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101回目の求婚より、私は別れを選んだ第2話

この話は約1632字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

修一はうなずいた。

「まあ、そうだな。水城さんが君と別れられるとは思えない。君に夢中で、これまでどれだけ無茶してきたか、みんな知ってるしな」

確かにそうだった。

この数年、私は怜司のことで何度も取り乱し、自分を大切にすることさえ忘れていた。そんな中、がんまで見つかった。

怜司があれほど好き勝手できたのも、私が何をされても離れないと思っていたからだ。

けれど、それも今日までだ。

私は乾いた笑いをこぼし、足早にその場を離れた。

翌日、怜司は新恋人と噂されている沙耶を連れ、事務所にデートしにやって来た。

同僚たちは心配そうに私を見ていた。

けれど私は何事もなかったように、退職届を提出した。

人事部長は驚いたように私を見た。

「水城さん、急にどうしたんだ?優秀なマネージャーなのに、辞めるなんてもったいないじゃないか。桐谷さんに新しい恋人ができたからか?」

私は力なく唇を結んだ。

誰もが、私がここにいるのも、ここを去るのも、すべて怜司のためだと思っている。

自分のために選んだことだとは、誰も考えてくれない。

「……まあ、そんなところです」

「でも、君が辞めると知ったら、桐谷さんはかなり怒るんじゃないか?」

人事部長はそうつぶやきながらも、退職届に受理印を押した。

ようやく自由になれた。

自分のデスクに戻ると、沙耶の肩を抱いた怜司がこちらへ歩いてきた。

「美月、俺の新しい彼女、どう思う?」

私は怜司の隣にいる沙耶へ目を向けた。

「きれいね」

私の答えが意外だったのか、怜司は一瞬たじろぎ、顔をこわばらせた。

「美月、お前……変わったな」

確かに、私は変わった。

以前の私は独占欲が強く、怜司に女の噂が出るたび、黙っていられなかった。

すぐに嫉妬し、嫌われたのではないかと不安になっては、周りが見えなくなるほど取り乱していた。

怜司は沙耶を外へ出すと、探るような目で私を見た。

「美月、もう2日も経ってるんだぞ。いつまで怒ってるつもりだ?

100回目のプロポーズに顔を出さなかっただけだろ。そんなに怒ることか?家にまで帰ってこないなんて、さすがにやりすぎだろ。

何年一緒にいると思ってるんだ。最後にはちゃんとけじめをつけるって言っただろ。それでも俺を信じられないのか?」

ここ数日、体調が悪く、流動食でしのいでいた。

何を食べても吐いてしまっていたからだ。

体調のせいなのか、それとも怜司の言葉に心底うんざりしたせいなのか。急に吐き気がこみ上げ、私はその場で吐いてしまった。

怜司は顔を引きつらせ、歯を食いしばった。

「美月、何なんだよ。結局、俺と結婚したいのか、もうしたくないのか、どっちなんだ?」

私はティッシュを取り出し、口元を拭った。

「ちょっと気分が悪くなっただけ」

怜司は一瞬言葉を失い、苛立ったように背を向けた。

「もういい。勝手にしろ!」

その背中を見送っても、胸は少しも痛まなかった。

仕事の引き継ぎに追われ、気づけば夕方になっていた。

修一が私のデスクまで来て、リバイバル上映中の名作アニメ映画のチケットを一枚差し出した。

「怜司が口下手なのは、君も知ってるだろ。やることはめちゃくちゃだけど、君のことを大事に思ってるのは本当だ。

前からこの映画を見たいって言ってただろ。あいつ、それを覚えてて、すぐにチケットを取ったんだ。

今夜9時、映画館の入り口で待ってる。……行ってやってくれないか」

私はしばらく、そのチケットを見つめた。

これが怜司なりの仲直りの合図で、私への埋め合わせでもあることはわかっていた。

少し迷った末、私はチケットを受け取った。これくらい受け取る権利はあると思ったからだ。

夜9時、約束の時間ぴったりに映画館へ着いた。

帽子を目深にかぶり、マスクで顔を隠した怜司が、私の隣に現れた。

ところが、その後ろには、同じような格好で顔を隠した沙耶もいた。

私が沙耶に目を向けると、怜司はかすれた声で言った。

「俺たちの新作、もうすぐ公開だろ。宣伝には話題作りも必要なんだ」

私は気にすることもなく、そのまま中に入り、自分の席に着いた。

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