす街へたどり着いた。
友人たち皆の前でプロポーズをして、彼を驚かせるつもりだった。
タクシーを待つ間、仕事用のアカウントでいくつかメッセージを返し、そのままインスタを開いた。
目に飛び込んできたのは、親友の森田玲子(もりた れいこ)の投稿だった。
【親友に子どもが生まれた!おめでとう~女の子、4.2 キロだよ。こっちまで嬉しくなっちゃうなあ】
写真をタップすると、映っていたのは恋人の颯哉と見知らぬ女性。彼女の名前は、どうやらは神崎陽菜(かんざき ひな)っていうみたいだ。二人の間には、赤ん坊が抱かれていた。
頭の中が一瞬で真っ白になった。
玲子の他の投稿も次々と開いてみると、そこには颯哉とその女の日常だ。出会いから恋愛、結婚、出産……6年前から今日に至るまで、一つも欠けることなく記録されていた。
結婚式の集合写真には、私の一番親しい友人たちの顔まで写っていた。
心が、すっと冷えていく。そうか、皆がずっと知っていたのだ。
まる6年間も知らなかったのは、私だけだった。
……
玲子のいる病院を調べ、私は取るものも取りあえず病室へと向かった。
ドアを開けたその瞬間、颯哉が愛おしそうにその女性の頬にキスを落としているところだった。
生まれたばかりの赤ん坊の周りには、大小様々な贈り物が積み上げられていた。
その幸せな光景は、私が足を踏み入れた瞬間、跡形もなく崩れ去った。
見覚えのある顔が何人もそこにいる。玲子だけでなく、他の親友たちも何人がいる。
私を見た瞬間、皆が息を呑んだ。
ベッドの上の女性が、怪訝そうに私を見た。
「あなたは……?」
私は何か言おうとしたが、颯哉が鋭い視線で私を制した。
「昔の同級生だよ。久しぶりに会っただけ」
私は思わず自嘲の笑みを浮かべた。
10年も付き合ってきたのに、颯哉は私という存在すら、認めようとしなかった。
その時、玲子が私の手を引いて、病室の外へと連れ出した。
「朝、陽菜は出産したばかりなんだから、彼女の休息を邪魔しないで。話なら、また今度にしましょ」
見慣れた彼女の顔を見つめながら、この十数年、数えきれないほど交わしてきたビデオ通話や、夜更けの打ち明け話を思い出していた。
私が家を買うために、一日4時間しか眠らなかったことも、目を輝かせながら颯哉との未来の計画を語っていたことも、彼女は知っていたのに。
それなのに、私の期待が結局、全部無駄になることを一度も教えてくれなかった。
無理やり病室から連れ出されて、まさか彼女が最初に発した言葉は、労いの言葉ではなく、警告だった。
「陽菜、産んだばかりなんだから、彼女の前で騒がないでよね」
「いつからなの?なんで教えてくれなかったの?」と私は聞いた。
彼女はしばらく黙り込んでから、ようやく口を開いた。
「6年前から、もう付き合ってたの。皆知ってた。
朝に言わなかったのは、あなたが騒ぐと思ったから」
胸が締めつけられて、息をするのもやっとだった。
颯哉とは10年間付き合っていて、そのうち6年は遠距離恋愛だった。
私は何度も入籍させようと言い出した。でもそのたびに彼は、距離が離れすぎているとか、まだそのタイミングじゃないとか、言い訳ばかりだった。
彼はかつて、こう言っていた。
「朝、家を買ってからじゃないと、結婚できないよ」
だから私は必死に働いた。
徹夜を重ねて成果を出し続けたのは、少しでも早く家を買って、彼と結婚するためだった。
この6年、颯哉はいつも忙しいという口実で、帝都に来ようとはしなかった。
何度も休みを取って彼に会いに飛んだけれど、そのたびに仕事で忙しいと言われ、慌ただしく顔を合わせるだけで終わっていた。
私は疑ったことなど一度もなかった。ただ、本当に疲れているのだと思い込んでいた。
まさか、この6年間、彼の思いやりも優しさも、すべて別の誰かに注いでいたなんて。
玲子は、私の手にある不動産権利証に目を留めた瞬間、表情を変え、開き直ったように言った。
「10年付き合ったって、それがどうしたの?颯哉が本当に好きなのはずっと陽菜のほうよ。
じゃなきゃ、あの人が社長だってこと隠して、あなたの前でわざわざ貧乏なふりする理由なんてないでしょ。
あなたが必死に働いてる間、颯哉は陽菜を連れてオーロラ旅行してたのよ。
いい?男というのはね、相手のために金をかけるこそ、本気で愛してるというんだよ。もういい加減、目を覚ましたら?」
彼女はスマホを取り出し、二人が愛し合っている証拠を私に見せつけた。
オーロラの下でキスを交わす二人。
砂漠で手をつなぐ二人。
雪山で寄り添う二人。
どの写真にも日付が入っていた。一番古いものには、6年前の3月と記されていた。
あの頃、私は一番追い詰められていた時期だった。正社員になれる見込みは立たず、母は病に倒れ、いくつものプレッシャーに押しつぶされそうになっていた。
颯哉に電話をかけても、いつも繋がらなかった。
あの頃にはもう、二人は付き合っていたのか。
スマホが震えた。颯哉からのメッセージだった。
【先に戻ってて。あとで説明するから】
私は玲子の手を振り払い、もう一度病室のドアを開けた。
縦書き表示中:本文は右から左へスクロールします(← → キーでも移動できます)