
雨の中、もう君とは歩けない
| 言語 | 日本語 |
|---|---|
| 試し読み | 第1〜3話(当サイト) |
| 掲載日 | |
| 読み方 | 横書き・縦書きを切り替え可 |
『雨の中、もう君とは歩けない』は日本語の小説です。当サイトで第1〜3話を試し読みできます。
冒頭試し読み第1話より・約411字
別れてから三年目、元嫁の篠宮栞(しのみや しおり)が子どもの手を引いて、俺の働いてる店に服を買いにやってきた。
俺は一瞬固まったが、いつもと変わらず丁寧に接客した。
距離感も言葉遣いもマニュアル通り。昔のことにはひと言も触れなかった。
栞はしばらく黙っていたが、ふと変形した俺の指をそっと握った。
「ここ、まだ痛む?」
俺は静かに袖口を引き、指先を隠して、もうなんともないと答えた。
その会話は俺たちの間には何ひとつ変わったことなどないみたいだった。
ただもう愛し合っていない、それだけだ。
もうなんともないだなんて、本当はそんなことはなかった。
俺は目を伏せ、変形した指の骨を見つめた。雨の日になると、一晩中眠れないほど痛む。
昔の俺なら、わざと大袈裟に言って、栞を心配させていたし、怪我を口実に甘えて、栞にキスをねだったりもした。
けれど、今はもうそんなことはしない。
人間、いつまでも相手にすがりついて、惨めな真似を続けられるわけじゃない。
※作品紹介ではなく、第1話の書き出しをそのまま掲載しています。第1話の続きを読む
目次試し読み3話
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