風にさらわれた恋第2話
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子供ができなくても私をずっと愛してくれるって、蓮はそう言った。
私を安心させるため、彼はパイプカット手術までも行ってくれたのに、今更他の女との子供ができたなんて!
「分かった」と簡単な一言で、スマホの電源を切った。
翌朝、蓮は戻ってきた。
彼だけではなく、後ろには数人の子分たちと,目を真っ赤にして泣いている遥の姿もあった。
私を見たとたん、遥は膝から崩れ落ちるように跪き、いじらしく泣きながら哀願した。
「ごめんなさい、とわさん。あんな事、言うべきではなかったです……
とわさんに認められるまで、この子を産めないって蓮さんが言いましたから……
お願いします!どうか、この子だけは!」
そう言いながら、額を地面に打ちつけ、何度も何度も繰り返すうちに、やがて血が滲んできた。
その場を横目でそっと見ていた蓮の瞳には、明らかに痛ましさが滲んでいた。しかし私の許しを得るためなのか、やはり最後まで何も言わずにいた。
その哀れな姿を先に見かねた子分たちは遥を引き起こした。
きっと、私を甘やかしていた蓮のことがずっと前から気に入らなかっただろう。彼らは不満そうに訴えた。
「とわさん、怒らせちまうかもしれねぇっすけど、俺たちに言わせてもらいますぜ。
兄貴の命を、涼宮さんは救ったんっすよ!子供ぐらい産ませてもいいんじゃないっすか!
それにとわさんは子供ができないから、いっそ涼宮さんもこの子も認めてやるべきっすよ!」
「黙れ!」
蓮の怒鳴り声が彼らの言葉を遮った。
「とわちゃんこそ俺の唯一の嫁だと言っただろう!遥には、俺が償う」
そう告げて、蓮はゆっくりと服をめくり上げ、私の前で静かに膝をついた。その体には、いくつもの刀傷が走っていた。
まさか。そんな冷徹な彼にも、頭を下げる時があったのか。
「これらの傷痕は、君を永遠に愛する証なんだ。遥がこの子を産んでも、その愛は決して変わらない。だから頼む!この子だけは見逃してくれ!
君は子供が産めないから、母親としてこの子を育て上げよう!そうすれば君も母になれるんだ!」
その話を耳にしたとたん、胸が引き裂かれるように痛かった。言葉が幾重にも絡み合った果てに、最後に口から出たのはたった一言だった。
「分かった」
まあ。この世界に残された時間は僅か六日だ。他のことはもうどうでもいい。
返事を聞いた蓮はほっと息をついた。遥を見つめた彼の瞳には、溢れるほどの喜びが宿っていた。
その場を離れようと、無言で自分の部屋に向かおうとした私は、突然彼に呼び止められた。
そっと柔らかい毛布が肩にかけられ、乱れた髪もやさしく払われた。
「そんな薄着で寒いだろ?風邪を引いたらどうすんだよ」
その様子、まるで昔のままの、私だけを愛してくれた蓮のようだった。
しかし次の瞬間、私は地獄に落とされた。
「遥は妊娠したばかりで、体が弱いから、俺たちの寝室を彼女に譲ろう」
冗談じゃない!他の女に、私たちの新婚部屋を使わせるなんて。
しかも、私のためにわざわざ用意してくれた、この高級寝室を。
ほんの一瞬、彼の目が泳いだ。
「……とりあえず安心して!子供が産まれたら、すぐ出ていってもらうから!」
彼には、もうなにも期待できなくなった。目を合わせないまま、私は静かに答えた。
「……分かった」
私の額に、彼は唇を寄せた。
「やっぱり、君は一番わかってくれるね」
そう言って、蓮は遥のもとへ歩み寄った。彼女を心配そうに抱き上げ、そのまま寝室へと消えていった。
その姿を見やった私は思わず手を握りしめ、震える体を必死に抑えようとした。
いったいどれくらい寝ていただろ?頭の奥が霞んで、時間の感覚が消えていた。
まどろみの底で、誰かにベッドから乱暴に引きずり起こされた。
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