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もう、季節は私を通り過ぎていくだけ第2話

この話は約1658字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

「この人、あなたに気があるの?」日和は、自分の声が震えているのがわかった。

綾子はその名前をちらっと見て、にっこり頷いた。

「気があるなんてもんじゃないわ。初めて会ったとき、いきなりみんなの前でプロポーズされたんだから。冗談で、『999回プロポーズしてくれたら考えてあげる』って言ったら、まさか本当に続けてるの。毎週一回、しかも毎回ちがうやり方でね」

綾子はうんざりした顔で言った。「先月、あなたとドライブしたあのオーダーメイドのフェラーリ、あれも彼がくれたものよ。

先々月は海外旅行に行ったでしょ?そしたらなんと、彼も追いかけてきて、山頂から日の出を見せてくれたの。それに、世界にひとつしかないアンティークのジュエリーまでくれたんだから。

おまけに、すごく気が利くの。私が生理痛でつらかったとき、わざわざ車で何十キロも走って、農家から特別な生姜を買ってきてくれたの。それで、手作りの生姜湯を飲ませてくれて。

こんないい男、好きにならないわけないじゃない?」

日和は呆然と聞いていた。胸がナイフでえぐられるように痛んだ。

綾子の話すことは、すべて心当たりがあった。

海外のスキー場で貸し切りのゴンドラに乗ったり、海辺でキャンドルディナーをしたり。雪山の頂上で星空と日の出を眺めたりも。

ニュースで何度も見た、あのロマンチックなプロポーズの数々のことだ。

かつては自分も、うらやましがって綾子にこう言ったことがある。「そんないい人、もう結婚しちゃいなよ」って。

それなのに、まさか。その一途でロマンチックな男性が、自分が3年も結婚を隠してきた夫だったなんて。

これまで、真司が気が利かないことに不満を言ったこともあった。でも、彼はいつも面倒くさそうに冷たい態度をとるだけだった。

「日和、結婚したからには軽々しいことはできないんだ。わかってくれ。

今の地位まで来るのは大変だったんだ。俺が結婚していて、しかも相手が菅原家の養女だと知られたらどうなる?隙を狙ってるライバルたちが、よってたかって俺を潰しにくるに決まってる」

日和が悲しい思いをするたび、真司は彼女を抱きしめて、いつも同じ言葉で慰めた。

「日和、もう少しだけ待ってくれ。俺が菅原家で立場を固めて、もっと力をつけるまで。そうしたら、世界中に向かって堂々と、お前が俺の妻だって発表するから」

そのたびに、日和は心を許してしまっていた。

真司を愛していたし、結婚を隠しているのは彼が自分を守るためなんだと、わかっていたから。

恵まれない境遇からグループの社長にまでなったのだ。たくさんの人間が、真司がしくじるのを妬みながら見張っている。

彼は毎日、薄氷を踏むような思いで慎重に生きていた。

だから、結婚生活にサプライズやロマンチックなことがなくても、日和は理解していた。真司が人生の大事な瞬間にいなくても、仕方ないと思っていたのだ。

でも、今この瞬間、その理解はすべて滑稽な茶番に変わってしまった。

日和の心には、まだわずかな希望があった。もしかしたら、真司にも何かやむを得ない事情があるのかもしれない、と。

しかし次の瞬間、現実は彼女を打ちのめした。

真司の声が、綾子のスマホから聞こえてきた。「綾子、バーの向かいの公園にいるんだ。これが最後のプロポーズになる。来てくれるかい?」

綾子はためらわずに頷き、日和は人ごみの後ろに隠れた。

数千機ものドローンが夜空に舞い上がり、綾子の顔を描き出した。最後には巨大なダイヤの指輪の形に変わり、その下では真司が本物の指輪を手にしている。

彼は片膝をつき、厳かに誓った。

「結婚したら、すぐにお前のことを公表する。菅原グループ社長の妻として、最高の暮らしをさせてあげる。俺が全力でお前を守って、永遠に幸せにしてみせる。

それに、会社の株の半分をお前にあげたい。これからは、俺が何かを決めるときは必ずお前の同意を得るよ。菅原家のみんなにも言ってある。もしお前を傷つけるやつがいたら、相打ちになってでも俺が叩き潰すってね!

綾子、愛してる。命をかけて、一生お前を愛し続ける。結婚してくれ」

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