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10年愛した彼に捨てられ、幽霊になった私第2話

この話は約1921字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

結婚式の日取りが決まると、悠真は若菜に唇を重ねた。

二人は激しく絡み合い、服が床に散乱する。だが、最後の瞬間、悠真は若菜が寒くないようにと、そっと抱きかかえて寝室へと連れて行った。

すぐに、寝室からは甘い吐息が聞こえてきた。

だが、明里はかえって胸を撫で下ろしていた。彼らが寝室に行ってくれたことで、直接見ずに済んだから。

翌朝、悠真はスマホの着信音で目を覚ました。

彼は電話に出ると、腕の中でまだ寝ぼけている若菜をそっと抱き寄せてから、口を開いた。

「もしもし?」

「桐生悠真様でお間違いはないでしょうか?」

「はい」悠真が答えると、電話の相手はそのまま用件を話し始めた。「実はですね、悠真様が明里様と一緒にお預けになったタイムカプセルが10年経ちましたので、本日はお電話させていただきました。もうすでに、ご自宅の方へ発送いたしましたので、お受け取りくださいね」

電話が切れる。

そしてその電話一本で、悠真と若菜の眠気は完全に吹き飛んだ。

その時、ちょうどインターホンが鳴り、すぐに家政婦が寝室の外まで荷物を届けに来た。

若菜を気にして、中身を見るのを躊躇った悠真だったが、若菜が一緒に見ようと彼の手を引いた。

箱を手にリビングへと向かう二人に、明里もふわりと付いていく。

タイムカプセル。

あまりに遠い記憶で、明里も自分たちが何を埋めたのかを覚えてはいなかった。

タイムカプセルを開けると、そこには二人の愛おしい思い出が詰まっていた。

二人で撮ったプリクラ、全く同じ入学通知書、お揃いのグッズ。

そして最後、底の方に入れられていたのは、悠真が明里に宛てた手紙だった。

18歳のあの頃といえば、悠真が最も明里を愛していた時だった。

そこに書き綴られていたのは、18歳の悠真が心に秘めていた想いばかり。

【28歳の俺へ。お前は今、愛する明里と結婚したのか?

今、俺は明里の家にあるガジュマルの木の下でこれを書いているよ。ここがあいつと初めて出会った場所だって、お前は覚えてる?あの日、白いワンピースを着ていた明里は、ポニーテールを揺らしながら、三日月みたいに目を細めて笑ってた。俺は一瞬で、心を奪われたよ。

10年ってすごく長いから、今のお前はきっと、もう明里を連れて世界中の美しい景色を見て回っているんだろうな。

それに、温かい家庭があって、家の壁には思い出の写真がいっぱい飾られているんだよな。初めての旅行の写真とか、誕生日のサプライズの写真とか。それに、飼っている猫がソファで寝ている写真なんかも……

お前は今、この手紙を明里と一緒に読んでいるんだろ?だから、伝えて欲しい。18歳の俺は世界中の何よりも明里を愛してる。そして28歳の俺も、絶対に裏切らないって】

手紙を読み終えた時、若菜は目を赤く潤ませていた。

そして、呆然と手紙を見つめている悠真の様子に、さらに胸を締め付けられた若菜は、思わず彼の胸に飛び込み、泣きじゃくった。

「悠真。私と一緒になったこと……もしかして後悔してる?」

「そんなわけないだろ?」悠真は慌てて手紙を放り投げ、若菜の涙を拭った。「あいつとはもう別れたし、お前とはもうすぐ結婚するんだ。俺の心に誰がいるのか、お前はまだ分かってないのか?ん?」

それでも若菜の不安は消えず、目からは涙が溢れてくる。「でも、明里さんと悠真はあんなに長い間付き合ってたんだよ?そんなすぐ忘れることなんて……」

悲しそうにしている若菜を見て、悠真の心は痛んだ。「もう明里のことは何とも思ってないよ。信じてくれるか?嘘じゃないよ、誓ってもいい」

そう言われ、ようやく泣き止んだ若菜だったが、それでもタイムカプセルを早く処分してほしいと悠真に頼む。

すると、悠真は若菜をなだめながら、近くにあったスマホを取り、明里へとメッセージを送った。

【昔埋めたタイムカプセルが届いたんだけど、要らないから取りに来て】

しかし、いくら経っても、明里からの返信はないし、彼女が現れることもなかった。

少し苛立ち始めた悠真は、眉間を揉みながら明里に電話をかける。だが、呼び出し音が響くだけで、やはり応答はない。

「もうかけなくていいよ。私は出られないんだから」

明里がそう静かに呟いても、誰の耳にも届かなかった。

メッセージを送っても返事はないし、電話をかけても出ない。悠真は、明里が別れ話のことでまだ意地を張っているだけだと思い、そのまま電話を切ると、机の上に置かれていた手紙とタイムカプセルを手に取った。そして何のためらいもなく、それらをゴミ箱へ放り込む。

無慈悲にも捨てられたタイムカプセルを見つめ、明里の心は激しく痛んだが、すぐに皮肉な笑みを浮かべた。

捨てられたっていい。もう悠真は自分との10年など、いらないようだから。

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